アレルギー(Ⅰ〜Ⅳ型)|【獣医師国家試験対策】

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アレルギー(過敏症)は、免疫応答が生体にとって不利益に働く状態を指し、機序によってⅠ型からⅣ型に分類されます。国家試験では「型」と「代表疾患」の組み合わせがそのまま出題されるため、分類を正確に押さえておけば確実な得点源になります。

分類の骨格は単純です。Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型は抗体が主役(液性免疫)、Ⅳ型だけがT細胞が主役(細胞性免疫)。そして液性の3つは、関与する抗体の種類抗原がどこにあるかで分かれます。この2軸で整理すれば、疾患を型に振り分けられるようになります。

過去問分析

第73回〜第77回の試験問題を分析したところ、学説試験A・Bにおいて免疫学の基礎(細胞・分子・アレルギーの型)は各回2〜4問程度出題されています。

なかでもアレルギーの型と具体例の組み合わせは頻出で、たとえば「Ⅲ型アレルギーに該当するもの」としてアルサス反応や膜性腎症を選択させる問題が出題されています。

アレルギーの型(I〜IV型)の分類や、そのメカニズムに直接関連する設問は、合計で4問出題されています。

1. アレルギーの型(分類)を直接問う問題
第76回 学説A:「Ⅲ型アレルギー」に該当するもの(アルサス反応、膜性腎症)を選択させる、分類の知識を直接問う設問。選択肢には、尋常性天疱瘡(Ⅱ型)、接触性皮膚炎(Ⅳ型)、ツベルクリン反応(Ⅳ型)などが含まれており、各型の区別が必要。

2. アレルギーに関与する抗体や細胞の知識を問う問題
第77回 必須:マスト細胞(肥満細胞)に結合して「I型アレルギー」に関与する免疫グロブリン(IgG、IgE、IgMなど)を選択させる問題。
第74回 必須:牛のIgGに関する記述の中で、「即時型アレルギー(I型)に関与する」という選択肢が登場し、IgEとの違いを問う内容となっています。

3. アレルギーの機序に関連する問題
第73回 学説B:「アレルギー様食中毒」の原因物質(ヒスチジンからのヒスタミン生成)とその機序に関する知識を問う問題。

アレルギーの型(I〜IV型)の整理は免疫学の最重要事項として挙げられています。合格のためには、以下の代表例をセットで覚えておくことが推奨されます。

I型(即時型):IgE、マスト細胞、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹。
Ⅱ型(細胞傷害型):IMHA(免疫介在性溶血性貧血)、天疱瘡。
Ⅲ型(免疫複合体型):アルサス反応、膜性腎症。
Ⅳ型(遅延型):ツベルクリン反応、接触性皮膚炎。


このように、単独の分類問題に加えて、必須問題での基礎知識としても繰り返し問われています。

この記事で押さえること
  • Ⅳ型のみが細胞性免疫で、抗体が関与しないこと
  • Ⅱ型とⅢ型の決定的な違い(抗原が細胞に固定されているか、可溶性か)
  • Ⅳ型が24〜72時間の遅延を示す理由
  • アナフィラキシーのショック臓器に種差があること(犬は肝臓、猫は肺)
  • IMHA・ITPはⅡ型、SLE・免疫介在性多発性関節炎はⅢ型であること

1. 分類の全体像

別名主役発現までの時間代表疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE
肥満細胞・好塩基球
数分〜30分 アナフィラキシー、犬のアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、蕁麻疹、猫の喘息
Ⅱ型 細胞傷害型 IgG・IgM
補体・食細胞
数時間 IMHAITP、新生子溶血、不適合輸血、重症筋無力症、落葉状天疱瘡
Ⅲ型 免疫複合体型 免疫複合体
補体・好中球
数時間〜数日 アルサス反応、血清病、膜性腎症・糸球体腎炎、SLE、免疫介在性多発性関節炎
Ⅳ型 遅延型 感作T細胞
マクロファージ
(抗体は関与しない)
24〜72時間 ツベルクリン反応、接触性皮膚炎、移植拒絶反応、肉芽腫形成

2. 各型の機序

Ⅰ型からⅣ型までのアレルギー反応の機序を比較した模式図 Ⅰ型:即時型 IgE・肥満細胞 抗原 ヒスタミン等 Ⅱ型:細胞傷害型 IgG・IgM/細胞表面の抗原 補体活性化 貪食 抗原は細胞膜に固定されている Ⅲ型:免疫複合体型 可溶性抗原+抗体の複合体 好中球 血管壁・糸球体・関節滑膜などに沈着 Ⅳ型:遅延型 感作T細胞・マクロファージ T サイトカイン 抗体は関与しない 反応は24〜72時間後に現れる Ⅰ〜Ⅲ型は抗体による液性免疫、Ⅳ型のみ細胞性免疫。

