牛の第一胃アシドーシス|濃厚飼料多給から肝膿瘍・後大静脈血栓症・鼻出血に至る機序【獣医師国家試験対策】

牛の第一胃アシドーシス(ルーメンアシドーシス)は、濃厚飼料の多給によって第一胃内の pH が異常に低下する疾患です。国家試験では、単独の消化器疾患としてよりも 「濃厚飼料多給 → 第一胃炎 → 肝膿瘍 → 後大静脈血栓症 → 肺動脈瘤破裂 → 鼻出血」という一本の連鎖 として問われる点に特徴があります。

一見つながらないように見える「穀類の食べすぎ」と「鼻から血が出る」が、なぜ同じ病気の両端になるのか。本記事ではこの因果の鎖を軸に、急性型と亜急性型(SARA)の違い、ルーメン液検査の読み方、そして第四胃変位とは正反対になる輸液選択までを整理します。

過去問分析

「第一胃アシドーシス」について、第73〜第77回の試験問題を分析したところ、主なテーマとした問題、または正解や重要な要因として扱っている問題は、4問出題されています。
1. 第一胃アシドーシスの病態・知識を問う問題
第73回 学説B「牛の亜急性第一胃アシドーシス」発症原因や第一胃液のpH、第一胃錯角化症(パラケラトーシス)との関連など。
第76回 学説B「牛の第一胃アシドーシス」グラム陰性菌の死滅によるエンドトキシンの放出や、濃厚飼料の多給を避ける予防策について。

2. 関連疾患の要因として扱われる問題
第74回 学説B 牛の「蹄葉炎」の発症要因を問う問題で、選択肢の一つとして「第一胃アシドーシス」が含まれています。
第77回 学説B 牛の「後大静脈血栓塞栓症」の発生に最も関連が高い疾患として、第一胃アシドーシス(およびそれに続く第一胃錯角化症・肝膿瘍)が重要な要因として示されています。

第一胃アシドーシスは牛の消化器疾患における頻出トピックとして挙げられています。試験対策としては、以下の流れをセットで覚えておくことが重要です。
原因:濃厚飼料の多給。
病態:第一胃内pHの低下、乳酸の増加、エンドトキシンの放出。
続発症:第一胃錯角化症、肝膿瘍、後大静脈血栓塞栓症(鼻出血を伴う)、蹄葉炎。

この記事で押さえること
  • ルーメン内細菌叢の交代(Streptococcus bovisLactobacillus)と乳酸の蓄積
  • D-乳酸が蓄積する理由と、代謝性アシドーシスの成立
  • 脱水の主因は下痢ではなくルーメン内浸透圧上昇による体液移行であること
  • ルーメン液所見(pH・原虫・グラム染色)の読み方
  • 輸液は重炭酸ナトリウム — 第四胃変位とは真逆になる理由
  • 肝膿瘍と後大静脈血栓症が鼻出血に至るまでの経路

1. 第一胃アシドーシスの2つの型

第一胃アシドーシスは、経過と蓄積する酸の種類によって2つに分けられます。この区別が曖昧なまま暗記すると、選択肢で確実に取り違えます。

項目急性第一胃アシドーシス
(穀類過食症)
亜急性第一胃アシドーシス
(SARA)
ルーメン pH5.0 未満、重症では 4.5 以下5.2〜5.6 が1日数時間持続
蓄積する酸乳酸(とくに D-乳酸)揮発性脂肪酸(VFA)。乳酸はほとんど蓄積しない
発症様式個体、突発的(誤って穀類槽に侵入するなど)群、慢性的・反復性
全身状態重度の脱水・起立不能・死亡もある個体は一見健康。生産性の低下として現れる
気づかれ方臨床症例として来る乳脂率低下・蹄病多発などから逆算して疑う

2. 発症機序 — ルーメン内で何が起きているか

2-1. 正常なルーメン環境

健常な第一胃内は pH 6.0〜7.0 に保たれ、繊維分解菌(セルロース分解菌)と原虫(繊毛虫)が共存しています。飼料中の炭水化物は微生物発酵を受け、酢酸・プロピオン酸・酪酸といった揮発性脂肪酸(VFA)として産生・吸収されます。粗飼料主体の飼養では酢酸の比率が高く、これが乳脂肪合成の主要な前駆物質となります。

