犬と猫の糖尿病|【獣医師国家試験対策】

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糖尿病は、犬と猫でほとんど別の疾患と言ってよいほど性質が異なります。犬はインスリン依存性で寛解しないのに対し、猫は適切な治療によりインスリンから離脱できる可能性がある——この違いが、治療方針から食事内容、飼い主への説明までを分けます。

国家試験では、実地試験Cで血糖曲線を読ませてインスリン量の増減を判断させる問題が頻出します。とくにソモジー効果は「血糖が高いのにインスリンを減らす」という直感に反する対応が正解となるため、機序を理解していなければ確実に誤答します。本記事はこの2点を中心に構成しました。

過去問分析

「糖尿病」について、第73〜77回の試験問題を分析したところ、主なテーマとした設問、または診断や治療に関する重要な知識を問う設問は、合計で6問出題されています。

症例・実地試験問題(診断と管理)
第73回 実地D:糖尿病でインスリン投与中の犬の症例。提示された血糖曲線(グルコースカーブ)を読み取り、「インスリンの作用時間が短すぎる」といった病態を解釈させる問題。
第73回 実地D:上記症例の血糖曲線に基づき、次にとるべき適切な対処(インスリン製剤の変更など)を選択させる問題。

疾患の知識・特徴を問う問題
第76回 学説B:猫の糖尿病に関する記述として、「肥満がリスク因子である」「高タンパク・低炭水化物食が推奨される」「フルクトサミン濃度が増加する」といった特徴の正誤を問う問題。
第73回 学説B:内分泌疾患と治療薬の組み合わせを問う問題で、正解肢の一つとして「糖尿病 ― インスリン」が登場しています。

治療薬の作用機序を問う問題
第76回 学説A:糖尿病治療薬(アカルボース、メトホルミン、ピオグリタゾンなど)のそれぞれの作用機序について、正しい記述を選択させる問題。
第75回 学説B:疾患と治療薬の正しい組み合わせを選ぶ問題で、「糖尿病 ― アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)」を選択させる設問。

関連知識として登場する設問
このほか、直接のメインテーマではありませんが、以下のように他の疾患の要因や選択肢として「糖尿病」に関連する内容が出題されています。
第74回 学説B:犬の白内障に関する問題で、「糖尿病罹患動物で好発する」という知識が問われています。
第73回 学説A:インスリンによって細胞膜への移動が促進されるグルコース輸送体(GLUT4)を問う、基礎的な生理学の問題。
第75回 学説A:犬の多飲多尿を呈する疾患の選択肢として含まれています。
第76回 学説A:猫のアミロイド沈着や糖原蓄積病に関連する選択肢として登場しています。

糖尿病に関しては以下の事項が頻出ポイントです。
血糖曲線(カーブ)の読影:インスリンの用量や作用時間の適切性を判断する臨床能力。
猫の糖尿病の特殊性:肥満との関連や、食事療法(高タンパク・低炭水化物)の重要性。
治療薬:インスリンの種類や、経口血糖降下薬の機序。
合併症:白内障、ケトアシドーシス、末梢神経障害。

この記事で押さえること
  • 犬はインスリン依存性、猫は糖毒性の解除により寛解しうるという違い
  • 未避妊雌犬の黄体期によるインスリン抵抗性
  • 猫のストレス性高血糖とフルクトサミンによる鑑別
  • 豚インスリンが犬のインスリンと同一配列であること
  • アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害)とグリピジド(SU薬)の作用機序
  • 血糖曲線の読み方とソモジー効果
  • DKAでカリウム補充が必須である理由と、重炭酸を投与してはならないこと
  • DKAに重炭酸(炭酸水素ナトリウム)は投与しない。脳浮腫の誘発、低カリウム血症の悪化などを招く。水・電解質・インスリン・ブドウ糖の補充のみで治療する。
  • リンを添加する輸液は生理食塩水。カルシウムを含む乳酸リンゲル液などではリン酸カルシウムが析出する。

