牛・馬・豚は、食べ方のちがいが
からだ全体に出るにゃん
3種の比較解剖は、丸暗記するより「草をどう消化するか」から考えると一本の線でつながります。胃・歯・ひづめ・内臓・心臓・生殖器・感覚器の順に、ちがいだけを取り出して並べました。
複胃で前腸発酵
盲腸・結腸で後腸発酵
単胃で小腸消化が中心
1消化器系|胃と発酵ちがいの出発点
草のセルロースは動物の酵素では分解できません。だから微生物に借りるのですが、その発酵タンクを胃側に置くか、腸側に置くかで3種は分かれます。
牛牛Bovine|反芻類・偶蹄類
複胃4室・前腸発酵
- 胃
- 第1胃ルーメン・第2胃ハチノス・第3胃センマイ・第4胃ギアラの4室。第1〜第3胃は前胃(無腺胃)で、微生物発酵の場です。第4胃だけが消化腺をもつ「真の胃」にあたります。
- 腸
- 消化の主役が胃の発酵なので、盲腸は比較的シンプルです。
馬馬Equine|単胃草食・奇蹄類
単胃・後腸発酵
- 胃
- 単胃。腺胃と無腺胃がマルゴ・プリカトゥスという境界線ではっきり分かれます。
- 腸
- 盲腸と大結腸が著しく発達し、容積は腹腔の大部分を占めます。ここで微生物がセルロースを分解する後腸発酵です。
豚豚Porcine|単胃雑食・偶蹄類
単胃・雑食
- 胃
- 単胃で、噴門部に憩室と呼ばれる突起構造があるのが特徴です。
- 腸
- 雑食性のため大腸の消化能は馬ほど高くありません。結腸が円錐状に巻いた円錐結腸という形態をとります。
牛:4つの部屋
①ルーメン・②ハチノス・③センマイ=前胃/④ギアラだけが腺胃
馬:胃は小さく、腸が主役
盲腸・大結腸が腹腔を占める
豚:胃の憩室と円錐結腸
結腸が円錐状に巻く
発酵タンクが胃の前にあるのが牛、腸の後ろにあるのが馬、どちらにも頼らないのが豚。この1行が、このあとの歯・ひづめ・内臓のちがいすべての入り口になるにゃん。
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 分類 | 偶蹄目(反芻亜目) | 奇蹄目 | 偶蹄目(猪豚亜目) |
| 食性 | 草食(前腸発酵) | 草食(後腸発酵) | 雑食 |
| 胃の分類 | 複胃(4室) | 単胃 | 単胃(憩室あり) |
| 発酵の中心 | 第1胃(前胃) | 盲腸・大結腸 | なし(主に小腸消化) |
表は横スクロールできます →
2歯と頭部食べ方が形になる
草を「ちぎる」牛、「すり潰す」馬、「なんでも噛む」豚。切歯と臼歯の形、そして歯式に、その差がそのまま出ます。
牛牛上顎の前歯がない
切歯パッド
- 特徴
- 上顎の切歯(前歯)と犬歯が完全に欠如し、代わりに硬い粘膜組織である切歯パッドをもちます。草は舌と切歯パッドで挟んで引きちぎります。
- 永久歯歯式
- 2 ×(I 0/3・C 0/1・P 3/3・M 3/3)=32本
馬馬伸び続ける歯
高冠歯・歯隙
- 特徴
- 歯冠が非常に長く生え続ける高冠歯で、草をすり潰すのに適します。切歯と臼歯の間には広い隙間歯隙があります(ハミが収まる場所)。
- 永久歯歯式(雄)
- 2 ×(I 3/3・C 1/1・P 3または4/3・M 3/3)=40〜42本
豚豚哺乳類の基本型
完全歯式44本
- 特徴
- 哺乳類の基本型に近い完全歯式(44本)をもちます。とくに雄では犬歯が鋭く伸びて牙になります。
- 永久歯歯式
- 2 ×(I 3/3・C 1/1・P 4/4・M 3/3)=44本
牛:上の前歯がない
