流れでたどる|スクロールするたび、流れが一段ずつ動き出す。
草を、エネルギーに変える工場
牛の第一胃の発酵を流れでたどる
読み進めると、左の図が1段ずつ描き足されます。各段の終わりの問いの答えが、次の段です。図のブロックを押すと、その段へ移動します。
1
出発点:草を食べる
牛は、人や犬が消化できないセルロースの多い草を食べます。
自分では分解できない草を、どう使う?
2
反芻と唾液
飲みこんだ草を口に戻してかみ直し(反芻)、大量の唾液と混ぜて第一胃に送ります。
なぜ唾液がこんなに多い?
唾液の重炭酸が、発酵でできる酸を中和して、第一胃のpHを保つからです。
第一胃の中で、誰が草を分解する?
3
微生物が発酵する
第一胃にすむ細菌・原虫・真菌が、セルロースを発酵して分解します。
なぜ微生物に任せる?
牛自身は、セルロースを分解する酵素をもっていないからです。
発酵で、何ができる?
4
揮発性脂肪酸ができる
発酵で酢酸・プロピオン酸・酪酸(揮発性脂肪酸)ができます。
牛の主なエネルギー源は?
糖ではなく、この揮発性脂肪酸です。
揮発性脂肪酸は、どこから吸収される?
5
第一胃の壁から吸収する
揮発性脂肪酸は、第一胃の壁の乳頭から吸収されます。プロピオン酸は肝臓でブドウ糖に、酢酸は乳脂肪の材料になります。
なぜ乳頭がある?
表面積を広げて、たくさん吸収するためです。
発酵で、ほかに何が出る?
6
ガスはげっぷで出す
発酵でメタンと二酸化炭素が大量に出て、げっぷ(曖気)で外に出します。
げっぷが出せないと?
第一胃にガスがたまってふくらみ(鼓脹症)、肺や心臓を圧迫します。
増えた微生物そのものは、どうなる?
7
微生物がタンパク質になる
増えた微生物は第三胃・第四胃を経て小腸へ流れ、牛のタンパク質源として消化されます。尿素などの窒素も、微生物がタンパク質に変えます。
第四胃の役割は?
胃酸と消化酵素を出す、犬や人の胃にあたる部分です。
穀物を急にたくさん食べると?
8
第一胃アシドーシス
穀物を急に多く与えると、発酵が速すぎて乳酸がたまり、pHが下がります。微生物の種類が変わり、食欲不振、下痢、脱水、蹄葉炎などが起こります。
なぜ急に変えてはいけない?
微生物が新しい餌に慣れるまで、時間がかかるからです。
ほかに、流れが崩れる病気は?
9
鼓脹症とケトーシス
- 鼓脹症(泡沫性):マメ科の牧草などで、ガスが泡に閉じこめられ、げっぷで出せない
- 鼓脹症(遊離ガス):食道の通過障害などで、ガスが出せない
- ケトーシス:分娩後にエネルギーが足りず、プロピオン酸からつくる糖が不足して、ケトン体が増える
予測してみよう:濃厚飼料を急に増やした牛で、第一胃液のpHは上がる? 下がる?
答えを見る
下がります。発酵が速すぎて乳酸がたまり、唾液の重炭酸では中和しきれなくなるからです。
流れの全体:草を食べる → 反芻と唾液 → 微生物が発酵 → 揮発性脂肪酸 → 第一胃の乳頭から吸収 → 肝臓で糖・乳腺で乳脂肪に/ガスはげっぷ・微生物は小腸でタンパク質源
流れでたどる シリーズ(シリーズの一覧へ)
- RAAS(血圧)
- 血液凝固
- 甲状腺ホルモン
- 尿ができるまで
- カルシウムの調節
- ビリルビンと黄疸
- 狂犬病ウイルスの旅
- 血糖の調節
- 副腎皮質の軸
- 性周期と排卵
- 分娩の始まり
- 刺激伝導系と心電図
- 酸素が細胞に届くまで
- 牛の第一胃の発酵
- I型アレルギー
- 痛みと鎮痛薬
- 発熱のしくみ
- ショックの悪循環
- 神経の興奮
- 筋肉が縮むしくみ
- 抗体ができるまで
- 傷が治るまで
- 骨折が治るまで
- 脂肪の消化と胆汁
- 血液型と輸血
- 薬が代謝されるまで
- 酸塩基の調節
- むくみのしくみ
- 嘔吐のしくみ
- 視覚が伝わるしくみ
薬は作用のしくみまでを扱い、用量は扱っていません。
執筆・編集:Vet Study Library 編集部 監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)