応用獣医学 > 獣医事法規 > 動物愛護管理法と動物福祉
動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)は、環境省が所管する、動物の命を守り、人と動物が共に暮らせる社会をつくるための法律です。国家試験では、虐待の範囲、獣医師の通報、動物取扱業、所管の省庁などが、過去5回すべてで出題されています。
本記事では、法律の名前の通り「愛護(動物を守る)」と「管理(人への危害や迷惑を防ぐ)」の2つの柱で整理し、動物福祉の考え方と、関連する身体障害者補助犬法・外来生物法もあわせて扱います。
過去の出題では、次の形式が問われています。
- 虐待:肉体的な苦痛だけでなく恐怖を与える行為も虐待にあたること、ネグレクト(世話の放棄)も処罰の対象であること
- 制度:動物取扱業、所管の省庁(環境省)
- 事例:飼い主が入院して世話ができなくなった猫、近隣からの苦情への対応
- 福祉:5つの自由、家畜の輸送、実験動物の福祉、補助犬、外来生物
- 法律の目的と、愛護動物の範囲
- 殺傷、虐待(ネグレクトを含む)、遺棄が処罰されること
- 虐待が疑われる動物を見つけた獣医師の通報の義務
- 第一種・第二種動物取扱業と、犬猫の販売に関する規制(マイクロチップ)
- 特定動物の許可制
- 動物福祉の5つの自由と、実験動物の3R
1. 目的と基本原則
動物愛護管理法は、動物の虐待や遺棄を防ぎ、適正に扱うことで動物を愛護する気風を育てるとともに、動物による人の生命・身体・財産への危害や、生活環境への迷惑を防ぐことで、人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的としています。「動物が命あるものであることにかんがみ」、みだりに殺したり苦しめたりせず、習性を考慮して適正に取り扱うことが基本原則です。
2. 愛護 — 動物を守るための規定
2-1. 飼い主の責任
飼い主は、動物の種類や習性に応じて適正に飼養し、健康と安全を守るよう努めなければなりません。できる限り、動物が命を終えるまで適切に飼う(終生飼養)こと、繁殖を望まない場合は不妊去勢などの措置をとることも努力義務とされています。
2-2. 愛護動物と処罰される行為
罰則の対象となる愛護動物は、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひると、人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類です。次の行為が処罰されます。
- 殺傷:みだりに殺したり傷つけたりすること。最も重い罰則
- 虐待:みだりに身体に外傷を生じるおそれのある暴行を加えること、恐怖を与える行為、酷使、狭い場所への拘束などに加え、えさや水を与えない、病気やけがを放置する、排せつ物が堆積した場所で飼うといったネグレクト(世話の放棄)も含まれる
- 遺棄:動物を捨てること
肉体的な苦痛を与えることだけでなく、恐怖を与えることや、必要な世話をしないこと(ネグレクト)も虐待として処罰されます。「ネグレクトは処罰の対象外」は誤りとして問われています。
2-3. 獣医師の通報の義務
獣医師は、その業務を行うにあたり、みだりに殺されたと思われる動物の死体や、みだりに傷つけられたり虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければなりません。以前は努力義務でしたが、法改正で義務になりました。
2-4. 動物の殺処分
動物を殺す必要がある場合は、できる限り苦痛を与えない方法によらなければなりません。
3. 管理 — 人への危害と迷惑を防ぐための規定
3-1. 動物取扱業
- 第一種動物取扱業:営利を目的とする販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養。都道府県知事などへの登録が必要で、事業所ごとに動物取扱責任者を置く
- 第二種動物取扱業:営利を目的としない一定数以上の動物の譲渡や展示など。届出が必要
3-2. 犬や猫の販売に関する規制
- 生後56日(8週)を経過しない犬や猫の販売のための引渡しや展示は禁止されている(一部の日本犬の特例を除く)
- 犬猫等販売業者には、販売する犬や猫へのマイクロチップの装着と情報の登録が義務づけられている。一般の飼い主が犬や猫を取得した場合は、装着が努力義務となる
- 飼養施設の広さ、従業員1人あたりの頭数、繁殖の回数や年齢などについて、数値の基準が定められている
3-3. 特定動物