図:4つの型の機序。Ⅰ型では肥満細胞表面のIgEが抗原により架橋されて脱顆粒が起こる。Ⅱ型では細胞膜に固定された抗原に抗体が結合する。Ⅲ型では可溶性抗原と抗体の複合体が組織に沈着して好中球を呼び込む。Ⅳ型では抗体が関与せず、感作T細胞とマクロファージが反応を担う。

2-1. Ⅰ型(即時型)

あらかじめIgEが肥満細胞や好塩基球の表面受容体に結合しています(感作)。ここへ抗原が再び入ると、隣り合うIgEを橋渡し(架橋)して細胞を活性化させ、脱顆粒が起こります。放出されたヒスタミンやロイコトリエンが血管透過性の亢進、平滑筋の収縮、腺分泌の増加を引き起こします。

すでに抗体が待機している状態から始まるため、反応は数分から30分以内と極めて速く進みます。

2-2. Ⅱ型(細胞傷害型)

細胞膜に固定された抗原に対してIgGまたはIgMが結合します。結合した抗体は補体を活性化して細胞膜を破壊するか、食細胞のFc受容体に認識されて貪食を促します(オプソニン化)。

標的が赤血球なら溶血、血小板なら血小板減少、アセチルコリン受容体なら神経筋伝達の障害というように、どの細胞・分子が標的になるかで疾患名が決まります

2-3. Ⅲ型(免疫複合体型)

抗原が細胞に固定されておらず血中を漂う可溶性の状態にある場合、抗体と結合して免疫複合体を形成します。この複合体が血管壁、糸球体、関節滑膜などに沈着し、補体を活性化して好中球を呼び寄せることで組織が傷害されます。

局所に限局したものがアルサス反応、全身性に生じたものが血清病です。

2-4. Ⅳ型(遅延型)

唯一抗体が関与しない型です。抗原提示を受けて感作されたT細胞がサイトカインを放出し、マクロファージを活性化することで反応が進みます。

なぜ「遅延型」なのか

Ⅰ〜Ⅲ型ではすでに存在する抗体が反応を担うため速やかに発現します。これに対しⅣ型では、T細胞が抗原を認識し、増殖し、サイトカインを産生してマクロファージを集めるという細胞レベルの過程を経る必要があります。この時間差が24〜72時間の遅延として現れるのです。

3. Ⅱ型とⅢ型の決定的な違い

もっとも問われる区別

Ⅱ型もⅢ型も、関与するのはIgG・IgMであり補体も活性化されます。両者を分けるのは抗原がどこにあるかの一点です。

  • Ⅱ型:抗原が細胞や組織の膜に固定されている。抗体はその場に結合し、その細胞が壊される
  • Ⅲ型:抗原が可溶性で、抗体と複合体をつくってから別の場所に沈着する。傷害されるのは沈着した場所であり、抗原とは無関係の組織

「標的そのものが壊れる」のがⅡ型、「とばっちりで別の場所が壊れる」のがⅢ型と捉えると区別しやすくなります。

4. アナフィラキシーとショック臓器の種差

Ⅰ型反応が全身性に生じた状態がアナフィラキシーです。ここで重要なのが、もっとも強く障害される臓器(ショック臓器)が動物種によって異なるという点です。

動物種ショック臓器主な症状
肝臓(肝静脈)門脈系のうっ血により嘔吐・下痢・虚脱が前面に出る
肺(気道)気管支収縮による呼吸困難
牛・馬呼吸困難

治療の第一選択はアドレナリンです。血管収縮による血圧の維持、気管支拡張、肥満細胞からのメディエーター放出の抑制という複数の作用が同時に必要となるためです。抗ヒスタミン薬やグルココルチコイドは補助的な位置づけであり、急性期の第一選択にはなりません。

