犬の関節と発育期の骨の病気|【獣医師国家試験対策】

臨床獣医学 > 外科 > 犬の関節と発育期の骨の病気

犬の関節と発育期の骨の病気は、名前が似ていて混同しやすい一方、「どのくらいの大きさの犬に、何歳ごろ起こるか」がはっきり分かれています。国家試験では、股関節形成不全と大腿骨頭の虚血性壊死の取り違えなど、この区別を試す選択肢が繰り返し出ています。

本記事では、病気を「成長期の大型犬」「成長期の小型犬」「成犬」に分け、それぞれで何が起きているかを整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 股関節:股関節形成不全の病態(大腿骨頭の虚血性壊死との区別)
  • 肘:先天性肘関節脱臼
  • 骨:骨軟骨腫症(犬、馬)
この記事で押さえること
  • 股関節形成不全(大型犬の関節のゆるみ)とレッグ・カルベ・ペルテス病(小型犬の大腿骨頭の壊死)の違い
  • 骨軟骨症と離断性骨軟骨症が起こる理由と好発部位
  • 肘関節形成不全の3つの病変と、先天性肘関節脱臼
  • 前十字靱帯断裂の脛骨の前方への動きと、半月板の損傷
  • 小型犬の膝蓋骨内方脱臼とグレード
  • 汎骨炎と骨軟骨腫症

1. 成長期の大型犬に多い病気

1-1. 股関節形成不全

  • 好発:ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなどの大型犬
  • 原因:遺伝的な素因に、急な成長や過剰な栄養などが加わる多因子性の病気
  • 病態:股関節がゆるく、大腿骨頭が寛骨臼から浮き上がる(亜脱臼)。不安定な関節で骨頭と寛骨臼がすり減って変形し、変形性関節症に進む
  • 症状:後肢の跛行、腰を振るような歩き方、両後肢をそろえて跳ぶような走り方、立ち上がりにくさ
  • 検査:関節のゆるみを触診で確かめる(亜脱臼した骨頭が寛骨臼に戻る感触)。X線で寛骨臼の浅さと骨頭の変形、関節のゆるみの程度を評価する

1-2. 骨軟骨症と離断性骨軟骨症

成長期の骨は、関節軟骨の下の軟骨が骨に置き換わりながら伸びていきます(軟骨内骨化)。この置き換わりがうまくいかず、軟骨が厚いまま残るのが骨軟骨症です。厚い軟骨の深い部分には栄養が届かず、壊死して亀裂ができ、軟骨の破片がはがれると離断性骨軟骨症になります。

  • 好発:成長の早い大型犬の若齢期。両側に起こることが多い
  • 好発部位:上腕骨頭の後ろ(肩)、上腕骨の内側の顆(肘)、大腿骨の外側の顆(膝)、距骨(足根)

1-3. 肘関節形成不全

大型犬の成長期に、肘を構成する骨がうまく組み合わさらないことで起こる病気の総称で、次の病変が含まれます。

  • 内側鉤状突起の分離:尺骨の内側の突起が割れたり分かれたりする
  • 肘突起の癒合不全:尺骨の肘突起が、成長とともに尺骨とつながるはずがつながらない
  • 上腕骨の内側の顆の離断性骨軟骨症

1-4. 汎骨炎

若い大型犬(とくにジャーマン・シェパード)で、長骨の骨髄の中に骨が増える病気です。跛行する肢が日によって変わる(移動性の跛行)のが特徴で、多くは成長とともに自然におさまります。X線では骨髄の中が白く濁って見えます。

2. 成長期の小型犬に多い病気

2-1. レッグ・カルベ・ペルテス病

  • 好発:トイ種やテリアなどの小型犬の、生後おおむね4〜12か月
  • 病態:大腿骨頭への血流が途絶え、骨頭が虚血性壊死を起こして崩れ、変形する
  • 症状:多くは片側の後肢の跛行と痛み、太ももの筋の萎縮
  • X線:大腿骨頭の不規則な透けた像、骨頭の扁平化や崩れ
「大腿骨頭の虚血性壊死」はペルテス病

股関節形成不全は大型犬の関節のゆるみから始まる病気で、骨頭の壊死は本体ではありません。大腿骨頭の虚血性壊死は小型犬のレッグ・カルベ・ペルテス病です。同じ股関節の病気でも、犬の大きさと病態がまったく違う点が、選択肢のひっかけとして問われます。

