尿石症・尿道閉塞|【獣医師国家試験対策】

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尿石症は、尿路のいずれかの部位に結石が形成される疾患です。国家試験では結石の成分ごとの違いが問われます。とくに重要なのが次の3点です。

形成される尿pHX線で写るかどうか、そして内科的に溶解できるかどうか。この3つが結石ごとに異なり、そのまま診断法と治療方針を決めます。なかでも「ストルバイトは溶ける、シュウ酸カルシウムは溶けない」という違いは、治療の選択を根本から分けるため必ず押さえてください。

過去問分析

「尿石症(または尿路結石、尿中の結晶)」は第73〜77回の試験問題を分析したところ、主なテーマとした設問、あるいは診断や治療における重要な正解選択肢として扱われている設問は、合計で10問出題されています。
主に犬と牛における病態、結石の種類(成分)とX線透過性、治療法に関する知識が問われています。

1. 疾患の知識・病態を問う問題(5問)
第73回 学説B:牛の尿石症に関する記述(原因としての尿のアルカリ化、リン酸マグネシウム塩、外科的処置など)の正誤を問う問題。
第74回 学説B:牛のビタミンA欠乏に関連して発生しやすい疾患を選択する問題。正解の組み合わせのひとつとして「尿石症」が含まれています。
第76回 学説B:犬の尿石症に関する知識問題で、ストルバイト結石と尿路感染の関連や、シュウ酸カルシウム結石の溶解可能性、ダルメシアンの好発結石(尿酸塩)などが問われています。
第76回 実地D:尿沈渣中の結晶(尿酸塩など)が認められた場合、その背景として最も疑われる疾患(門脈体循環シャントなど)を選択させる問題。
第77回 学説B:各種尿路結石の中で「X線透過性が最も高い(写りにくい)」もの(シスチンや尿酸塩など)を選択させる、非常に重要な知識問題。

2. 症例・実地試験問題(5問)
第73回 実地C:犬の腹部超音波画像において、膀胱内に認められる音響陰影(アコースティック・シャドー)をともなう構造物から、「膀胱結石」を特定させる問題。
第75回 実地D:赤色尿を呈した犬のX線およびエコー画像から、「膀胱結石」と診断し、適切な治療法として「膀胱切開術」を選択させる一連の設問。
第76回 実地D:犬の尿沈渣の鏡検画像から、「尿酸塩」などの結晶成分を特定させる問題。
第76回 実地C:尿道閉塞(結石等が原因)により尿がぽたぽたとしか出ない犬に対し、まず実施すべき処置として「逆行性尿道水圧推進法」を選択させる臨床的な問題。

尿石症は泌尿器疾患の最頻出事項として挙げられています。合格のためには以下のポイントをセットで整理しておくことが重要です。
成分とpH:ストルバイト(アルカリ尿で形成、溶解可能)、シュウ酸カルシウム(酸性〜中性尿、溶解不可)、尿酸塩(門脈シャントやダルメシアンに関連)。
画像診断:X線に写りやすいもの(シュウ酸Ca、ストルバイト、シリカ)と写りにくいもの(シスチン、尿酸塩)の区別。
大動物の特性:肥育牛におけるビタミンA欠乏や、高濃厚飼料給与によるリン酸マグネシウム結石の発生。


このように、単なる疾患名だけでなく、「画像(X線・エコー)の読影」から「具体的な内科・外科治療」まで、臨床現場に即した知識が多角的に問われています。

この記事で押さえること
  • ストルバイトはアルカリ尿、シュウ酸カルシウムは酸性尿で形成される
  • ストルバイトのみ溶解可能で、シュウ酸カルシウムは外科的除去が必要
  • 犬のストルバイトは感染性、猫は無菌性が主体という種差
  • 尿酸塩とシスチンはX線に写らない
  • 若齢犬の尿酸塩結石は門脈体循環シャントを疑うこと
  • 逆行性尿道水圧推進法の目的

