一次止血(フォン・ヴィレブランド病、血小板減少症)|【獣医師国家試験対策】

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止血は一次止血二次止血の2段階からなります。一次止血は血小板が損傷部位に集まって栓をつくる過程、二次止血は凝固因子がフィブリンを形成してその栓を固める過程です。

国家試験でまず問われるのは、出血の見え方からどちらの段階が破綻しているかを判断できるかです。点状出血なら一次止血、血腫なら二次止血——この対応が頭に入っていれば、検査を選ぶ段階から正しい方向に進めます。本記事では一次止血のしくみと、その代表的疾患であるフォン・ヴィレブランド病および免疫介在性血小板減少症を扱います。

過去問分析

「一次止血(フォン・ヴィレブランド病、血小板減少症)」について第73〜77回の試験問題を分析したところ4問出題されています。また、関連する薬剤(血小板凝集抑制薬)に関する問題が2問出題されています。

1. フォン・ヴィレブランド病(vWD)に関する問題(3問)
一次止血異常の代表的疾患として、臨床知識から具体的な診断まで幅広く問われています。
第74回 実地C:去勢手術後に出血が止まりにくかったドーベルマンの症例。血小板数は正常で、出血時間(BMBT)が延長し、凝固系検査(PT、APTT)が正常であることから、「フォン・ヴィレブランド病」を特定させる問題。
第76回 必須:「一次止血異常を生じる疾患」として適切なもの(フォン・ヴィレブランド病)を選択させる基礎知識の問題。
第77回 学説B:犬のフォン・ヴィレブランド病に関する詳細な知識問題。タイプ分類(タイプ1〜3)の特徴や、治療における酢酸デスモプレシンの有効性などが問われています。

2. 免疫介在性血小板減少症(ITP)に関する問題(1問)
第76回 学説B:「犬の原発性免疫介在性血小板減少症」に関する記述の正誤を問う問題。巨大血小板の出現や、免疫抑制療法の寛解率などの病態知識が問われています。

3. 関連する薬剤(血小板凝集抑制)の問題(2問)
一次止血のプロセスである血小板の働きを抑制する薬剤についての出題です。
第73回 学説A:「血小板の凝集を抑制する薬」の組み合わせを問う問題で、正解としてアスピリンとシロスタゾールを選択させます。
第76回 学説A:「抗血栓薬」として適切な薬剤(クロピドグレル)を選択させる問題。

血液・臨床病理分野において一次止血は非常に重要な得点源です。
診断の鍵:血小板数が正常でも出血時間(BMBT)が延長していれば vWD を、血小板数が著しく減少していれば ITP を疑うという臨床的判断が求められます。
区別:血友病(二次止血異常)との違い(APTTやPTが正常であること)を整理しておくことが合格のポイントです。

この記事で押さえること
  • 点状出血=一次止血異常/血腫=二次止血異常という対応
  • vWFの2つの機能(血小板粘着の仲介と第VIII因子のキャリア)
  • 重度vWDでAPTTが軽度延長しうる理由
  • 猫の偽性血小板減少と、キャバリアの遺伝性大血小板症
  • BMBTは血小板数が正常なときに意味をもつこと
  • DDAVPが1型に有効で3型には無効である理由

1. 一次止血のしくみ

血管損傷から血小板の粘着・凝集に至る一次止血の過程を示す模式図 ① 血管損傷とコラーゲンの露出 露出したコラーゲン 内皮 血小板 ② 粘着 — vWFによる橋渡し vWF GP Ib を介して結合 vWDで破綻 ③ 凝集 — フィブリノーゲンによる架橋 GP IIb/IIIa を介して結合 血小板無力症で破綻

図:一次止血の3段階。血管が損傷して内皮下のコラーゲンが露出すると、vWFがコラーゲンと血小板のGP Ib受容体を橋渡しして粘着が起こる。活性化した血小板はGP IIb/IIIa受容体を介してフィブリノーゲンで互いに架橋され、血小板血栓が形成される。

1-1. 3つの段階

  1. 粘着:血管が損傷して内皮下のコラーゲンが露出すると、vWFがコラーゲンと血小板のGP Ib受容体を橋渡しします。とくに血流のずり応力が高い部位では、vWFなしに血小板は付着できません。
  2. 活性化:粘着した血小板は形態を変え、顆粒からADP・トロンボキサンA₂・セロトニンなどを放出して、周囲の血小板をさらに動員します。
  3. 凝集:活性化した血小板のGP IIb/IIIa受容体フィブリノーゲンを介して互いに結合し、血小板血栓(一次血栓)が完成します。

1-2. vWFの2つの機能

重要

vWFには機能が2つあります。

  1. 血小板の粘着を仲介する(コラーゲンとGP Ibの橋渡し)
  2. 第VIII因子のキャリア蛋白として、血中で第VIII因子を安定化・保護する

2つ目があるため、重度のvWDでは第VIII因子の活性も低下し、APTTが軽度延長することがあります。「一次止血の病気だからAPTTは必ず正常」と決めつけると誤ります。