ルーメン pH を支えているのは、反芻と唾液です。牛は1日に大量の唾液を分泌し、そこに含まれる重炭酸イオンとリン酸イオンが天然の緩衝剤として働きます。粗飼料を咀嚼・反芻する時間が長いほど唾液分泌量は増えるため、「繊維を噛む時間」がそのまま pH の安全域を決めていると理解してください。

2-2. 濃厚飼料多給による菌叢の交代

易発酵性炭水化物(デンプン)が急に大量流入すると、次の順序でルーメン環境が崩壊します。

  1. Streptococcus bovis の急増 デンプンを速やかに利用できるこの菌が爆発的に増殖し、乳酸を産生します。VFA と乳酸の蓄積により pH が低下しはじめます。
  2. 耐酸性菌への交代 pH が 5.5 を下回ると S. bovis 自身も抑制されますが、代わって耐酸性の Lactobacillusが優勢となり、さらに乳酸を産生し続けます。pH は加速度的に低下します。
  3. 乳酸利用菌の破綻 本来は Megasphaera elsdeniiSelenomonas ruminantium が乳酸をプロピオン酸へ変換して処理しますが、産生速度が処理能力を大きく超えます。
  4. 原虫と繊維分解菌の死滅 繊毛虫や繊維分解菌は酸性環境に弱く、pH 5.0 前後で運動を停止し死滅します。ルーメンの発酵機能そのものが失われます。
  5. 第一胃炎(ruminitis)の発生 蓄積した乳酸が第一胃粘膜を化学的に傷害します。ルーメン乳頭は壊死・脱落し、粘膜バリアが破綻します。この段階が、後述する肝膿瘍への入口になります。

2-3. なぜ全身が脱水するのか

誤解しやすい点

本症の脱水は「下痢によって水分を失うから」ではありません。主因はルーメン内浸透圧の上昇による、血管内から第一胃内腔への水の移動です。

大量に産生された乳酸と、分解されたデンプンの分解産物により、ルーメン内容の浸透圧は著しく上昇します。この浸透圧勾配に従って、血管内および間質から水がルーメン内腔へ引き込まれます。

その結果、ルーメン内容は液状化してチャプチャプという振盪音を生じる一方、動物自身は循環血液量減少性のショックに陥るという、一見矛盾した状態が成立します。眼球陥没・皮膚緊張度低下・頻脈といった脱水徴候が急速に進行するのはこのためです。下痢はその後に続く結果であり、原因ではありません。

2-4. D-乳酸と代謝性アシドーシス

ルーメン内で産生される乳酸には L-乳酸と D-乳酸の2つの光学異性体があります。哺乳類の細胞は L-乳酸脱水素酵素をもつため L-乳酸を速やかに代謝できますが、D-乳酸を代謝する能力はきわめて限られています

そのため吸収された D-乳酸は血中に蓄積し、HCO₃⁻ を消費してアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスを引き起こします。血液 pH と HCO₃⁻、Base Excess はいずれも低下します。D-乳酸の蓄積は中枢神経系にも作用し、沈うつ・運動失調・起立不能の一因となります。

3. 臨床症状と検査所見

3-1. 急性型の臨床症状

過食から 12〜48時間で発症します。

  • 食欲廃絶、元気消失、沈うつ
  • 第一胃運動の停止(アトニー)と、液状化した内容による振盪音
  • 重度の脱水(眼球陥没、皮膚緊張度低下)、頻脈
  • 体温は正常〜低下。重症例では低体温を示す
  • 悪臭を伴う泡沫状〜水様性の下痢。未消化の穀粒を含むことがある
  • 運動失調、起立不能、昏睡
  • 回復後、数日〜数週で蹄葉炎を発症することがある

3-2. ルーメン液検査 — 診断の中心

経鼻胃管あるいは第一胃穿刺で採取したルーメン液の性状は、本症の診断でもっとも直接的な情報を与えます。

項目正常急性第一胃アシドーシス
pH6.0〜7.05.0 未満
色調・性状オリーブ緑色、粘稠灰白色〜乳白色、水様、酸臭
原虫(繊毛虫)多数が活発に運動運動停止・消失
グラム染色グラム陰性菌が優勢グラム陽性桿菌(Lactobacillus)が優勢
メチレンブルー還元時間数分以内に脱色延長または脱色しない