下の切歯とパッドで挟んで引きちぎる
馬:切歯と臼歯の間があく
臼歯は縦に長い高冠歯
豚:全部そろって44本
雄は犬歯が牙状に伸びる
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 上顎切歯 | なし(切歯パッド) | あり | あり |
| 歯の分類 | 短冠歯(臼歯は高冠) | 高冠歯 | 短冠歯 |
| 歯の総数 | 32本 | 40〜42本(歯隙あり) | 44本・完全歯式 |
表は横スクロールできます →
3運動器系|指・趾体重を何本で受けるか
足先は、体重を支える軸(体重軸)が偶蹄目か奇蹄目かを最も端的に示す部分です。退化した指がどこまで残っているかも合わせて見ます。
牛牛偶蹄目
2本軸
- 主趾
- 第3趾と第4趾が発達して主趾となり、2本で体重を支えます。
- 痕跡
- 第2・第5趾は小指状に退化した副趾として、地面に届かない位置に残ります。
馬馬奇蹄目
1本軸・単蹄
- 主趾
- 完全な単蹄。第3趾のみが著しく発達し、中手骨(中足骨)と指骨を構成します。
- 痕跡
- 第2・第4中手骨(中足骨)は痕跡器官の副骨となり、中骨の外側に張り付いています。
豚豚偶蹄目
実質4本
- 主趾
- 牛と同じく第3・第4趾が主趾です。
- 痕跡
- 第2・第5趾も比較的大きく残り、柔らかい地面では接地して体を支えます。ぬかるみに強い足です。
牛:主趾2本+副趾2本
副趾は地面に届かない
馬:第3趾だけの単蹄
第2・第4中骨は副骨として残る
豚:主趾2本+大きめの副趾2本
副趾がほぼ地面に届く
残っている指の「本数」ではなく接地する軸の本数で覚えるとブレないにゃん。牛と豚はどちらも第3・第4趾が主役の偶蹄目、馬だけが第3趾1本の奇蹄目にゃん。
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 体重軸・主趾 | 偶蹄(第3・4趾の2本軸) | 奇蹄(第3趾の1本軸・単蹄) | 偶蹄(第3・4趾が主趾) |
| 痕跡構造 | 第2・5趾=副趾 | 第2・4中骨=副骨 | 第2・5趾(接地可能) |
表は横スクロールできます →
4実質器官|腎・肝・脾・肺「無いもの」で覚える
この章は、形の細かい描写よりその種に「無い」構造を先に押さえると一気に整理できます。牛には腎盂が無く、馬には胆嚢と気管気管支が無い、が軸です。
腎臓|分葉と腎盂
牛牛有溝多腎葉腎
腎盂なし
- 外観
- 外表面に18〜20個の溝(分葉)がある有溝腎です。
- 内部
- 腎盂を欠くのが最大の特徴。各腎錐体から出た尿は小腎杯・大腎杯を経て、直接尿管へ注ぎます。
馬馬平滑単腎葉腎
左右で形がちがう
- 外観
- 表面は滑らかですが、右腎はハート(心臓)形、左腎はソラマメ形という顕著な左右非対称を示します。
- 内部
- 腎盂に腎盂腺があり、粘液の混じった粘調で混濁した尿を出すのが生理的な正常所見です。
豚豚平滑多腎葉腎
牛と馬の中間型
- 外観
- 表面は滑らかで、背腹に扁平なソラマメ形です。
- 内部
- 内部には腎杯と腎盂の両方が存在する中間的な形態をとります。
牛:デコボコ・腎盂なし
腎杯が集まってそのまま尿管へ
馬:表面はつるつる・左右非対称
粘液の混じった濁った尿が正常
豚:つるつるだけど多腎葉
腎杯も腎盂も両方ある
肝臓と胆嚢|馬だけ胆嚢がない
牛牛分葉は不明瞭
胆嚢あり
- 形