1. 犬と猫は別の病気として捉える

項目
病型ほぼ全例がインスリン依存性(ヒトの1型に相当)大部分がヒトの2型に類似
主な機序免疫介在性または慢性膵炎によるβ細胞の破壊インスリン抵抗性+β細胞機能不全。膵島アミロイド沈着
寛解しない(診断時にβ細胞の大部分が失われている)しうる(早期治療で3〜5割程度)
危険因子中〜高齢、未避妊雌、ミニチュアシュナウザー・プードル・ダックスフンドなど肥満、去勢雄、高齢、運動不足
特徴的な合併症白内障(高率)末梢神経障害(蹠行姿勢)
食事療法高繊維・複合炭水化物、給餌時刻の固定高蛋白・低炭水化物

1-1. 猫が寛解しうる理由 — 糖毒性

重要

持続する高血糖そのものが膵β細胞の機能をさらに低下させる現象を糖毒性(glucose toxicity)といいます。猫では、早期にインスリンを導入して血糖を正常域まで下げるとこの悪循環が解除され、β細胞機能が回復して寛解に至ることがあります。

寛解率を高める条件は、早期の治療開始・長時間作用型インスリン・高蛋白低炭水化物食の3つです。診断から治療開始までの時間が短いほど成績が良いため、猫の糖尿病は「急ぐ意味のある」疾患です。

1-2. 未避妊雌犬のインスリン抵抗性

雌犬の発情休止期(黄体期)には、プロゲステロンが乳腺からの成長ホルモン(GH)分泌を促し、強いインスリン抵抗性を生じます。これにより糖尿病が顕在化したり、既存の糖尿病のコントロールが突然悪化したりします。

したがって未避妊の雌犬では避妊手術がインスリン抵抗性の解除につながり、早期であれば糖尿病そのものが改善する可能性があります。「血糖が下がらない未避妊雌犬」を見たら、まずこの機序を疑ってください。

2. 病態生理 — 4つのPが出る理由

インスリンの作用不足により細胞内へグルコースが取り込めなくなると、次の連鎖が生じます。

  • 高血糖が腎尿細管のグルコース再吸収閾値(犬でおよそ180〜220 mg/dL、猫でおよそ250〜300 mg/dL)を超えると尿糖が出現する
  • 尿中のグルコースが浸透圧利尿を引き起こし多尿となる
  • 失われる水分を補うため多飲となる
  • 細胞はグルコースを利用できず飢餓状態にあるため多食となる
  • にもかかわらず、脂肪と筋蛋白が分解されて体重減少が進む

この多飲・多尿・多食・体重減少が古典的な四徴です。「よく食べてよく飲むのに痩せる」という矛盾が、飼い主にも捉えやすい主訴となります。

3. 診断

診断には次の3点がそろう必要があります。高血糖だけでは診断できません。

  1. 持続的な高血糖
  2. 尿糖の存在
  3. 臨床症状(多飲多尿・多食・体重減少)

3-1. 猫のストレス性高血糖

猫で必ず問われる

猫は診察・保定のストレスだけで血糖値が容易に300 mg/dLを超えます。単回の血糖測定で糖尿病と診断してはいけません。

鑑別には糖化アルブミン(GA)やフルクトサミンを測定します。これらは血清蛋白が糖化したもので、過去1〜3週間の平均血糖値を反映します。一過性のストレス性高血糖では上昇しないため、両者を区別できます。

ただし低アルブミン血症や甲状腺機能亢進症では、蛋白の代謝回転が速まるため糖化アルブミン(GA)やフルクトサミンが低値となり、糖尿病があっても見逃すことがあります。猫では甲状腺機能亢進症の併発が珍しくないため、この点は要注意です。

3-2. あわせて行う検査

  • 尿検査(ケトン体、尿路感染)および尿培養:糖尿病では無症候性細菌尿が多い
  • 血液生化学:肝酵素の上昇、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症
  • 膵リパーゼ(cPLI・fPLI)、猫では総T4、犬では副腎機能検査

4. インスリン製剤 — 種差と作用時間

種差のポイント

犬のインスリンは、豚のインスリンとアミノ酸配列が完全に一致します。このため豚由来製剤は犬にとって理想的で、抗体産生のリスクが低くなります。一方、猫のインスリンは牛のインスリンに近く、ヒトインスリンとは配列が異なります。