2. 一次止血異常と二次止血異常の見分け方

項目一次止血異常二次止血異常
出血の様式表在性・粘膜性深部・体腔内
典型的な所見点状出血、斑状出血、鼻出血、歯肉出血、血尿、メレナ血腫、関節内出血、血胸・血腹、筋肉内出血
出血の時期損傷直後から止まらないいったん止まってから遅れて再出血する
代表疾患血小板減少症、vWD、血小板機能異常症血友病A・B、ビタミンK欠乏(殺鼠剤中毒)、肝不全
主な検査血小板数、BMBT、vWF:AgPT、APTT

点状出血がなぜ一次止血異常の徴候になるのかを理解しておくと忘れません。毛細血管レベルの微小な損傷は日常的に起きており、正常であれば血小板が即座に塞いでいます。血小板が足りない、あるいは働かないと、この微小出血が皮膚や粘膜の点状出血として現れるのです。一方、凝固因子の異常では一次血栓はできるため点状出血は出にくく、いったん止まった出血が後から崩れて血腫を形成します。

3. 検査

3-1. 血小板数

偽性血小板減少に注意

自動血球計数器の値をそのまま信じてはいけません。必ず血液塗抹で確認します。

  • 猫は血小板が凝集しやすく、自動計測で偽性の低値となりやすい種です。
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルには遺伝性の大血小板症・血小板減少症があり、計数上は低値でも止血機能は正常で出血傾向を示しません。大型の血小板が計数されないことによるものです。

3-2. BMBT(口腔粘膜出血時間)

上唇を反転して粘膜に規定の切開を加え、出血が止まるまでの時間を測定する検査です。一次止血の機能を評価します。

重要なのは使いどころです。血小板数が減少していれば延長するのは当然であり、実施しても新しい情報は得られません。血小板数が正常であるにもかかわらずBMBTが延長する場合に、血小板機能異常またはvWDを疑う——これがこの検査の意義です。

3-3. vWF:Ag と凝固検査

  • vWF:Ag:血中のvWF抗原量をELISAで測定し、健常犬の平均を100%とした相対値で表します。vWDの診断に用います。
  • PT・APTT:一次止血異常では原則として正常です。ただし前述のとおり、重度のvWDではAPTTが軽度延長することがあります。

4. フォン・ヴィレブランド病(vWD)

犬でもっとも一般的な遺伝性の出血性疾患です。vWFの量的減少または質的異常により、血小板の粘着が障害されます。

病型vWFの異常重症度代表的な犬種
1型量的減少(すべてのマルチマーが比例して減少)軽度〜中等度。最多ドーベルマン、ウェルシュコーギー・ペンブローク、ミニチュアシュナウザー
2型質的異常(高分子量マルチマーの欠如)重度ジャーマンショートヘアードポインター、ジャーマンワイヤーヘアードポインター
3型ほぼ完全な欠損最重度スコティッシュテリア、チェサピークベイレトリバー、シェットランドシープドッグ

4-1. 臨床症状と診断

鼻出血、歯肉出血、血尿、メレナ、発情時の出血といった粘膜出血が主体です。軽症型では自然出血が乏しく、断尾・断耳・抜歯・避妊手術などの後に異常出血を起こして初めて発見されることが少なくありません。

診断はvWF:Agの測定によります。血小板数は正常、BMBTは延長、PTは正常です。犬種によっては原因変異が特定されており、遺伝子検査が可能です。

4-2. 治療

  • 輸血:新鮮凍結血漿、またはクリオプレシピテートを用います。クリオプレシピテートにはvWFと第VIII因子が濃縮されており、少ない容量で効率よく補充できます。
  • デスモプレシン(DDAVP):血管内皮細胞の貯蔵顆粒(ワイベル・パラーデ小体)からvWFを放出させる薬剤です。
機序から導かれるひっかけ

DDAVPは1型には有効ですが、3型には無効です。DDAVPは「貯蔵されているvWFを放出させる」薬であり、3型では放出すべきvWFがそもそも存在しないためです。作用機序を理解していれば当然の帰結です。

5. 免疫介在性血小板減少症(ITP)

自己抗体が血小板膜の糖蛋白に結合し、脾臓のマクロファージに破壊される疾患です。犬でもっとも一般的な後天性の出血性疾患とされ、中年の雌に多く、コッカースパニエル、オールドイングリッシュシープドッグ、ジャーマンシェパードなどに好発します。

続発性の原因としては、バベシア症やエールリヒア症などのダニ媒介性感染症、腫瘍(リンパ腫、血管肉腫)、薬剤(スルホンアミド、セファロスポリンなど)が挙げられます。IMHAを併発した状態をエバンス症候群と呼びます。