1. 結石ができる条件

結石の形成には複数の条件が重なる必要があります。

  • 尿中の成分が過飽和になること:摂取量、代謝異常、尿の濃縮
  • 尿pHが適した範囲にあること:成分ごとに析出しやすいpHが異なる
  • 尿の停滞:排尿間隔が長い、飲水量が少ない
  • 核となる物質:細菌、細胞、異物
  • 結晶化を抑制する因子の不足

この5つのうち尿pHと飲水量は治療で操作できるため、内科的管理と再発予防の中心になります。

2. 主要な結石の比較

結石尿pHX線溶解背景・好発
ストルバイト アルカリ性 写る 可能 犬:ウレアーゼ産生菌による感染性(雌に多い)/猫:無菌性が主体
シュウ酸カルシウム 酸性 写る 不可 ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、シーズーなど。猫では高齢、ヒマラヤン・ペルシャ
尿酸塩
(尿酸アンモニウム)
酸性 写らない 条件つきで可(※アロプリノールを投与する際は、前駆体蓄積によるキサンチン結石の形成を防ぐため、必ずプリン体制限食(u/dなど)との併用が必須) ダルメシアン、イングリッシュブルドッグ。門脈体循環シャント・重度肝疾患
シスチン 酸性 写りにくい 条件つきで可 近位尿細管でのシスチン再吸収障害雄に多い。ダックスフンドなど
X線透過性の覚え方

写らないのは「尿酸塩」と「シスチン」です。ストルバイトとシュウ酸カルシウムは単純X線で描出できます。写らない結石が疑われる場合は超音波検査や二重造影を用います。

3. 結晶の形態

尿沈渣で観察される結晶の形は、結石の成分を推定する手がかりになります。実地試験で図とともに問われる部分です。

尿中に見られる代表的な結晶の形態を比較した模式図 ストルバイト 棺の蓋様 シュウ酸カルシウム 二水和物 — 封筒様 シュウ酸カルシウム 一水和物 — 亜鈴状 シスチン 六角形 尿酸アンモニウム 棘状球

図:尿中結晶の代表的な形態。ストルバイトは棺の蓋に似た構造、シュウ酸カルシウム二水和物は正方形に対角線が入る封筒様、一水和物は亜鈴状、シスチンは六角形、尿酸アンモニウムは棘をもつ球状として観察される。

重要な注意

結晶が見られても結石があるとは限らず、結石があっても結晶が出ないことがあります。また尿を冷蔵したり長時間放置したりすると結晶が析出するため、新鮮尿で評価する必要があります。結晶尿だけで尿石症と診断してはいけません。

4. 各結石の特徴

4-1. ストルバイト

リン酸アンモニウムマグネシウムからなる結石で、アルカリ尿で形成されます。犬と猫で成因が大きく異なる点が重要です。

犬と猫の違い
  • 犬:感染性ストルバイトが主体です。ウレアーゼを産生する細菌(ブドウ球菌、プロテウスなど)が尿素を分解してアンモニアを生じ、尿をアルカリ化すると同時にアンモニウムを供給します。尿路感染が多いに好発します。
  • 猫:無菌性ストルバイトが主体です。猫では細菌性尿路感染そのものが少なく、食事組成と尿pHの上昇が主因となります。

治療は溶解療法が可能です。尿を酸性化し、マグネシウム・リン・蛋白を制限した療法食と飲水促進により、数週間から数か月かけて溶解させます。感染性の場合は抗菌薬の併用が必須で、結石内部に残存した細菌が再発の原因となるため、培養と感受性試験に基づいた投与を継続します。

4-2. シュウ酸カルシウム

酸性尿で形成されます。ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、シーズーなどの小型犬、猫では高齢個体やヒマラヤン・ペルシャに多くみられます。背景に高カルシウム血症が存在することもあります。

最重要のひっかけ

シュウ酸カルシウム結石は内科的に溶解できません。食事療法で溶かそうとしても効果はなく、外科的摘出または非侵襲的な除去が必要です。食事療法は摘出後の再発予防として意味をもちます。食事療法で再発するシュウ酸カルシウムには、尿中へのカルシウム排泄を抑制するサイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド)が有効ですが、脱水・低K血症・高Ca血症のリスクがあるためモニターが必須です。