原虫の消失とグラム染色像の逆転は、現場でも試験でも問われやすい所見です。とくにグラム染色は「正常=陰性優勢/アシドーシス=陽性優勢」と、方向をセットで覚えてください。

3-3. 血液検査所見

  • 代謝性アシドーシス(血液 pH 低下、HCO₃⁻ 低下、BE 低下)
  • アニオンギャップ開大、血中 D-乳酸の上昇
  • 血液濃縮による PCV・総蛋白の上昇
  • 初期には高血糖(ストレス反応)
  • 乏尿、尿 pH の低下

4. 治療

4-1. 重症度に応じた処置

  • 軽症:制酸剤(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなど)の経口投与と、良質乾草の給与。濃厚飼料は中止します。
  • 中等症:太径の経鼻胃管によるルーメン洗浄で、酸性の内容と未消化穀粒を可能な限り除去します。
  • 重症第一胃切開術(rumenotomy)により内容を直接除去します。洗浄で除去しきれない大量の穀粒がある場合に選択されます。
  • ルーメン内容移植:健康牛のルーメン液を投与し、原虫と正常菌叢を再導入します。
  • チアミン(ビタミン B₁)投与:後述する大脳皮質壊死症の予防・治療として重要です。

4-2. 輸液 — 第四胃変位との決定的な違い

頻出の対比

第一胃アシドーシスの輸液は 等張重炭酸ナトリウム液(1.3% NaHCO₃) を主体とします。これは第四胃変位の輸液(生理食塩水、重炭酸禁忌)とちょうど正反対です。

両者はどちらも牛の代表的な消化器疾患でありながら、酸塩基平衡の方向が逆になります。

項目第一胃アシドーシス第四胃変位
酸塩基平衡代謝性アシドーシス代謝性アルカローシス
主な電解質異常アニオンギャップ開大、HCO₃⁻ 低下低Cl血症・低K血症
尿の pH酸性酸性(奇異性酸性尿)
選択する輸液等張重炭酸ナトリウム液生理食塩水(+KCl)
避けるべき輸液乳酸リンゲル液・重炭酸ナトリウム

尿がどちらも酸性になる点は要注意です。第一胃アシドーシスでは血液がアシドーシスなので酸性尿は当然ですが、第四胃変位では血液がアルカローシスであるにもかかわらず酸性尿となります(奇異性酸性尿)。「酸性尿だから代謝性アシドーシス」と短絡すると誤答します。

5. 続発症の連鎖 — 濃厚飼料多給が鼻出血に至るまで

ここからが本症の中核です。第一胃アシドーシスの臨床的な重要性は、急性期の死亡よりむしろ、その後に生じる続発症の広がりにあります。

5-1. 大脳皮質壊死症(PEM、灰白脳軟化症)

ルーメン pH の低下により、チアミナーゼ(チアミン分解酵素)を産生する細菌が増殖します。これによりビタミン B₁(チアミン)が分解され、欠乏状態に陥ります。

チアミンはピルビン酸脱水素酵素・α-ケトグルタル酸脱水素酵素・トランスケトラーゼの補酵素であり、欠乏するとグルコース依存性の高い大脳皮質でエネルギー代謝が破綻します。

症状は中枢性の失明(対光反射は保たれる点が特徴)、後弓反張、旋回運動、痙攣、削痩です。チアミンの大量投与に反応すれば診断的意義があります。なお PEM は、飼料・飲水中の硫黄過剰摂取によっても発生します。

5-2. 蹄葉炎

ルーメン粘膜の傷害により、内毒素やヒスタミンなどの血管作動性物質が吸収されます。これらが蹄真皮の微小循環を障害し、蹄葉炎を引き起こすと従来から説明されています。急性型では回復後数日〜数週で、SARA では慢性的・反復性の蹄病として現れます。

5-3. 肝膿瘍(ruminitis–liver abscess complex)

重要

第一胃炎による粘膜バリアの破綻が、細菌の門脈への侵入を許すことが出発点です。ルーメン内容は本来「体外」に相当しますが、粘膜が壊れることでその境界が失われます。

ルーメン粘膜から侵入した細菌は門脈血流にのって肝臓へ到達し、そこで増殖して膿瘍を形成します。第一胃と肝臓が門脈でつながっているという解剖学的事実が、そのまま病態の道筋になります。