- 切痕が非常に浅く、外観上の明確な分葉は見られません(一体化した塊状)。
馬馬分葉は明瞭
胆嚢なし
- 形
- 葉間切痕が深く、はっきり分葉します。
- 胆汁
- 胆嚢を完全に欠くため、肝管から十二指腸へ直接かつ持続的に胆汁が分泌されます。常に草を食べ続ける生活に合った構造です。
豚豚4葉に分かれる
胆嚢あり
- 形
- 深い切痕で4葉に分かれます。小葉間結合組織が非常に発達しているため、肉眼でも網目模様(小葉構造)がはっきり見えます。
脾臓|シルエットで覚える
牛:上下に長く平坦
馬:背側が広く腹側に尖る
豚:とにかく細く長い
肺|気管気管支があるかどうか
牛・豚は小葉構造が明瞭で、右肺尖葉に向かって気管から直接分岐する気管気管支Tracheal bronchusをもつのが共通の特徴です。馬は小葉間結合組織が乏しいため外表面が平滑で、明確な中葉をもたず(左右とも2〜3葉構成)、気管気管支もありません。
「無いもの」リストで一気に覚えるにゃん。牛=腎盂がない/馬=胆嚢がない・気管気管支がない/豚=無いものがない(全部そろっている)。豚はヒトに近い基本型、と考えると迷わないにゃん。
| 器官 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 腎臓の形態 | 有溝多腎葉(分葉あり) | 平滑単腎葉(右:ハート型/左:ソラマメ型) | 平滑多腎葉(扁平なソラマメ型) |
| 腎盂の有無 | なし(腎杯が直接尿管へ) | あり(腎盂腺があり混濁尿) | あり(腎杯と腎盂が共存) |
| 肝臓の分葉 | 不明瞭(一体的) | 明瞭 | 極めて明瞭(小葉間結合組織が発達) |
| 胆嚢の有無 | あり | なし | あり |
| 脾臓の形状 | 靴べら状(帯状) | 鎌状(くさび形) | 細長い帯状 |
| 気管気管支 | あり(右肺尖葉へ) | なし | あり(右肺尖葉へ) |
表は横スクロールできます →
5循環器系|心臓と大血管分岐・骨・静脈の3点
循環器のちがいは、大動脈弓からの枝分かれ・心骨の有無・奇静脈の左右の3点に集約されます。ここだけ押さえれば十分です。
大動脈弓からの直接分岐
牛牛1本分岐
腕頭動脈のみ
- 走行
- 大動脈弓から直接出る枝は腕頭動脈1本のみ。ここから左鎖骨下動脈、両側総頸動脈(頸動脈幹)、右鎖骨下動脈が順に分岐します。
馬馬1本分岐
腕頭動脈のみ
- 走行
- 牛と同様に腕頭動脈1本。腕頭動脈から最初に左鎖骨下動脈が独立して分岐し、その後に両側総頸動脈と右鎖骨下動脈へ分かれます。
豚豚2本分岐
ヒト・犬猫と同じ型
- 走行
- 大動脈弓から腕頭動脈と左鎖骨下動脈の2本が独立して直接分岐します。ヒトや犬・猫と同じパターンです。
牛:直接分岐は1本
腕頭動脈から順に枝分かれ
馬:直接分岐は1本
まず左鎖骨下動脈が独立して出る
豚:直接分岐は2本
ヒト・犬・猫と同じパターン
心骨と奇静脈
牛牛骨と左
心骨あり・左奇静脈
- 心骨
- 大動脈環の周囲に心骨と呼ばれる2個の骨(右が大きく、左が小さい)があります。加齢とともにしっかりした骨組織になり、弁口を強固に支えます。
- 奇静脈
- 左奇静脈が発達し、胸腔左側を通って冠状静脈洞に開口して右心房へ注ぎます(右奇静脈は欠如または痕跡的)。
- 心外膜下脂肪
- 飽和脂肪酸が多く、固く締まった白色〜淡黄色。
馬馬軟骨と右
心軟骨・右奇静脈
- 心骨
- 真の心骨は形成されず、軟骨組織の心軟骨にとどまります。
