TCA回路は、ぐるぐる回る発電工場にゃん
ミトコンドリアの中で、燃料(アセチルCoA)を受け取り、炭素をCO₂として捨てながら、満充電のバッテリー(NADH・FADH₂)を回収していく。集めたバッテリーは電子伝達系という水力発電所に運ばれ、大量のATPに換金されます。
炭素2個の荷物
電子を運ぶ
現金エネルギー
1工場の場所と登場人物どこで、だれが働くか
TCA回路(クエン酸回路)が回っているのは、細胞内のミトコンドリア・マトリックスです。そして、そこで作られたバッテリーを使うのが、すぐ隣の内膜に並ぶ電子伝達系です。
働く場所
回路はマトリックス、発電は内膜。この距離の近さが効率のカギ
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燃アセチルCoA炭素2個
糖(解糖系)や脂質(β酸化)が分解されて届く燃料です。
受オキサロ酢酸炭素4個
工場の入り口で燃料を待っている受け取り役。1周まわると再生されて、また次の燃料を待ちます。
C6クエン酸炭素6個
燃料と受け取り役が合体してできる、回路のスタート物質です。回路の別名「クエン酸回路」はここから来ています。
電NADH・FADH₂満充電のバッテリー
回路の中で回収される高エネルギー電子の運び屋です。次の電子伝達系へ運ばれて、大量のATPに換わります。
ATPATP・GTP現金エネルギー
細胞内でそのまま使えるエネルギー通貨です。TCA回路そのものからは、1周につきGTP(ATP)が1分子だけ直接手に入ります。
2回路が回る3ステップ合体 → 削って充電 → 再生
回路の1周は、燃料の搬入と合体 → 炭素を削り落として充電 → エネルギー回収と受け取り役の再生の3段階です。炭素の数を数えながら追うと、迷子になりません。
TCA回路の1周
炭素は6 → 5 → 4と削られ、そのたびにバッテリーが充電される
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- 燃料の搬入と合体食事からできたアセチルCoA(炭素2個)が、待ち構えていたオキサロ酢酸(炭素4個)と結合して、クエン酸(炭素6個)が作られます。
- 炭素を削り落として充電クエン酸はイソクエン酸に変形したあと、炭素をCO₂として吐き出しながら小さくなっていきます。
・イソクエン酸 → α-ケトグルタル酸(炭素5個):CO₂を1個放出し、NADHを1個充電
・α-ケトグルタル酸 → スクシニルCoA(炭素4個):もう1個CO₂を放出し、さらにNADHを1個充電 - エネルギー回収と受け取り役の再生炭素数が4個まで戻ったら、分子の形を変えながら残りのエネルギーを搾り取ります。
・スクシニルCoA → コハク酸のときにGTP(ATP)を1個獲得
・コハク酸 → フマル酸のときにFADH₂を1個充電
・フマル酸 → リンゴ酸を経てオキサロ酢酸に戻るときに、最後のNADHを1個充電
迷ったら炭素の数を数えるにゃん。4(オキサロ酢酸)+2(アセチルCoA)=6(クエン酸)、そこからCO₂を2回吐いて6→5→4に戻る。4に戻ればゴールが近い、というリズムで覚えるにゃん。再生されたオキサロ酢酸は、次のアセチルCoAをまた待つにゃん。
31周あたりの収穫量アセチルCoA 1分子から
回路を1周すると、バッテリーと現金と排気ガスが決まった数だけ手に入ります。NADH 3・FADH₂ 1・GTP 1・CO₂ 2。この数字はそのまま覚えてしまいます。
| 生成物 | 数量 | 主な役割・行き先 |
|---|---|---|
| NADH | 3分子 | 電子伝達系へ運んで大量のATPを合成 |
| FADH₂ | 1分子 | 電子伝達系へ運んでATPを合成 |
| GTP(ATP) | 1分子 | 細胞内で直接使われる即効性エネルギー |
| CO₂ | 2分子 | 排気ガスとして呼吸で体外へ排出 |
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グルコース1分子ぶん
アセチルCoAが2つできるので、回路も2周
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4電子伝達系の4ステップミトコンドリアの水力発電所
電子伝達系は、TCA回路で作られたNADHやFADH₂から電子を回収し、ミトコンドリア内膜を挟んだ「ダムの水位差」を利用してATPを量産するシステムです。
電子伝達系のしくみ
H⁺をダムに溜めて、落ちる力で発電機を回す
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- 電子(e⁻)のバトンタッチTCA回路から届いたNADHやFADH₂が、ミトコンドリア内膜に並ぶタンパク質複合体(複合体I〜IV)に高エネルギー電子を渡します。