なお、シュウ酸カルシウム一水和物の亜鈴状結晶が大量に出現した場合は、エチレングリコール中毒を疑う必要があります。急性腎障害を伴う重篤な中毒であり、尿石症とはまったく別の緊急事態です。

4-3. 尿酸塩

尿酸アンモニウム結石は酸性尿で形成されます。原因は2つに大別されます。

  • 犬種素因ダルメシアンが代表的で、尿酸をアラントインへ変換する能力が低いことによります。イングリッシュブルドッグでも知られています。
  • 肝機能の異常門脈体循環シャントや重度の肝疾患では、アンモニアと尿酸の代謝が障害されて結石が形成されます。
診断の入口になる

ダルメシアン以外の若齢犬で尿酸塩結石を認めたら、門脈体循環シャントを疑って肝機能を評価します。結石が先に見つかって基礎疾患に到達する、という経路をとる典型例です。

4-4. シスチン

近位尿細管におけるシスチンの再吸収障害という遺伝性のアミノ酸輸送異常により、尿中シスチン濃度が上昇して形成されます。酸性尿で析出し、結晶は六角形という特徴的な形態を示します。

雄に発症が偏るのが特徴で、犬種によっては去勢により改善することが知られています。

5. 臨床症状

  • 血尿、頻尿、排尿困難、排尿姿勢の反復
  • 排尿時の疼痛、不適切な場所での排尿
  • 膀胱の触診で結石を触知できることがある
緊急事態

尿道閉塞は緊急疾患です。尿道の細いで起こりやすく、雄犬では陰茎骨の後方に嵌頓しやすいという解剖学的な理由があります。

閉塞により腎後性の高窒素血症、高カリウム血症、代謝性アシドーシスが急速に進行し、致死的となります。便秘との鑑別が問題になることもあり、しぶりを主訴とする症例では必ず膀胱を確認してください。

猫では尿管結石の発生が増えており、閉塞側の腎盂が拡張する一方で対側が代償性に変化する像がみられます。

6. 診断

  • 尿検査:pH、結晶、赤血球、細菌の確認。新鮮尿で評価します。
  • 尿培養:感染性ストルバイトの判定に必須です。
  • 腹部X線:ストルバイトとシュウ酸カルシウムは描出できます。
  • 超音波検査:X線に写らない結石も検出でき、尿管結石の評価にも有用です。
  • 造影X線検査:二重造影膀胱造影などにより、透過性結石を描出します。
  • 結石成分分析:摘出したら必ず実施します。成分が判明して初めて再発予防の方針が決まります。

7. 治療

7-1. 溶解療法

溶解できるのはストルバイトです。療法食による尿の酸性化と成分制限、飲水促進を行い、感染性であれば抗菌薬を併用します。

ただし雄では溶解の途中で小さくなった結石が尿道に詰まる危険があるため、閉塞リスクを考慮した判断が必要です。

7-2. 逆行性尿道水圧推進法

尿道閉塞の解除

尿道に嵌頓した結石に対して、尿道カテーテルから生理食塩水を加圧注入し、結石を膀胱へ押し戻す手技です。尿道は細く操作が困難であるのに対し、膀胱内であれば切開により安全に摘出できます。

「尿道で取ろうとせず、まず膀胱へ戻す」という発想が要点です。押し戻したのちに膀胱切開術などで摘出します。

7-3. 外科的治療とそのほかの処置

  • 膀胱切開術:膀胱結石の摘出
  • 尿道造瘻術:閉塞を繰り返す症例に対して尿道の出口を作り直す
  • 尿管結石:尿管ステントや皮下尿管バイパスなどの選択肢があります

7-4. 再発予防

  • 結石成分に応じた療法食:尿pHのコントロールが中心となります
  • 飲水量の増加:ウェットフードの活用、給水場所を増やすなど。尿を薄めることはすべての結石に共通して有効です
  • 定期的な尿検査と画像検査による再発の早期発見