5. 臨床で出会う疾患の型分類

疾患機序
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)Ⅱ型赤血球膜の抗原に抗体が結合し、補体または貪食により破壊される
免疫介在性血小板減少症(ITP)Ⅱ型血小板膜の糖蛋白に対する自己抗体
新生子溶血Ⅱ型初乳中の移行抗体が新生子の赤血球を攻撃する
重症筋無力症Ⅱ型アセチルコリン受容体に対する自己抗体
落葉状天疱瘡Ⅱ型表皮細胞間の接着構造に対する自己抗体
犬のアトピー性皮膚炎Ⅰ型環境アレルゲンに対するIgE介在性反応
免疫介在性多発性関節炎Ⅲ型免疫複合体が関節滑膜に沈着する
全身性エリテマトーデス(SLE)Ⅲ型核成分に対する自己抗体が複合体を形成し多臓器に沈着する
膜性腎症・糸球体腎炎Ⅲ型免疫複合体が糸球体基底膜に沈着する
ツベルクリン反応Ⅳ型感作T細胞による遅延型反応
移植拒絶反応Ⅳ型細胞傷害性T細胞による攻撃
ノミアレルギー性皮膚炎Ⅰ型+Ⅳ型即時型と遅延型が併存する

6. 国家試験で狙われるポイントの整理

ひっかけ注意
  1. Ⅳ型のみが細胞性免疫で、抗体は関与しない。
  2. Ⅳ型の発現は24〜72時間後。T細胞の反応を経るため遅れる。
  3. Ⅰ型はIgE、Ⅱ型・Ⅲ型はIgG・IgM。
  4. Ⅱ型は細胞膜に固定された抗原、Ⅲ型は可溶性抗原の複合体。これが両者の決定的な違い。
  5. アルサス反応はⅢ型の局所型、血清病はⅢ型の全身型。
  6. 膜性腎症・糸球体腎炎はⅢ型。
  7. IMHA・ITP・新生子溶血・重症筋無力症・落葉状天疱瘡はⅡ型。
  8. SLE・免疫介在性多発性関節炎はⅢ型。
  9. ツベルクリン反応・接触性皮膚炎・移植拒絶はⅣ型。
  10. ショック臓器は犬が肝臓、猫が肺。
  11. アナフィラキシーの第一選択はアドレナリン。抗ヒスタミン薬ではない。
  12. ノミアレルギー性皮膚炎はⅠ型とⅣ型が併存する。

7. 確認問題

Q1. Ⅱ型アレルギーとⅢ型アレルギーの違いを、抗原の存在様式の観点から説明せよ。

A. Ⅱ型では抗原が細胞や組織の膜に固定されており、その場に抗体が結合して当該細胞が破壊される。Ⅲ型では抗原が可溶性であり、抗体と免疫複合体を形成したのちに血管壁や糸球体などへ沈着し、その部位で補体活性化と好中球浸潤による組織傷害を起こす。

Q2. Ⅳ型アレルギーの反応が24〜72時間後に現れる理由を述べよ。

A. Ⅳ型は抗体を介さず、感作T細胞が抗原を認識して増殖し、サイトカインを産生してマクロファージを集積・活性化するという細胞レベルの過程を要するため。あらかじめ存在する抗体が反応を担うⅠ〜Ⅲ型と異なり、時間がかかる。

Q3. 犬と猫でアナフィラキシー時の主症状が異なる理由を述べよ。

A. ショック臓器が異なるため。犬では肝臓(肝静脈)が主なショック臓器であり、門脈系のうっ血により嘔吐・下痢・虚脱が前面に出る。猫では肺(気道)が主であり、気管支収縮による呼吸困難を呈する。

Q4. 免疫介在性溶血性貧血と免疫介在性多発性関節炎は、それぞれ何型アレルギーに分類されるか。理由とともに述べよ。

A. IMHAはⅡ型。赤血球膜という細胞表面の抗原に抗体が結合し、その赤血球自体が破壊されるため。免疫介在性多発性関節炎はⅢ型。可溶性抗原と抗体からなる免疫複合体が関節滑膜に沈着し、その部位で炎症を起こすためである。

Q5. アナフィラキシーに対する第一選択薬とその理由を述べよ。

A. アドレナリン。血管収縮による血圧の維持、気管支の拡張、肥満細胞からのメディエーター放出の抑制という、急性期に必要な複数の作用を同時に発揮するため。抗ヒスタミン薬やグルココルチコイドは補助的な位置づけであり、第一選択とはならない。

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参考文献

  • 新獣医内科学 文永堂出版
  • 伴侶動物治療指針 緑書房
  • 犬と猫の治療ガイド インターズー
  • CAP 緑書房
  • SA Medicine インターズー

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月15日/最終更新日:2026年8月15日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。