主要起因菌は Fusobacterium necrophorum(壊死桿菌)であり、次いで Trueperella pyogenes が分離されます。

肝膿瘍は生前に症状を示さないことが多く、増体率と飼料効率の低下として現れるにとどまります。多くはと畜検査における肝臓廃棄として初めて把握され、肥育経営における損失の大きな要因となっています。超音波検査で描出は可能です。

5-4. 後大静脈血栓症と鼻出血

肝膿瘍が問題となるのは、それ自体よりも解剖学的な位置によります。肝臓は後大静脈に密接しており、膿瘍が拡大して静脈壁に波及すると、次の連鎖が始まります。

  1. 後大静脈内への血栓形成 肝膿瘍が後大静脈壁を侵し、血栓性静脈炎を起こして感染性血栓が形成されます。
  2. 血栓の剥離と肺への到達 剥離した血栓は静脈血流にのって右心房・右心室を経由し、肺動脈へ到達します。全身の動脈系ではなく肺へ向かうのは、静脈系の血栓だからです。
  3. 肺の敗血症性塞栓と肺動脈瘤の形成 肺動脈内で細菌性塞栓となり、肺膿瘍を形成します。同時に動脈壁が脆弱化して肺動脈瘤が生じます。
  4. 動脈瘤の破裂と気道内出血 動脈瘤が気管支に向かって破裂すると、高圧の動脈血が気道内へ噴出します。
  5. 喀血・鼻出血、そして急死 血液は気道を逆流し、鼻出血(多くは両側性)と喀血として体外に現れます。大量出血の場合は失血により急死します。
鑑別の要点

牛の鼻出血では鼻腔内腫瘍・副鼻腔炎・外傷なども鑑別に挙がりますが、「濃厚飼料多給の飼養歴+慢性の呼吸器症状+両側性の鼻出血や喀血」という組み合わせなら、後大静脈血栓症を強く疑います。鼻の局所疾患として処理してはいけません。

そのほかの所見として、慢性の咳、頻呼吸・努力性呼吸、広範な肺音の異常、貧血、発熱、好中球増多、高フィブリノーゲン血症がみられます。超音波検査では肝膿瘍と後大静脈の拡張が確認されることがあります。予後はきわめて不良で、確立した治療法はありません。

6. 亜急性第一胃アシドーシス(SARA)

SARA は個体の急性疾患ではなく、群の生産性問題として現れます。個々の牛は一見健康に見えるため、次の間接的指標から逆算して疑うことになります。

  • 乳脂率の低下(milk fat depression):ルーメン内 pH 低下により酢酸産生が減り、また不飽和脂肪酸の異常な生合成中間体が乳腺での脂肪合成を阻害します。
  • 乳脂率と乳蛋白率の逆転:通常は乳脂率が乳蛋白率を上回りますが、これが逆転します。
  • 糞便性状の変化:未消化繊維の混入、泡沫、粘液塊(ムチンキャスト)の排出。
  • 蹄葉炎・蹄病の多発:群単位で反復します。
  • 削痩、第二胃・第四胃の変位や肝膿瘍の増加。

確定診断にはルーメン穿刺(rumenocentesis)による pH 測定を行いますが、採材のタイミングが決定的に重要です。pH は日内で変動するため、給餌後の最低値をとらえる時間帯(分離給与では給餌後2〜4時間、TMR では5〜8時間が目安)に実施します。群の複数頭を測定し、一定割合が閾値を下回れば SARA と判定します。

7. 予防

予防はすべて「ルーメン pH を安全域に保つ」という一点に収束します。

  • 濃厚飼料の段階的増給:慣らし期間を設け、急激な切り替えを避けます。誤食を防ぐ飼料保管も重要です。
  • 物理的有効繊維(peNDF)の確保:粗飼料の切断長を保ち、咀嚼・反芻時間と唾液分泌を維持します。
  • 分離採食(selective feeding)の防止:TMR の水分調整や飼槽の攪拌により、濃厚飼料だけを選び食いさせないようにします。
  • 緩衝剤の添加:重曹(炭酸水素ナトリウム)、酸化マグネシウムなど。
  • イオノフォア(モネンシンなど):グラム陽性菌である S. bovisLactobacillus を選択的に抑制し、乳酸産生を抑えます。
  • 生菌剤・酵母製剤:乳酸利用菌の活性を高める目的で用いられます。
  • 給餌回数の増加と飼槽スペースの確保による、採食量の平準化。

