骨折と骨癒合|【獣医師国家試験対策】

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骨折は、外科学のなかで最も多く出題されているテーマです。X線像から骨折の種類を答えさせる問題、成長期の動物の成長板の骨折の分類、骨折に伴う神経の損傷、固定の考え方が繰り返し問われています。

本記事では、手術の手順には立ち入らず、「どんな力で折れ、どう治り、どの力に対抗すれば治るのか」という流れで整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が繰り返し問われています。

  • X線像:螺旋骨折、大腿骨頸部の骨折、脛骨の骨幹の骨折などの読影
  • 成長板の骨折:ソルター・ハリス分類(IV型・V型)
  • 固定の原理:テンションバンドワイヤー法
  • 神経の損傷:骨折に伴う橈骨神経・坐骨神経の障害
この記事で押さえること
  • 骨折の分類(開放か閉鎖か、骨折線の形、部位)と、骨折線の形からかかった力がわかること
  • 成長板の骨折のソルター・ハリス分類I〜V型と、V型が見逃されやすい理由
  • 骨の一次癒合と二次癒合、仮骨ができる過程
  • 骨折部にかかる4つの力と、固定の原理
  • 上腕骨の骨折で橈骨神経、骨盤・大腿骨の骨折で坐骨神経が傷む理由

1. 骨折の分類

1-1. 開放骨折と閉鎖骨折

骨折部の皮膚が破れて外とつながっているものが開放骨折、破れていないものが閉鎖骨折です。開放骨折は細菌が入り込みやすく、骨の感染(骨髄炎)の危険が高くなります。

1-2. 骨折線の形とかかった力

  • 横骨折:骨の長軸に直角に折れる。曲げる力で起こる
  • 斜骨折:斜めに折れる。圧縮と曲げの組み合わせで起こる
  • 螺旋骨折:骨折線が骨をらせん状に取り巻く。ねじる力で起こる
  • 粉砕骨折:骨片が3つ以上に分かれる。強い衝撃(交通事故など)で起こる
  • 裂離骨折:腱や靱帯の付着部が、引っ張る力で骨ごとはがれる
  • 若木骨折:若い動物で、骨の片側だけが折れ、反対側は曲がってつながっている不完全な骨折

骨折線の形を見れば、どんな力で折れたかがわかり、どの力に対抗して固定すべきかにもつながります。

2. 成長板の骨折 — ソルター・ハリス分類

成長期の動物の骨の両端には、骨を長く伸ばす成長板(骨端板)があります。成長板は周りの骨や靱帯より弱いため、成長期の骨折は成長板で起こりやすくなります。骨折線と成長板の関係で、次の5つに分けます。

  • I型:骨折線が成長板だけを通り、骨端がずれる
  • II型:成長板から骨幹端へ抜ける。最も多い型
  • III型:成長板から骨端へ抜け、関節面に達する
  • IV型:骨端から成長板を横切って骨幹端まで貫く。関節面に達する。犬や猫の上腕骨の顆(肘の部分)の骨折が代表
  • V型:成長板が押しつぶされる。骨折線がはっきりせず、受傷直後のX線では異常が見つかりにくい
V型はあとから見つかる

V型では成長板の細胞が押しつぶされて、その部分の成長が止まります。犬の前腕では、尺骨の遠位の成長板が早く閉じて、橈骨だけが伸び続けるために前肢が曲がるといった変形が、数週間から数か月たって現れます。受傷直後のX線が正常でも否定できない型です。

III型とIV型は関節面に達するため、関節の形を正確に戻さないと関節症の原因になります。

2-1. 若い猫の大腿骨頭の骨折

若い猫では、大腿骨頭の成長板の部分での骨折がみられます。肥満した若い去勢雄の猫では、大きな外傷がなくても、この成長板で骨頭がずれる大腿骨頭骨端すべりが起こることが知られています。

3. 骨癒合

3-1. 二次癒合(仮骨を経る癒合)

骨片にわずかな動きがある状態で治るときの、自然な治り方です。

  1. 血腫と炎症:骨折部に血が固まり、炎症細胞が集まる
  2. 軟性仮骨:線維組織と軟骨が骨片のあいだをつなぐ
  3. 硬性仮骨:軟骨が骨に置き換わる(軟骨内骨化)
  4. リモデリング:余分な仮骨が削られ、もとの骨の形に近づく

3-2. 一次癒合(仮骨をつくらない癒合)

骨片がすき間なくぴったり合わされ、強固に固定されて動かないときは、仮骨をつくらずに、骨をつくる単位(骨単位)が骨折線を直接横切ってつながります。

3-3. 治りを左右するもの

血流、安定性、感染がないこと、そして年齢です。若い動物ほど早く治り、血流の乏しい部位(犬の橈骨・尺骨の遠位など、とくに小型犬)や感染した骨折は治りにくく、癒合しないまま(偽関節)になることがあります。