- 奇静脈
- 右奇静脈のみが存在し、前大静脈(または右心房)に直接開口します(左奇静脈は欠如)。
- 心外膜下脂肪
- 黄色が強く柔らかい。栄養状態が落ちるとゼリー状(膠質変性)になりやすいのが特徴。
豚豚軟骨と左
心軟骨・左奇静脈
- 心骨
- 馬と同じく心軟骨にとどまります。
- 奇静脈
- 左奇静脈が主として発達し、冠状静脈洞へ注ぎます(不完全な右奇静脈が同時に存在することもあります)。
- 心外膜下脂肪
- 白色で非常に柔らかく、脂肪組織が豊富に付着します。
3点セットで唱えるにゃん。分岐は豚だけ2本、心骨は牛だけあり、奇静脈は馬だけ右。ぜんぶ「1種だけ仲間はずれ」の形なので、はずれ役が誰かで覚えるにゃん。
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 大動脈弓からの直接分岐 | 1本(腕頭動脈のみ) | 1本(腕頭動脈のみ) | 2本(腕頭動脈・左鎖骨下動脈) |
| 心骨(Os cordis) | あり(左右2個の明瞭な骨) | なし(心軟骨) | なし(心軟骨) |
| 発達する奇静脈 | 左奇静脈(冠状静脈洞へ) | 右奇静脈(前大静脈へ) | 左奇静脈(冠状静脈洞へ) |
| 心外膜下脂肪 | 白色〜淡黄色・固い | 黄色・柔らかい(膠質化しやすい) | 白色・非常に柔らかい |
表は横スクロールできます →
6生殖器系|雌と雄単胎か多胎か
雌は単胎か多胎かで子宮の形が決まり、雄は線維弾性型か血管型かで勃起のしくみが決まります。この2軸だけで整理できます。
雌|卵巣と子宮
牛牛単胎・上皮絨毛膜胎盤
子宮小丘あり
- 卵巣
- アーモンド型(ソラマメ状)。黄体や胞状卵胞が外表面へ明確に突出するので、直腸検査で触知できます。
- 子宮
- 双角子宮で、子宮角が羊の角のように腹尾側へ強く巻きます。子宮内膜に約70〜120個の無腺性突起子宮小丘があり、胎児側の絨毛葉と結合して胎盤結節をつくります。
馬馬単胎・散在性胎盤
排卵窩あり
- 卵巣
- 腎臓型(豆型)。他種と異なり組織構造が逆転(皮質が内部、髄質が表面)しており、腹側の凹み排卵窩からのみ排卵します。
- 子宮
- 双角子宮ですが、子宮角は巻かずに直線状(T字〜Y字型)に伸びます。子宮小丘はなく、内膜全体で微絨毛が接触する散在性胎盤です。
豚豚多胎・散在性胎盤
頸管枕あり
- 卵巣
- 多数の卵胞・黄体が同時に発達するため、肉眼的にはブドウの房状を呈します。
- 子宮
- 双角子宮ですが、多胎に対応して子宮角が1〜1.5mと極めて長く、小腸のように複雑に屈曲します。子宮頸管には交互にかみ合う突起頸管枕が並びます。
牛:くるんと巻く双角子宮
内膜に子宮小丘が並ぶ
馬:まっすぐなT字型
子宮小丘はなく内膜は平滑
豚:長くてくねくね
多胎を並べて収容する
雄|陰茎と副性腺
牛牛線維弾性型
S状曲あり
- 陰茎
- 結合組織が豊富な線維弾性型で、非勃起時も硬さを保ちます。S状曲をもち、勃起時はこの屈曲が伸びることで長さが伸長します。
- 副性腺
- 精嚢腺・前立腺・尿道球腺がバランスよく発達します。
馬馬血管型
S状曲なし
- 陰茎
- 海綿体と平滑筋が豊富な血管型。S状曲をもたず、勃起時は海綿体への充血で直径・長さともに著しく増大します。亀頭部が傘状(冠状陥凹)に大きく膨らむのも特徴です。
- 副性腺
- 内腔をもつ大きな嚢状の精嚢腺を備えます。
豚豚線維弾性型
螺旋状の亀頭
- 陰茎