分類代表的な製剤主な用途
速効型レギュラーインスリン糖尿病性ケトアシドーシスの治療。静脈内持続投与や頻回筋注に用いる
中間型NPH(イソフェン)、豚由来インスリン亜鉛(レンテ)犬の維持療法。通常1日2回投与
長時間作用型PZI(プロタミン亜鉛)、グラルギン、デテミル猫の維持療法。血糖変動を平坦化し寛解率を高める

5. 経口血糖降下薬

5-1. アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)

小腸刷子縁のα-グルコシダーゼを阻害し、二糖類から単糖への分解を遅らせます。その結果、グルコースの吸収が緩やかになり、食後の急激な血糖上昇が抑えられます

インスリン分泌を促す薬ではないため単独では不十分で、インスリン療法の補助として用います。未消化の糖質が大腸へ流れて発酵するため、鼓腸・軟便・下痢が副作用として生じます。

5-2. グリピジド(スルホニル尿素薬)

膵β細胞のATP感受性カリウムチャネルを閉じ、細胞膜を脱分極させてカルシウム流入を促すことでインスリン分泌を促進します。

頻出のひっかけ

スルホニル尿素薬は残存するβ細胞が存在して初めて効果を発揮します。したがってβ細胞が破壊されている犬の糖尿病には無効です。猫でも、β細胞のアミロイド沈着を促進して機能を悪化させる懸念から、現在は推奨されていません。

6. 血糖曲線の読み方

血糖曲線(ブラッドグルコースカーブ)は、インスリン投与と給餌のあと一定間隔で血糖を測定し、時間経過を折れ線として描くものです。次の4点を評価します。

  1. インスリンが効いているか
  2. 最低血糖値(ネイディア)はいくつか
  3. 作用の持続時間
  4. 最大効果が現れる時刻

測定は通常2時間ごとに行いますが、可能であれば自宅で測定することが望まれます。病院ではストレスによる高血糖と食欲低下が同時に起こり、曲線が実態から歪むためです。近年は持続血糖モニタリング装置の利用も広がっています。

理想的な血糖曲線とソモジー効果を示す血糖曲線の比較模式図 A. 良好にコントロールされた血糖曲線 目標域 400 300 200 100 0 6時間 12時間 ネイディア(最低値) 最低値が目標域におさまり、次回投与前まで作用が続いている。 B. ソモジー効果(反跳性高血糖) 400 300 200 100 低血糖 ① 急激な低血糖 ② 拮抗ホルモンによる反跳性高血糖 測定間隔が粗いと両端の高血糖だけが見え、増量という誤った判断を招く。

図:血糖曲線の比較。Aでは最低値が目標域に入り、作用が次回投与前まで持続している。Bのソモジー効果では、インスリン過剰による急激な低血糖のあと拮抗ホルモンが放出され、反跳性の高血糖を生じる。測定点が少ないと低血糖の谷を見落とし、高血糖のみが観察される。

6-1. 判断の基準

曲線の所見解釈対応
最低値が目標域より高いインスリン量の不足増量を検討する
最低値が目標域より低いインスリン量の過剰減量する
次回投与前に高血糖へ戻る作用持続時間が短い投与回数の増加、または長時間作用型への変更
急激に低下したのち急上昇するソモジー効果減量する

6-2. ソモジー効果

最重要のひっかけ

インスリンが過剰で急激な低血糖が生じると、生体はグルカゴン・カテコールアミン・コルチゾール・成長ホルモンといった拮抗ホルモンを放出して血糖を引き上げます。その結果、低血糖の直後に強い高血糖が出現します。これがソモジー効果(反跳性高血糖)です。

測定点が少ないと谷を見落とし、「血糖が高いままだ」と判断してインスリンを増量してしまいます。これは低血糖と反跳をさらに強め、状態を悪化させます。正解はインスリンの減量です。

6-3. 血糖が下がらないときに考えること

インスリン抵抗性を疑う前に、まず確認すべき順序があります。

  1. 投与手技の確認:懸濁製剤の混和不足、注射器の単位の取り違え、被毛への誤注入、注射部位の偏り、製剤の失活(有効期限切れ、激しい振盪、温度管理)。実務上もっとも多い原因はここです。
  2. ソモジー効果の有無
  3. 併発疾患:感染症(尿路・歯周・皮膚)、クッシング症候群、未避妊雌犬の黄体期、猫の先端巨大症や甲状腺機能亢進症、膵炎、肥満
  4. 薬剤:グルココルチコイドやプロゲスタゲンの投与

7. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

インスリンの絶対的不足と拮抗ホルモンの増加により脂肪分解が亢進し、遊離脂肪酸からケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトン)が過剰に産生される状態です。嘔吐、脱水、沈うつ、代償性の頻呼吸、呼気のアセトン臭がみられます。

尿試験紙の落とし穴

尿試験紙のケトン検査(ニトロプルシド法)はアセト酢酸とアセトンを検出しますが、β-ヒドロキシ酪酸は検出しません。DKAの初期はβ-ヒドロキシ酪酸が優位なため、ケトン尿が陰性でもDKAを否定できません

また治療によりβ-ヒドロキシ酪酸がアセト酢酸へ変換されるため、改善しているのに見かけ上ケトン尿が強くなることがあります。

治療の順序は次のとおりです。

  1. 輸液が最優先:脱水と循環血液量減少の是正。それ自体が血糖を下げます。
  2. 速効型(レギュラー)インスリンの持続静脈内投与または頻回筋注。長時間作用型は用いません。
  3. カリウムの補充これを怠ると致死的になります。DKAでは体内総カリウムが枯渇しており、さらにインスリン投与によりカリウムが細胞内へ移動するため、血中濃度が急落します。
  4. リン・マグネシウムの補正:リンの補充は必須です。リンを添加する輸液には必ず生理食塩水を選択します(後述)。
  5. 血糖を急激に下げすぎない:脳浮腫の危険があるため、一定値まで下がった時点でブドウ糖を輸液に添加します。
  6. 基礎疾患(感染、膵炎など)の治療
重炭酸は投与しない

DKAでは、たとえ血液のpHが7.0を下回るほど重度の代謝性アシドーシスであっても、炭酸水素ナトリウム(重炭酸)を投与してはなりません。

投与により次の悪影響が生じるためです。

  1. 脳浮腫を誘発する
  2. 致死的な低カリウム血症をさらに悪化させる
  3. 細胞内および中枢神経系のアシドーシスを引き起こす
  4. ケトンや乳酸の消失を遅らせる

DKAは、水・電解質・インスリン・ブドウ糖の補充のみで治療します。インスリン投与によりケトン体の産生が止まれば、アシドーシスは自然に改善していきます。

国家試験では「重炭酸を投与して速やかにアシドーシスを補正する」という選択肢が頻出のひっかけです。「数値が悪いから直接補正する」という発想が誤りである典型例として押さえてください。

リンの補充と輸液の選択

DKAではリンが枯渇しており、補充しなければ容易に低リン血症に陥ります。低リン血症は重度の溶血(ハインツ小体性溶血性貧血)や神経・骨格筋症状を招くため、リンの補充は必須です。

ここで実務上の落とし穴があります。カルシウムを含む輸液(乳酸リンゲル液など)にリン酸塩を混和すると、不溶性のリン酸カルシウムが析出して白濁します。

したがってリンを添加する輸液には、カルシウムを含まない生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を必ず選択してください。「リンゲル液にリンを入れる」という組み合わせは成立しません。

8. 合併症

  • 犬の白内障:高率に発生します。水晶体内でグルコースがアルドース還元酵素によりソルビトールへ変換され、蓄積したソルビトールが浸透圧により水を引き込んで水晶体線維を膨化・変性させます。猫ではアルドース還元酵素の活性が低いため、白内障はまれです。
  • 猫の末梢神経障害:後肢の蹠行姿勢(かかとを地面につけて歩く姿勢)が特徴です。血糖コントロールにより改善しうるとされます。
  • 再発性の尿路感染症、猫では肝リピドーシス