- H⁺のくみ上げ(ダムに水を溜める)電子が複合体を次々と移動する(電子リレー)際に生じるエネルギーで、マトリックス側から膜間腔へH⁺をポンプのようにくみ上げます。これで内膜の外側にH⁺の濃度勾配(ダムの水位差)ができます。
- ATP合成酵素の回転(水力発電)たまったH⁺がATP合成酵素というトンネルを通ってマトリックスへ一気に逆流します。この流れで酵素の軸がグルグル回転し、ADPとリン酸が結合して大量のATPが作られます。
- 酸素(O₂)による電子の回収リレーを走り終えた電子は、呼吸で吸い込んだ酸素とH⁺に引き取られ、安全な水(H₂O)になって処理されます。
私たちが酸素を吸う理由は、まさにこの最後のステップにゃん。酸素は電子の最終的な受け取り役で、ここが詰まるとリレー全体が止まり、H⁺のダムも作れなくなってATPが枯渇するにゃん。青酸カリ(シアン)が複合体IVを止めて致命的になるのもこの理屈にゃん。
5ATP換算レートNADHとFADH₂の差はどこから
同じ「満充電のバッテリー」でも、どこからリレーに参加するかで、くみ上げられるH⁺の量=作れるATPの量が変わります。
NADH:フルコースを走るので取り分が多い
FADH₂:複合体Iをスキップするぶん少なめ
| 物質 | 電子のスタート地点 | くみ出せるH⁺の量 | 換算ATP量 |
|---|---|---|---|
| NADH | 複合体I | 多い(3か所のポンプを作動) | 約 2.5 ATP |
| FADH₂ | 複合体II | やや少ない(複合体Iをスキップ) | 約 1.5 ATP |
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ATPの出どころ
直接できるATPはごくわずか。ほとんどは電子伝達系
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TCA回路が直接くれるのは1周につきGTP 1個だけにゃん。回路の本当の仕事は「バッテリーを充電すること」で、換金は電子伝達系がやってくれるにゃん。だからグルコース1分子ぶん30〜32ATPのうち、約9割は電子伝達系の取り分になるにゃん。
ミニテスト(10問)
0 / 10 問正解選ぶとすぐに正解と解説が出ます。まちがえた項目だけ、上の図や表に戻って確認してください。
Q1.TCA回路が回っている場所はどこ?
正解:ミトコンドリア・マトリックス 内膜に並んでいるのは電子伝達系です。解糖系は細胞質基質で進みます。
Q2.アセチルCoAと結合してクエン酸をつくる「受け取り役」はどれ?
正解:オキサロ酢酸 炭素4個+炭素2個=炭素6個のクエン酸ができます。1周まわると再生され、また次のアセチルCoAを待ちます。
Q3.クエン酸の炭素数はいくつ?
正解:6個 ここからCO₂を2回放出して、6 → 5 → 4と減っていきます。
Q4.回路を1周すると、NADHは何分子つくられる?
正解:3分子 イソクエン酸→α-ケトグルタル酸、α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA、リンゴ酸→オキサロ酢酸の3か所です。あわせてFADH₂ 1・GTP 1・CO₂ 2ができます。
Q5.FADH₂がつくられるのはどのステップ?
正解:コハク酸 → フマル酸 この反応を担う酵素(コハク酸デヒドロゲナーゼ)は、電子伝達系の複合体IIそのものでもあります。
Q6.GTP(ATP)が直接1個つくられるのはどのステップ?
正解:スクシニルCoA → コハク酸 TCA回路が直接くれるエネルギー通貨は、1周につきこの1個だけです。
Q7.グルコース1分子から、TCA回路は何周まわる?
正解:2周 したがって収穫量も2倍(NADH 6・FADH₂ 2・GTP 2・CO₂ 4)になります。
Q8.電子伝達系で、H⁺はどこへくみ上げられる?
正解:マトリックス → 膜間腔 これでダムの水位差(H⁺の濃度勾配)ができます。逆流するときにATP合成酵素が回ってATPができます。
Q9.NADHとFADH₂のATP換算量の組み合わせとして正しいのはどれ?
正解:NADH 約2.5/FADH₂ 約1.5 FADH₂は複合体IIからの「途中参加」で複合体Iのポンプをスキップするため、くみ上げられるH⁺が少なくなります。
Q10.電子伝達系を走り終えた電子は、最終的に何に引き取られる?
正解:酸素に引き取られて水になる 私たちが酸素を吸う理由がここにあります。CO₂はTCA回路で放出される排気ガスです。
TCA回路と電子伝達系|掲載の図はすべてしくみを示す模式図です。ATP収量は計算方法や教科書によって多少異なります(グルコース1分子あたり30〜32ATPは代表的な値です)。
ミニテストの結果はこのページ内だけで保持され、保存されません。