8. 国家試験で狙われるポイントの整理

ひっかけ注意
  1. 急性型は乳酸、SARA は VFA の蓄積。「SARA で乳酸が蓄積する」は誤り。
  2. 蓄積するのは主に D-乳酸。哺乳類は D-乳酸を代謝しにくい。
  3. 脱水の主因は下痢ではなく、ルーメン内浸透圧上昇による体液移行。
  4. 輸液は重炭酸ナトリウム。第四胃変位(生理食塩水)と混同しない。
  5. ルーメン液のグラム染色は正常=陰性優勢/アシドーシス=陽性優勢
  6. 原虫(繊毛虫)は消失・運動停止する。
  7. PEM の機序はチアミナーゼ産生菌の増殖によるチアミン欠乏。硫黄過剰も原因となる。
  8. PEM の失明は中枢性で、対光反射は保たれる
  9. 肝膿瘍の主要起因菌は Fusobacterium necrophorum
  10. 鼻出血+慢性呼吸器症状は後大静脈血栓症による肺動脈瘤破裂を疑う。鼻腔疾患ではない。
  11. 細菌は門脈を経て肝臓へ、血栓は静脈血流にのって肺へ向かう。経路を取り違えない。

9. 確認問題

Q1. 濃厚飼料の多給によりルーメン pH が低下する過程を、関与する細菌名を挙げて説明せよ。

A. デンプンの急激な流入により Streptococcus bovis が増殖して乳酸を産生し、pH が低下する。pH 5.5 以下になると S. bovis は抑制されるが、耐酸性の Lactobacillus 属が優勢となってさらに乳酸を産生する。一方、乳酸利用菌である Megasphaera elsdenii などの処理能力を超えるため、乳酸が蓄積して pH は 5.0 未満に低下する。

Q2. 本症で著明な脱水が生じる主たる機序を述べよ。

A. 乳酸およびデンプン分解産物の蓄積によりルーメン内容の浸透圧が上昇し、血管内・間質から第一胃内腔へ水が移動するため。下痢による喪失は副次的であり、主因ではない。

Q3. 第一胃アシドーシスと第四胃変位とで、選択する輸液剤が異なる理由を述べよ。

A. 第一胃アシドーシスは D-乳酸蓄積による代謝性アシドーシスであり、HCO₃⁻ の補充を目的として等張重炭酸ナトリウム液を用いる。一方、第四胃変位は Cl⁻ 喪失による代謝性アルカローシスであり、Cl⁻ を補充する生理食塩水を用い、重炭酸ナトリウムや乳酸リンゲル液はアルカローシスを増悪させるため避ける。

Q4. 濃厚飼料を多給されていた肥育牛が、慢性の咳と両側性の鼻出血を示した。想定される病態を経路とともに説明せよ。

A. 第一胃アシドーシスによる第一胃炎で粘膜バリアが破綻し、細菌が門脈を経て肝臓へ達して肝膿瘍を形成した。膿瘍が後大静脈に波及して感染性血栓を生じ、剥離した血栓が右心を経て肺動脈に塞栓した。その結果、肺膿瘍と肺動脈瘤が形成され、動脈瘤が気管支内へ破裂して喀血・鼻出血をきたしたと考えられる(後大静脈血栓症)。予後は不良である。

Q5. 第一胃アシドーシスに続発する大脳皮質壊死症(PEM)の機序と、特徴的な神経症状を述べよ。

A. ルーメン pH の低下によりチアミナーゼ産生菌が増殖し、チアミン(ビタミン B₁)が分解されて欠乏する。チアミンはグルコース代謝の補酵素であるため、大脳皮質でエネルギー代謝が破綻する。特徴的な症状は中枢性の失明(対光反射は保たれる)、後弓反張、旋回運動、痙攣である。

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参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月13日/最終更新日:2026年8月23日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。