8. 猫の下部尿路疾患のなかでの位置づけ

猫が血尿・頻尿・排尿困難を示す場合、原因としてもっとも多いのは特発性膀胱炎であり、尿石症や尿道栓子がこれに続きます。とくに若齢猫では特発性膀胱炎の割合が高く、高齢になるほど尿石症の比率が上がる傾向があります。

症状だけでは区別できないため、尿検査と画像検査による評価が必須です。

9. 国家試験で狙われるポイントの整理

ひっかけ注意
  1. ストルバイトはアルカリ尿、シュウ酸カルシウムは酸性尿。
  2. ストルバイトは溶解可能、シュウ酸カルシウムは溶解できない。
  3. 犬のストルバイトは感染性(ウレアーゼ産生菌)、猫は無菌性が主体。
  4. 感染性ストルバイトでは抗菌薬の併用が必須。
  5. 尿酸塩とシスチンはX線に写らない。
  6. 若齢犬の尿酸塩結石は門脈体循環シャントを疑う。ダルメシアンは犬種素因。
  7. シスチンは近位尿細管の再吸収障害で、雄に多く、結晶は六角形
  8. ストルバイト結晶は棺の蓋様、シュウ酸カルシウム二水和物は封筒様。
  9. 一水和物の亜鈴状結晶が多数出現したらエチレングリコール中毒を疑う。
  10. 結晶尿と結石は別物。新鮮尿で評価する。
  11. 逆行性尿道水圧推進法は結石を膀胱へ押し戻す手技。
  12. 結石成分分析が再発予防の方針を決める。
  13. 尿道閉塞は雄で起こりやすく、高カリウム血症をきたす緊急疾患。

10. 確認問題

Q1. 犬のストルバイト結石が感染に伴って形成される機序を述べよ。

A. ウレアーゼを産生する細菌が尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を生じるため。アンモニアにより尿がアルカリ化し、同時に結石成分であるアンモニウムが供給されることでリン酸アンモニウムマグネシウムが析出しやすくなる。

Q2. シュウ酸カルシウム結石に対して溶解療法を行わない理由と、代わりに必要な対応を述べよ。

A. シュウ酸カルシウムは内科的に溶解できないため。外科的摘出または非侵襲的な除去が必要であり、食事療法は摘出後の再発予防として実施する。

Q3. 単純X線検査で結石が描出されなかったが尿石症が疑われる。考えられる結石の種類と、次に行うべき検査を述べよ。

A. 尿酸塩またはシスチン結石が考えられる。これらはX線透過性であるため単純撮影では描出されない。超音波検査または二重造影膀胱造影などの造影検査を行う。

Q4. 若齢の雑種犬で尿酸アンモニウム結石が認められた。まず疑うべき基礎疾患と、その理由を述べよ。

A. 門脈体循環シャント。肝におけるアンモニアおよび尿酸の代謝が障害されることで尿酸アンモニウム結石が形成されるため。ダルメシアンなどの犬種素因がない若齢犬では、この可能性を優先して肝機能を評価する。

Q5. 逆行性尿道水圧推進法の目的を述べよ。

A. 尿道に嵌頓した結石を、尿道カテーテルから生理食塩水を加圧注入することで膀胱内へ押し戻すこと。細く操作の困難な尿道内で摘出を試みるのではなく、膀胱へ移動させたうえで膀胱切開術などにより安全に摘出することを目的とする。

関連コンテンツ

参考文献

  • 新獣医内科学 文永堂出版
  • 伴侶動物治療指針 緑書房
  • 犬と猫の治療ガイド インターズー
  • CAP 緑書房
  • SA Medicine インターズー
  • 新編 家畜薬理学 養賢堂
  • 獣医生理学第二版 文永堂出版
  • 動物病理学各論 文永堂出版
  • 農林水産省 獣医師国家試験(公式)

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月15日/最終更新日:2026年8月24日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。