2-2. 膝蓋骨脱臼

  • 好発:小型犬の内方脱臼が最も多い(大型犬では外方脱臼もみられる)
  • 病態:大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靱帯、脛骨粗面が一直線に並ばず、膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れる。滑車溝が浅いことも多い
  • 症状:ときどき後肢を上げてスキップのように歩く
  • グレード:1(手で外しても自然に戻る)、2(膝の曲げ伸ばしで外れたり戻ったりする)、3(常に外れているが手で戻せる)、4(常に外れていて戻せない)

2-3. 先天性肘関節脱臼

小型犬に生まれつきみられる肘の脱臼で、多くは橈骨の頭が外側へ外れる形をとります。生後まもなくから前肢の変形や歩行の異常がみられます。

3. 成犬に多い病気 — 前十字靱帯断裂

  • 位置づけ:犬で最も多い膝の病気。前十字靱帯は、獣医解剖学では頭側十字靱帯と呼ばれる
  • 起こり方:人のように激しい運動で一度に切れるより、中高齢や肥満の犬で靱帯が少しずつ変性して切れることが多い
  • 病態:前十字靱帯は、脛骨が大腿骨に対して前方へずれるのを防いでいる。切れると体重をかけるたびに脛骨が前方へずれ、膝が不安定になる
  • 検査:脛骨を前方へ引き出すと動く(前方引き出し徴候)、飛節を曲げると脛骨が前方へ出る(脛骨圧迫試験)
  • 合併症:不安定な膝で内側の半月板が押しつぶされて傷み、変形性関節症が進む

4. 骨軟骨腫症

成長期の骨の表面から、軟骨の帽子をかぶった骨の突起(外骨腫)が多発する病気です。犬や馬でみられ、骨の成長が止まるとともに突起の成長も止まるのが特徴です。まれに悪性の腫瘍に変わることがあります。

5. 犬の関節の病気で国家試験に狙われるポイント

  • 股関節形成不全:大型犬、多因子性、関節のゆるみと亜脱臼 → 変形性関節症
  • レッグ・カルベ・ペルテス病:小型犬、4〜12か月、大腿骨頭の虚血性壊死、片側性が多い
  • 離断性骨軟骨症:大型犬の成長期、軟骨内骨化の障害、肩・肘・膝・足根
  • 肘関節形成不全:内側鉤状突起の分離、肘突起の癒合不全、離断性骨軟骨症
  • 前十字靱帯断裂:成犬で最多の膝の病気、変性による断裂、前方引き出し徴候、内側半月板の損傷
  • 膝蓋骨脱臼:小型犬の内方脱臼、グレード1〜4
  • 汎骨炎:若い大型犬の移動性の跛行、骨髄の中の骨の増生、自然におさまる

6. 犬の関節の病気の確認問題

Q1. 股関節形成不全とレッグ・カルベ・ペルテス病の違いを、好発する犬の大きさと病態から述べよ。

A. 股関節形成不全は大型犬に多く、股関節のゆるみ(亜脱臼)から変形性関節症に進む。レッグ・カルベ・ペルテス病は小型犬の成長期に多く、大腿骨頭への血流が途絶えて骨頭が虚血性壊死を起こす。

Q2. 離断性骨軟骨症が起こるしくみを述べよ。

A. 成長期に関節軟骨の下の軟骨が骨に置き換わる過程(軟骨内骨化)がうまくいかず、軟骨が厚く残る(骨軟骨症)。厚い軟骨の深部に栄養が届かず壊死して亀裂ができ、軟骨の破片がはがれて離断性骨軟骨症となる。

Q3. 前十字靱帯断裂で前方引き出し徴候がみられる理由を述べよ。

A. 前十字靱帯は脛骨が大腿骨に対して前方へずれるのを防いでいるため、断裂すると脛骨を前方へ引き出すと異常に動くから。

Q4. 小型犬に多い膝蓋骨脱臼の方向と、そのグレード3の状態を答えよ。

A. 内方脱臼が多い。グレード3は、膝蓋骨が常に外れているが、手で押すと滑車溝に戻せる状態である。

Q5. 若いジャーマン・シェパードで、跛行する肢が日によって変わり、X線で長骨の骨髄の中が白く濁っていた。考えられる病気を答えよ。

A. 汎骨炎。若い大型犬の長骨の骨髄の中に骨が増える病気で、移動性の跛行が特徴であり、多くは成長とともに自然におさまる。

関連コンテンツ

理解度チェック

詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月24日/最終更新日:2026年9月24日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。