薬は、水に溶ける姿に変えてから体外へ捨てるんだにゃん!
体に入ったお薬は、吸収・分布・代謝・排泄(ADME)というルートをたどるにゃ。なかでも代謝は「油に溶ける薬を、水に溶ける姿に変える」大切な作業だにゃん。そのやり方が犬と猫で決定的に違うところが、小動物臨床で一番効いてくるポイントだにゃん!
代謝・排泄
代謝の工場
通す/通さない
1ADMEの4ステップ薬が体内でたどる道
薬が体内に入ってから出ていくまでの動きは、薬物動態学でADME(アドメ)と呼ばれるにゃん!
ADMEの流れ
吸収 → 分布 → 代謝 → 排泄
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A吸収Absorption
胃や腸などの投与部位から血液中に入るステップだにゃん。
D分布Distribution
血液に乗ってターゲットの組織・器官へ運ばれるステップだにゃん。
M代謝Metabolism
肝臓などで薬を分解・化学変化させるステップだにゃん。
E排泄Excretion
腎臓(尿)や胆汁(便)から体外へ捨てるステップだにゃん。
代謝の本当の目的だにゃん!
代謝の目的は「薬を分解して壊すこと」そのものではなく、「体に溜まりやすい脂溶性(油に溶ける)の薬を、水溶性(水に溶ける)に変えて尿と一緒に捨てられる姿にすること」なんだにゃん!
2代謝の2段階第I相反応と第II相反応
肝臓での代謝は、二段構えのチームプレーで進むにゃん!
代謝の二段構え
壊すのではなく、捨てられる姿に変えていく
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| ステップ | 主な反応・役割 | 登場する主な酵素 |
|---|---|---|
| 第I相反応 Phase I | 薬の構造に酸素をつけたり切ったり(酸化・還元・加水分解)して、次の反応のための「取っ手」を作るにゃん。 | CYP(シトクロムP450)などの酵素群 |
| 第Ⅱ相反応 Phase Ⅱ | 第I相で作った取っ手に親水性の分子を結びつけ(抱合)、一気に水へ溶けやすくするにゃん。 | グルクロン酸抱合、硫酸抱合、グルタチオン抱合など |
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3犬と猫の種差持っている酵素が違う!
肉食の度合いなど進化の歴史が違うため、持っている代謝酵素に大きな違い(種差)があるにゃん。ここが臨床で一番注意が必要なところだにゃ!
猫:ヒトの風邪薬は絶対に与えない
犬:スルホンアミド系の扱いに注意
猫
グルクロン酸抱合の欠損
(UGT1A6の偽遺伝子化)
臨床上の影響:ヒトの風邪薬に含まれるアセトアミノフェンやフェノール類を代謝できず、有毒な中間代謝物が溜まってメトヘモグロビン血症や急性肝不全という重篤な中毒を起こすにゃん!
犬
アセチル化能の欠損
(NAT:N-アセチルトランスフェラーゼ欠損)
臨床上の影響:一部のスルホンアミド系抗菌薬などの代謝速度や、副反応の出やすさに影響するにゃん。
ペアで一発暗記だにゃん!
猫 ➔ グルクロン酸がダメ!
(アセトアミノフェン絶対NG!)
犬 ➔ アセチルがダメ!
(スルホンアミド系に注意!)
猫のアセトアミノフェン中毒は、飼い主さんが良かれと思って風邪薬を与えてしまう悲しい事故が多いから、問診でも絶対チェックだにゃん!
4初回通過効果経口薬の関門
飲み薬(経口投与)は、小腸で吸収されたあと門脈を通って必ず最初に肝臓を通過するにゃん。
全身に巡る前に肝臓の酵素で代謝・分解されて、血中に届く薬効(有効成分)が削られる現象を初回通過効果(First-pass effect)というにゃん。
初回通過効果
同じ量を飲んでも、全身に届く量は減っている
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注射薬や外用薬は肝臓をスルーして直接全身に届くから、初回通過効果を受けないにゃ!
「経口だと効きにくい薬」は、たいていこの初回通過効果で削られているんだにゃん。
5三大生体関門通していい場所と、守るべき場所
生体関門(Biological barrier)は、血液中の薬や有害物質が大事な組織に入り込まないようシャットアウトする防護壁だにゃ。薬物動態の「D(分布)」に深く関わるにゃん!