5-1. 症状と診断

点状出血・斑状出血が特徴で、腹部の無毛部、口腔粘膜、耳介内側で観察しやすい所見です。そのほか鼻出血、メレナ、血尿、前房出血がみられ、重度では中枢神経系の出血を起こします。

ITPは除外診断

血小板減少の原因は、産生低下・破壊亢進・消費・分布異常の4つに大別されます。骨髄疾患、DIC、感染症、脾腫などを除外したうえでITPと診断します。

原発性ITPではきわめて重度の血小板減少を示すのが特徴で、感染症による血小板減少はより軽度にとどまることが多い点が手がかりになります。骨髄検査では巨核球が正常〜増加しており、産生は保たれていることが確認できます。

5-2. 治療

  • グルココルチコイドが第一選択です。
  • 反応不良例ではミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンなどを併用します(アザチオプリンは猫には用いません)。
  • ビンクリスチン:巨核球からの血小板放出を促進し、マクロファージの貪食機能も抑制することで、血小板数の回復を早める目的で用いられます。
  • 血小板製剤の入手は困難であるため、輸血は主に貧血に対して行います。

6. 血小板機能異常症

  • 遺伝性血小板無力症GP IIb/IIIa の欠損により凝集が障害される疾患です。血小板数は正常でBMBTが延長します。
  • 後天性:もっとも頻度が高いのはNSAIDsの投与です。シクロオキシゲナーゼを阻害してトロンボキサンA₂の産生を低下させます。とくにアスピリンはCOXを不可逆的に阻害するため、影響は血小板の寿命が尽きるまで持続します。そのほか尿毒症、肝疾患でも生じます。

7. 国家試験で狙われるポイントの整理

ひっかけ注意
  1. 点状出血=一次止血異常/血腫・体腔内出血=二次止血異常。
  2. vWFの機能は血小板粘着の仲介第VIII因子のキャリアの2つ。
  3. 重度vWDではAPTTが軽度延長しうる。
  4. 粘着はGP Ib、凝集はGP IIb/IIIaを介する。
  5. 猫は偽性血小板減少を起こしやすい。必ず塗抹で確認する。
  6. キャバリアの大血小板症は病的ではない。
  7. BMBTは血小板数が正常なときに意味がある。血小板減少症では実施しない。
  8. vWDの1型=量的減少(ドーベルマン)、3型=ほぼ欠損(スコティッシュテリア)
  9. DDAVPは1型に有効、3型には無効(放出すべきvWFがないため)。
  10. クリオプレシピテートにはvWFと第VIII因子が濃縮されている。
  11. ITPは除外診断であり、骨髄では巨核球が正常〜増加する。
  12. ビンクリスチンが血小板数の回復を早める。
  13. アスピリンはCOXを不可逆的に阻害し、血小板の寿命の間作用が続く。
  14. エバンス症候群=ITP+IMHA。

8. 確認問題

Q1. 点状出血が一次止血異常を示唆する理由を述べよ。

A. 毛細血管レベルの微小な損傷は日常的に生じており、正常であれば血小板が速やかに塞いでいる。血小板の数または機能が障害されるとこの微小出血が塞がれず、皮膚や粘膜に点状出血として現れる。凝固因子の異常では一次血栓は形成されるため点状出血は出にくく、遅発性の血腫を形成する。

Q2. 重度のフォン・ヴィレブランド病でAPTTが延長することがある理由を述べよ。

A. vWFは血小板粘着を仲介するだけでなく、第VIII因子のキャリア蛋白として血中で第VIII因子を安定化・保護している。vWFが著明に減少すると第VIII因子も低下するため、内因系を反映するAPTTが軽度延長しうる。

Q3. デスモプレシン(DDAVP)が3型vWDに無効である理由を述べよ。

A. DDAVPは血管内皮細胞の貯蔵顆粒からvWFを放出させる薬剤である。3型ではvWFがほぼ完全に欠損しており、放出すべきvWFが存在しないため効果を示さない。3型ではクリオプレシピテートなどによる補充が必要となる。

Q4. BMBT(口腔粘膜出血時間)を実施する意義がある状況を述べよ。

A. 血小板数が正常であるにもかかわらず一次止血異常が疑われる場合。この状況でBMBTが延長すれば、血小板機能異常またはフォン・ヴィレブランド病を疑う根拠となる。血小板減少症では延長するのが当然であり、実施しても新たな情報は得られない。

Q5. 自動血球計数器で血小板数が低値であった猫について、まず確認すべきことを述べよ。

A. 血液塗抹を作製し、血小板の凝集塊がないかを確認する。猫は血小板が凝集しやすく、自動計測では偽性の血小板減少を示しやすいため、塗抹による確認なしに血小板減少症と判断してはならない。

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参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月14日/最終更新日:2026年8月14日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。