トラ、クマ、ワニ、毒ヘビなど、人の生命や身体に危害を加えるおそれのある動物は特定動物に指定され、飼養には都道府県知事などの許可が必要です。愛玩の目的での飼養は禁止されています。
3-4. 周辺の生活環境の保全
多頭飼育などで鳴き声や悪臭が生じ、周辺の生活環境が損なわれている場合、都道府県知事などは飼い主に対して勧告や命令を行うことができます。
4. 動物福祉の考え方
4-1. 5つの自由
動物福祉は、次の5つの自由で考えます。国際獣疫事務局(WOAH)も、動物福祉を考えるうえでの指針としています。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・負傷・病気からの自由
- 恐怖と苦悩からの自由
- 正常な行動を示す自由
家畜では、飼育の環境だけでなく、輸送、積込み・積下ろし、と畜の場面でも配慮が求められます(アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理)。
4-2. 実験動物の3R
- Replacement(代替):できる限り動物を使わない方法に代える
- Reduction(削減):できる限り使う動物の数を減らす
- Refinement(苦痛の軽減):できる限り苦痛を与えない方法で行う
動物愛護管理法にもこの考え方が定められています。実験を終えた動物を殺す場合も、麻酔薬を使うなど、できる限り苦痛を与えない方法で行わなければなりません。
5. 関連する法律
5-1. 身体障害者補助犬法(厚生労働省)
- 補助犬:盲導犬、介助犬、聴導犬
- 公共施設、公共交通機関、不特定多数が利用する民間の施設などは、補助犬の同伴を原則として拒んではならない
- 補助犬の使用者は、補助犬であることを示す表示をつけ、衛生や行動の管理に責任をもつ
5-2. 外来生物法(環境省)
生態系や人の生命、農林水産業に被害を及ぼす特定外来生物(アライグマ、マングースなど)は、飼養、運搬、輸入、野外への放出などが原則として禁止され、研究などの目的で許可を受けた場合に限って飼養できます。
6. 動物愛護管理法で国家試験に狙われるポイント
- 所管:動物愛護管理法と外来生物法は環境省、補助犬法は厚生労働省
- 目的:愛護(虐待・遺棄の防止)と管理(危害・迷惑の防止)で、人と動物の共生する社会の実現
- 愛護動物:牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる+人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類
- 処罰:殺傷、虐待(恐怖を与える行為、ネグレクトを含む)、遺棄
- 獣医師の通報:虐待を受けたと思われる動物などを発見したら、遅滞なく都道府県知事などに通報する義務
- 動物取扱業:第一種は登録、第二種は届出
- 犬猫の販売:生後56日を経過しない犬猫の販売のための引渡しの禁止。販売業者のマイクロチップの装着・登録の義務
- 特定動物:許可制、愛玩目的の飼養は禁止
- 福祉:5つの自由、実験動物の3R(代替・削減・苦痛の軽減)
7. 動物愛護管理法の確認問題
Q1. 動物愛護管理法で処罰の対象となる「虐待」に含まれる行為の例を、肉体的な暴行以外で2つ挙げよ。
A. 恐怖を与える行為、えさや水を与えない・病気やけがを放置するなどのネグレクト(世話の放棄)、排せつ物が堆積した場所での飼養などから2つ。
Q2. 診療中に、虐待を受けたと思われる犬を見つけた獣医師がとるべき対応を、法律の規定から述べよ。
A. 遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。動物愛護管理法で、獣医師の通報は義務とされている。
Q3. 第一種動物取扱業と第二種動物取扱業の違いを述べよ。
A. 第一種は営利を目的とする販売、保管、貸出し、訓練、展示などで、都道府県知事などへの登録が必要。第二種は営利を目的としない一定数以上の動物の譲渡や展示などで、届出が必要。
Q4. 動物福祉の「5つの自由」をすべて挙げよ。
A. 飢えと渇きからの自由、不快からの自由、痛み・負傷・病気からの自由、恐怖と苦悩からの自由、正常な行動を示す自由。
Q5. 実験動物の福祉における3Rとは何か。
A. Replacement(動物を使わない方法への代替)、Reduction(使う動物の数の削減)、Refinement(苦痛の軽減)。
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詳細な解説
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