9. 国家試験で狙われるポイントの整理

ひっかけ注意
  1. 犬はインスリン依存性で寛解しない。猫は寛解しうる。
  2. 猫の寛解は糖毒性の解除による。早期治療+高蛋白低炭水化物食が鍵。
  3. 未避妊雌犬の黄体期ではプロゲステロン由来のGHがインスリン抵抗性を生む。
  4. 猫のストレス性高血糖との鑑別は糖化アルブミン(GA)やフルクトサミン
  5. フルクトサミンは低アルブミン血症・甲状腺機能亢進症で低値となり偽陰性を生む。
  6. 豚インスリンは犬のインスリンと同一配列。
  7. アカルボースはα-グルコシダーゼ阻害で糖の分解・吸収を遅らせる。
  8. スルホニル尿素薬は残存β細胞が必要なため、犬の糖尿病には無効。
  9. ソモジー効果では減量する。血糖が高いからと増量しない。
  10. 血糖が下がらないときはまず投与手技を確認する。
  11. DKAでは輸液が最優先、速効型インスリン、カリウム補充が必須
  12. 尿試験紙はβ-ヒドロキシ酪酸を検出しない。
  13. 白内障は犬に高率、猫ではまれ(アルドース還元酵素活性の差)。
  14. 猫の末梢神経障害は蹠行姿勢として現れる。

10. 確認問題

Q1. 血糖曲線において、急激な血糖低下の直後に高血糖が出現していた。この現象の名称と機序、および取るべき対応を述べよ。

A. ソモジー効果(反跳性高血糖)。インスリン過剰による急激な低血糖に対し、グルカゴン・カテコールアミン・コルチゾール・成長ホルモンなどの拮抗ホルモンが放出されて血糖が反跳性に上昇する。対応はインスリンの減量であり、増量してはならない。

Q2. 猫の糖尿病が寛解しうる理由を述べよ。

A. 猫の糖尿病はインスリン抵抗性とβ細胞機能不全によるものであり、持続的高血糖がβ細胞機能をさらに低下させる糖毒性が関与している。早期にインスリンを導入して血糖を正常化するとこの悪循環が解除され、β細胞機能が回復して寛解に至ることがある。

Q3. 犬の糖尿病にスルホニル尿素薬が無効である理由を述べよ。

A. スルホニル尿素薬は膵β細胞のATP感受性カリウムチャネルを閉じてインスリン分泌を促進する薬であり、残存するβ細胞が必要である。犬の糖尿病はβ細胞がすでに破壊されたインスリン依存性であるため、分泌を促す対象が存在せず効果がない。

Q4. 糖尿病性ケトアシドーシスの治療でカリウム補充が必須である理由を述べよ。

A. DKAでは浸透圧利尿と嘔吐により体内総カリウムが枯渇している。さらにインスリン投与によりカリウムが細胞内へ移動するため、血清カリウム濃度が急激に低下し、致死的な不整脈や呼吸筋麻痺を招く危険がある。

Q5. 糖尿病の犬に白内障が高率に発生する機序と、猫でまれである理由を述べよ。

A. 高血糖により水晶体内へ流入したグルコースがアルドース還元酵素によってソルビトールへ変換され、蓄積したソルビトールの浸透圧作用で水が引き込まれ、水晶体線維が膨化・変性するため。猫では水晶体のアルドース還元酵素活性が低く、この経路が働きにくいためまれである。

Q. 重度の代謝性アシドーシスを呈するDKA症例に対し、炭酸水素ナトリウムを投与すべきでない理由を述べよ。

A. 脳浮腫を誘発すること、致死的な低カリウム血症をさらに悪化させること、細胞内および中枢神経系のアシドーシスを引き起こすこと、ケトンや乳酸の消失を遅らせることによる。DKAのアシドーシスはケトン体の過剰産生に起因するため、インスリン投与により産生が止まれば自然に改善する。治療は水、電解質、インスリン、ブドウ糖の補充のみで行う。

Q. DKAの治療においてリンを補充する際、乳酸リンゲル液を用いてはならない理由を述べよ。

A. 乳酸リンゲル液はカルシウムを含むため、リン酸塩を混和すると不溶性のリン酸カルシウムが析出して輸液が白濁するため。リンを添加する場合は、カルシウムを含まない生理食塩水を選択する。なおリンの補充を怠るとハインツ小体性溶血性貧血や神経・骨格筋症状を招くため、補充自体は必須である。

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参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月14日/最終更新日:2026年8月24日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。