- 線維弾性型で、牛と同様にS状曲をもちます。最大の特徴は先端(亀頭)がコルク栓抜き状(螺旋状)にねじれている点で、雌の頸管枕とかみ合って固定されます。
- 副性腺
- 精嚢腺と尿道球腺が非常に巨大。射精量が極めて多く(200〜500mL)、後半にはゼリー状の膠質物質を多量に分泌します。
雌雄はセットで覚えると早いにゃん。豚の頸管枕と螺旋状の亀頭はかみ合う相手同士、牛と豚のS状曲は「伸びて長くなる」タイプ、馬だけが膨らんで太くなる血管型にゃん。
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 卵巣の形態 | アーモンド型 | 腎臓型(排卵窩) | ブドウの房状 |
| 子宮角の形態 | 強く巻く(羊角状) | 直線状(T・Y字型) | 極めて長い(小腸状の屈曲) |
| 子宮の固有構造 | 子宮小丘あり | 小丘なし(平滑) | 頸管枕あり |
| 陰茎の構造型 | 線維弾性型 | 血管型 | 線維弾性型 |
| 陰茎S状曲 | あり | なし | あり |
| 亀頭の形態 | 先細りの円錐形 | 傘状(冠状溝が膨大) | コルク栓抜き状 |
| 副性腺の特徴 | バランスよく発達 | 嚢状の精嚢腺 | 精嚢腺・尿道球腺が巨大 |
表は横スクロールできます →
7神経・感覚器脳・目・鼻
3種とも大脳皮質に溝がある有溝脳ですが、どの領域が発達しているかが違います。目と鼻は、暮らし方がそのまま形に出ます。
脳|どこが発達しているか
牛牛体性感覚野が広い
脳溝が複雑
- 脳
- 大脳皮質全体に緻密で複雑な脳溝と脳回が発達します。体性感覚野が広く、咀嚼や反芻に関わる感覚刺激の処理領域が大きいのが特徴です。
馬馬小脳が大きい
運動制御と平衡感覚
- 脳
- 脳溝の折り込みは非常に複雑で、とくに運動野や視覚・聴覚の関連領域が発達します。小脳も大きく、高速走行と繊細な運動調整を支えます。
豚豚鼻で生きる
嗅球が巨大
- 脳
- 牛や馬に比べて大脳の脳溝はやや浅く直線的です。最大の特徴は嗅球が非常に巨大な点で、土中の餌を探し当てる嗅覚ネットワークが脳前部に発達しています。
目|瞳孔・黒体・輝板
牛:輝板あり(青〜緑に光る)
馬:輝板あり(黄〜緑に光る)
豚:輝板なし(暗所での視力は劣る)
黒体Granula iridica / Corpora nigraは虹彩上縁の黒い絨毛状突起で、強い日ざしをさえぎる「日よけ」です。輝板(タペタム)は脈絡膜にあり、わずかな光を増幅して網膜へ反射します。牛・馬にはありますが、豚は輝板を完全に欠きます。
鼻|犁鼻器と吻骨
牛牛フレーメンは行う
切歯パッドで触る
- 特徴
- 犁鼻器が存在しフレーメン反応も行いますが、上顎に前歯がない(切歯パッド)ため、馬とは上唇のめくり上げ方が少し異なります。
馬馬犁鼻器が発達
フレーメン反応
- 特徴
- 犁鼻器(ヤコブソン器官)が非常に発達し、フェロモンを受容した際に上唇を高くめくり上げるフレーメン反応が最も明確に観察できます。
豚豚鼻先に骨がある
吻骨
- 特徴
- 鼻先に吻骨という固有の骨があり、強固な吻筋とともに地面を掘り返す(掘土行動)ための特殊な構造をもちます。
| 比較項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|
| 脳溝の複雑さ | 非常に複雑・緻密 | 複雑(小脳・運動野が発達) | 相対的に単純(浅い) |