血液脳関門(BBB)
密着結合+P-糖タンパク質の二重ガード
血液胎盤関門
完全には防げない。妊娠期の薬物選択が最重要
血液精巣関門(BTB)
毒からも、自分の免疫からも精子を守る
| 関門名 | 存在する場所 | 役割と構造的特徴 | 臨床上のポイント |
|---|---|---|---|
| 血液脳関門 BBB | 脳の毛細血管と脳組織(ニューロン)の間 | 血管内皮細胞の密着結合(タイトジャンクション)+アストロサイトがガード。さらにP-糖タンパク質(P-gp)が薬を血液側へ追い返すにゃ! | コリー系などにみられるMDR1(ABCB1)遺伝子変異ではP-gpが機能せず、イベルメクチン等が脳内に流入して重篤な神経中毒を起こすにゃん! |
| 血液胎盤関門 | 母体の血液と胎児の血液の間 | 絨毛膜や血管内皮の層で母体の病原体から守るにゃん。 | 完全には防げないにゃ!脂溶性が高い薬は容易に通過して胎児に影響(催奇形性・毒性)を与えるため、妊娠期の薬物選択で最も重要な関門だにゃん。 |
| 血液精巣関門 BTB | 血液と精巣の精細管の間 | セルトリ細胞どうしの密着結合で形成されるにゃん。 | 発達中の精子を有害物質から守るだけでなく、自分の免疫細胞が精子を異物と認識して攻撃するのを防ぐ(免疫特権)役割があるにゃん! |
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二重ガードのBBBだにゃん!
3つの関門とも土台は「密着結合」だけど、BBBだけはP-gpという強力な排出ポンプが上乗せされているにゃん。だからMDR1変異でP-gpが壊れると、イベルメクチンが脳になだれ込んでしまうんだにゃ!
6関門を通る条件どんな薬なら入れるか?
薬が関門を通り抜けられるかどうかは、主に4つの物理化学的条件で決まるにゃん!
脂高脂溶性:脂に溶けやすいLipophilicity
細胞膜の脂質二重層に溶け込めるにゃん。(例:全身麻酔薬)
小低分子量:サイズが小さいMolecular weight
小さいほどスルッと拡散しやすいにゃん。
非非解離型(分子型):電気を帯びていないNon-ionized
イオン化していない方が膜を通りやすいにゃん。
回排出トランスポーターの回避P-gp
P-gpなどのポンプに捕まらない薬ほど、組織の中に残るにゃん。
正常時:BBBは抗菌薬を通しにくい
炎症時:普段は通れない薬が脳内へ届く
病気のときの裏技現象だにゃん!
髄膜炎などで脳に炎症が起きると、普段はガッチリ閉じているBBBの密着結合がゆるんでスキマができるにゃん。すると、普段は入っていけないペニシリン系などの抗菌薬が脳内へ届くようになるんだにゃ!
薬物代謝と生体関門のミニテスト(10問)
0 / 10 問正解選ぶとすぐに正解と解説が出ます。まちがえた項目だけ、上の図や表に戻って確認してください。
Q1.ADMEの「M」が指しているのはどれ?
正解:代謝(Metabolism) A=吸収、D=分布、M=代謝、E=排泄の順です。
Q2.薬物代謝の大きな目的はどれ?
正解:脂溶性 → 水溶性 体内に溜まりやすい脂溶性の薬を、尿などと一緒に捨てられる姿に変えるのが目的です。
Q3.第I相反応で中心的に働く酵素群はどれ?
正解:CYP 酸化・還元・加水分解によって、次の反応で使う「取っ手」を作ります。UGTやNATは第II相(抱合)の酵素です。
Q4.第II相反応の説明として正しいのはどれ?
正解:抱合させて水に溶けやすくする グルクロン酸抱合・硫酸抱合・グルタチオン抱合などが代表です。
Q5.猫で遺伝子が機能しなくなっている(偽遺伝子化している)酵素はどれ?
正解:UGT1A6 完全肉食動物へ適応する中で機能を失ったと考えられています。犬で欠失しているのはアセチル化能(NAT)です。
Q6.猫にアセトアミノフェンを与えてはいけない理由はどれ?
正解:有毒な中間代謝物が蓄積するため メトヘモグロビン血症や急性肝不全を起こします。ヒトの風邪薬に含まれることが多く、家庭内での事故に注意が必要です。
Q7.犬で活性が欠失している第II相の抱合反応はどれ?
正解:アセチル抱合 一部のスルホンアミド系抗菌薬などの代謝速度や、副反応の出やすさに影響します。
Q8.初回通過効果の説明として正しいのはどれ?
正解:肝臓を通る際に代謝されて薬効が落ちる 小腸で吸収された薬は必ず門脈を経て肝臓を通ります。注射や外用ではこの関門を回避できます。
Q9.コリー犬種などで問題になるMDR1(ABCB1)遺伝子変異では、何が起こる?
正解:P-gpが機能せず薬物が脳内へ流入する BBBは密着結合に加えてP-gpという排出ポンプで守られており、そのポンプが壊れると中枢神経へ薬が届いてしまいます。
Q10.生体関門を通過しやすい薬物の性質の組み合わせはどれ?
正解:高脂溶性・低分子量・非解離型 さらにP-gpの基質にならないことも条件です。なお炎症時は密着結合が弛緩し、普段は通れない抗菌薬(ペニシリン系など)も脳内へ届きやすくなります。
薬物代謝と生体関門|掲載の図はすべてしくみを示す模式図です。薬剤情報は学習用の要点整理であり、実際の使用時は対象動物での適応・用量・種差と最新の添付文書を確認してください。
ミニテストの結果はこのページ内だけで保持され、保存されません。