4. 固定の原理 — どの力に対抗するか

骨折部には、曲げる力、ねじる力、軸方向に押す力(圧縮)、引っ張る力(牽引)がかかります。固定は、これらの力に打ち勝って骨片を安定させるためのものです。

  • 髄内ピン:骨の中に通すピン。曲げる力には強いが、ねじる力には弱い
  • プレート:骨の表面にねじで固定する板。すべての力に対抗できる
  • 創外固定:皮膚の外から骨にピンを刺し、外側の棒でつなぐ。開放骨折など、骨折部に金属を置きたくないときに向く
  • 外固定(ギプス・副子):骨折部の上下の関節を含めて固定するのが原則。そうしないと骨片が動いてしまう

4-1. テンションバンドワイヤー法の原理

肘頭(上腕三頭筋が付く)、大腿骨の大転子、脛骨粗面(膝蓋靱帯が付く)、踵骨(アキレス腱が付く)など、筋や腱に引っ張られて骨片が離れようとする骨折があります。こうした骨折では、引っ張られる側にワイヤーを8の字に張ることで、筋が骨片を引く力を、骨折面を押しつける力(圧迫)に変えます。力を逆に利用する固定の原理です。

5. 骨折に伴う神経の損傷

  • 橈骨神経(上腕骨の骨折):橈骨神経は上腕骨の外側をらせん状に回り込んで走るため、上腕骨の骨幹の骨折で傷みやすい。肘・手根・指を伸ばせなくなり、前肢の甲を地面につけて歩く(ナックリング)
  • 坐骨神経(骨盤・大腿骨の骨折):坐骨神経は骨盤の後ろから大腿の後ろを下るため、骨盤の骨折や大腿骨の近位の骨折、固定のピンを入れるときに傷みやすい。飛節と指の動きが失われる

神経の走行と支配する筋は、神経トレースラボでたどれます。

6. 骨折と骨癒合で国家試験に狙われるポイント

  • 分類:開放骨折は骨髄炎の危険。横骨折は曲げ、螺旋骨折はねじれ、裂離骨折は引っ張る力
  • ソルター・ハリス分類:I型は成長板のみ、II型は骨幹端へ(最多)、III型は骨端へ、IV型は骨端から骨幹端まで貫く(上腕骨の顆)、V型は圧挫(あとで成長障害、前腕の変形)
  • 骨癒合:二次癒合は血腫 → 軟性仮骨 → 硬性仮骨 → リモデリング。一次癒合は強固な固定で仮骨をつくらない
  • 固定:髄内ピンはねじれに弱い。外固定は上下の関節を含める。テンションバンドは引っ張る力を圧迫に変える
  • 神経:上腕骨の骨折で橈骨神経、骨盤・大腿骨の骨折で坐骨神経

7. 骨折と骨癒合の確認問題

Q1. 螺旋骨折はどのような力で起こるか。また、髄内ピンだけの固定が向かない理由を述べよ。

A. ねじる力で起こる。髄内ピンは曲げる力には強いが、ねじる力には弱いため、それだけでは骨片の回転を止められない。

Q2. ソルター・ハリス分類のIV型とはどのような骨折か。

A. 骨折線が骨端から成長板を横切って骨幹端まで貫く骨折で、関節面に達する。犬や猫の上腕骨の顆の骨折が代表である。

Q3. ソルター・ハリス分類のV型が受傷直後に見逃されやすい理由と、その後に起こる問題を述べよ。

A. 成長板が押しつぶされるだけで骨折線がはっきりしないため、受傷直後のX線では異常が見つかりにくい。その後、成長板の成長が止まり、犬の前腕では尺骨の遠位の成長板が早く閉じて前肢が曲がるなどの変形が起こる。

Q4. テンションバンドワイヤー法の原理を、肘頭の骨折を例に述べよ。

A. 肘頭は上腕三頭筋に引っ張られて骨片が離れようとする。引っ張られる側にワイヤーを8の字に張ると、筋が骨片を引く力が、骨折面を押しつける圧迫の力に変わり、骨片が安定する。

Q5. 上腕骨の骨幹の骨折のあと、前肢の甲を地面につけて歩くようになった犬で考えられる神経の損傷を答え、その理由を述べよ。

A. 橈骨神経の損傷。橈骨神経は上腕骨の外側をらせん状に回って走るため上腕骨の骨折で傷みやすく、肘・手根・指を伸ばす筋を支配しているため、損傷すると指を伸ばせずナックリングが起こる。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月24日/最終更新日:2026年9月24日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。