| 嗅球 | 中程度 | 中程度 | 極めて巨大 |
| 瞳孔の形状 | 横長の楕円形 | 横長の長方形(広視野) | ほぼ円形 |
| 黒体 | あり(中程度) | あり(顕著) | なし |
| 輝板(タペタム) | あり(青〜緑色) | あり(黄〜緑色) | なし |
| 固有の構造 | 切歯パッドによる触覚 | 顕著なフレーメン構造 | 吻骨(Os rostri) |
表は横スクロールできます →
86系統の総まとめ表直前チェック用
ここまでの内容を1枚に圧縮しました。試験前はこの表だけを見返せば十分です。
| 系統 | 評価項目 | 牛(Bovine) | 馬(Equine) | 豚(Porcine) |
|---|---|---|---|---|
| 消化器系 | 胃の形態 | 複胃(4室・前胃発酵) | 単胃(マルゴ・プリカトゥス) | 単胃(胃憩室あり) |
| 主発酵部位 | 第1胃(ルーメン) | 盲腸・大結腸(後腸発酵) | なし(主に小腸消化) | |
| 歯・歯式 | 上顎切歯欠如(切歯パッド)・32本 | 高冠歯・歯隙あり(40〜42本) | 完全歯式(44本)・犬歯が牙化 | |
| 運動器系 | 体重軸・主趾 | 偶蹄(第3・4趾の2本軸) | 奇蹄(第3趾の1本軸・単蹄) | 偶蹄(第3・4趾が主趾) |
| 痕跡構造 | 第2・5趾(副趾) | 第2・4中骨(副骨) | 第2・5趾(接地可能) | |
| 実質器官 | 腎臓 | 有溝多腎葉(腎盂なし) | 平滑単腎葉(右:心臓型/左:豆型・混濁尿) | 平滑多腎葉(扁平な豆型・腎杯+腎盂) |
| 肝臓・胆嚢 | 分葉不鮮明・胆嚢あり | 分葉明瞭・胆嚢なし | 小葉間結合組織が発達・胆嚢あり | |
| 脾臓 | 靴べら状(帯状) | 鎌状(くさび形) | 細長い長帯状 | |
| 肺 | 気管気管支あり | 気管気管支なし | 気管気管支あり | |
| 循環器系 | 大動脈弓分岐 | 1本(腕頭動脈) | 1本(腕頭動脈) | 2本(腕頭動脈・左鎖骨下動脈) |
| 心骨/奇静脈 | 心骨あり(2個)/左奇静脈 | 心軟骨/右奇静脈 | 心軟骨/左奇静脈 | |
| 生殖器系 | 雌(卵巣/子宮) | アーモンド型/羊角状(子宮小丘) | 腎臓型(排卵窩)/T・Y字状 | ブドウ房状/長大屈曲(頸管枕) |
| 雄(陰茎/副性腺) | 線維弾性型・S状曲あり | 血管型・S状曲なし(傘状亀頭) | 線維弾性型・S状曲あり(螺旋状亀頭・巨大副性腺) | |
| 神経・感覚器 | 脳の形態 | 脳溝が非常に複雑 | 運動野・小脳が発達 | 嗅球が極めて巨大 |
| 眼(瞳孔/構造) | 横長/黒体あり・輝板あり | 横長/黒体が顕著・輝板あり | 円形/黒体なし・輝板なし | |
| 固有構造 | 切歯パッド | 顕著なフレーメン構造 | 吻骨(Os rostri) |
表は横スクロールできます →
草食(前腸発酵・後腸発酵)か雑食かという生態的な適応が、胃から目の奥まで一貫して体の形に反映されているのがよく分かるにゃん。バラバラの暗記項目に見えて、実は1本の線でつながっているにゃん。
牛・馬・豚の比較解剖のミニテスト(10問)
0 / 10 問正解選ぶとすぐに正解と解説が出ます。まちがえた項目だけ、上の表に戻って確認してください。
Q1.4室からなる複胃をもち、第4胃だけが消化腺をもつ「真の胃」なのはどれ?
正解:牛 第1胃ルーメン・第2胃ハチノス・第3胃センマイは前胃(無腺胃)で微生物発酵の場。第4胃ギアラだけが腺胃です。
Q2.胃の腺部と無腺部の境界に「マルゴ・プリカトゥス」があるのはどれ?
正解:馬 馬は単胃で、腺胃と無腺胃がマルゴ・プリカトゥスという境界線ではっきり分かれます。発酵は盲腸・大結腸(後腸発酵)で行われます。
Q3.胃の噴門部に憩室をもち、結腸が円錐状に巻くのはどれ?
正解:豚 胃憩室と円錐結腸は豚の特徴です。雑食のため、大腸の消化能は馬ほど高くありません。
Q4.上顎の切歯と犬歯を欠き、切歯パッドをもつのはどれ?
正解:牛 永久歯歯式は2×(I 0/3・C 0/1・P 3/3・M 3/3)=32本。下顎切歯と切歯パッドで草を挟んで引きちぎります。
Q5.馬の「副骨(splint bones)」は、何が痕跡として残ったもの?
正解:第2・第4中手骨(中足骨) 馬は第3趾だけの単蹄で、第2・第4中骨が副骨として中骨の外側に張り付いています。牛の副趾(第2・第5趾)と混同しないように。
Q6.腎盂を欠き、腎杯から直接尿管へ尿が注ぐのはどれ?
正解:牛 牛は外表面に18〜20個の溝をもつ有溝多腎葉腎で、腎盂がありません。豚は腎杯と腎盂の両方をもつ中間型です。
Q7.胆嚢を完全に欠き、胆汁が持続的に十二指腸へ分泌されるのはどれ?
正解:馬 馬は胆嚢がなく、肝管から直接・持続的に胆汁が出ます。気管気管支をもたないのも馬だけです。
Q8.大動脈弓から腕頭動脈と左鎖骨下動脈の2本が直接分岐するのはどれ?
正解:豚 ヒトや犬・猫と同じ2本分岐型です。牛と馬は腕頭動脈1本のみ。ちなみに心骨をもつのは牛だけ、右奇静脈のみなのは馬だけです。
Q9.豚の子宮頸管にあり、雄の螺旋状の亀頭とかみ合う構造はどれ?
正解:頸管枕(Pulvini cervicales) 子宮小丘は牛、排卵窩は馬の卵巣の構造です。豚の陰茎はコルク栓抜き状にねじれ、頸管枕とかみ合って固定されます。
Q10.輝板(タペタム)を完全に欠き、瞳孔がほぼ円形なのはどれ?
正解:豚 豚は輝板も黒体もなく、暗所での視力は牛・馬に大きく劣ります。かわりに嗅球が極めて巨大で、鼻で世界を把握しています。
+理解度チェック手を動かして定着させる
表で覚えた内容を、実際に使って確かめましょう。
+詳細な解説ほかの種とくらべる
同じ切り口で、身近な小動物3種も整理しています。
牛・馬・豚 くらべる解剖学|掲載の図はすべて位置関係を示す模式図です。実際の標本とは細部が異なります。
ミニテストの結果はこのページ内だけで保持され、保存されません。
比較解剖学を推理で覚える!
この動物種は何か?