腫瘍は、2つの軸で整理すると迷わないにゃん

ひとつめの軸は「性質」=おとなしいか、暴れん坊か。ふたつめの軸は「発生源」=どの組織から生まれたか。この2軸で場所を決めてから、TNMで進み具合を測る。この順番で考えると、腫瘍の名前はぜんぶ理屈でつながります。

良性 境界くっきり
膨張性発育
悪性 浸潤と転移
境界があやふや
TNM TNM 大きさ・リンパ節
遠隔転移

1分類の2つの軸まず地図をつくる

腫瘍の分類は、性質(良性・悪性)と発生した組織の由来(上皮性・非上皮性など)という2つの軸で整理すると、一気に見通しがよくなります。

腫瘍 軸1:性質でみる おとなしいか、暴れん坊か 軸2:発生源でみる どの組織から生まれたか 良性腫瘍 悪性腫瘍 浸潤・転移をするかどうか 上皮性 癌腫 非上皮性 肉腫 造血器 白血病など 悪性腫瘍はさらにこの3つに分かれる

分類の地図
「危険度」は軸1、「名前」は軸2で決まる

図は横スクロールできます →

読み方はいつも同じにゃん。「良性か悪性か」で危険度を見て、「どこから生まれたか」で癌腫(Carcinoma)か肉腫(Sarcoma)かを区別する。この2ステップが医学的なロジックにゃん。

2軸1:良性と悪性おとなしいか、暴れん坊か

細胞が増殖してできた「こぶ」や「塊」を、挙動のちがいで2つに分けます。見分けるキーワードは浸潤と転移の2つだけです。

周囲の組織 押しのけて大きくなる(膨張性発育) 境界がくっきり・増殖はゆっくり

良性腫瘍:局所にとどまる

血管・リンパ管 根を張って浸潤し、乗って転移する 境界があやふや・増殖が速い

悪性腫瘍:浸潤し、遠くへ転移する

良性腫瘍と悪性腫瘍 / 挙動のちがい
分類専門用語のポイント特徴
良性腫瘍
Benign tumor
局所にとどまる
膨張性発育
増殖スピードが遅く、境界がくっきりしている。周囲の組織に侵入(浸潤)したり、別の臓器へ飛び火(転移)したりしない
悪性腫瘍
Malignant tumor
浸潤(Infiltration)
転移(Metastasis)
増殖スピードが速く、境界があやふや。根を張るように周囲へ染み込むほか、血管やリンパ管に乗って遠くの臓器へ移動する。一般に「がん」と呼ばれるもの

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良性と悪性の分かれ目は「浸潤するか」「転移するか」の2点だけにゃん。大きさやスピードは目安であって決め手ではないにゃん。良性でも大きくなれば周りを圧迫するので、良性=安心とはかぎらないのも大事なポイントにゃん。

3軸2:発生源による分類癌腫・肉腫・造血器

悪性腫瘍(がん)は、さらに体のどの組織から発生したかで名前が変わります。ここを取り違えると、治療の考え方ごと変わってしまいます。

その下の組織 上皮細胞(表面を覆うシート) 皮膚・粘膜・腺組織 胃癌・肺癌・乳癌など

癌腫(Carcinoma)
上皮性の悪性腫瘍。ヒトの悪性腫瘍の約9割

骨 筋肉 脂肪 血管・神経 非上皮性組織(支持組織) 体を支える裏方の組織 骨肉腫・平滑筋肉腫など

肉腫(Sarcoma)
非上皮性の悪性腫瘍。若年層にも見られ比較的稀

血液細胞(白血球・リンパ球) カタマリを作らず全身を巡る 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫

造血器悪性腫瘍
いわゆる「血液のがん」

癌癌腫Carcinoma/カルチノーマ

由来
皮膚や、胃・肺・大腸などの粘膜、腺組織(乳腺や肝臓など)を覆う上皮細胞です。
特徴
ヒトの悪性腫瘍の約9割を占めます。
例
胃癌、肺癌、乳癌など

肉肉腫Sarcoma/サルコーマ

由来
骨、筋肉、脂肪、血管、神経などの非上皮性組織(支持組織)です。
特徴
若年層にも見られ、比較的稀です。
例
骨肉腫、平滑筋肉腫など

血造血器悪性腫瘍血液のがん

由来
白血球やリンパ球などの血液細胞です。
特徴
カタマリ(腫瘍)を作らず全身を巡ることも多いのが、他の2つと大きく違う点です。
例
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など

「覆っているもの」から出たら癌腫、「支えているもの」から出たら肉腫にゃん。血液のがんは塊を作らないので、そもそも別枠にゃん。名前の最後が「〜癌」なら上皮性、「〜肉腫」なら非上皮性と読み取れるにゃん。

4TNM分類進行度を数値化する世界共通ルール

TNM分類は、がんの進行度(病期・ステージ)を客観的に数値化するための評価システムです。T・N・Mの3つを測り、その組み合わせでステージが決まります。

上皮 粘膜下 筋層より深く 基底膜(赤い線)を超えるかどうかが分かれ目 Tis T1 T2〜T3 T4 数字が大きいほど、大きく・深い

T:原発腫瘍
Tis=上皮内癌(基底膜を超えず転移リスクなし)

原発巣 所属リンパ節 N0:転移なし N1〜N3:数が多い・より遠い

N:所属リンパ節転移
色のついた節が転移ありのイメージ

原発巣 肺 肝 骨・脳 M1:遠隔転移あり

M:遠隔転移
M0=なし/M1=あり

TNMの3つの評価軸 / 何を測っているか
要素英語表記・専門用語評価の内容
TPrimary Tumor
(原発腫瘍)
がん自体の大きさ・深さ(浸潤度)
Tis:上皮内癌(Carcinoma in situ/基底膜を超えておらず転移リスクがない状態)
T1〜T4:数字が大きいほど腫瘍が大きく、深く浸潤している
NRegional Lymph Nodes
(所属リンパ節転移)
がんの周辺にあるリンパ節への転移の有無と広がり
N0:リンパ節転移なし
N1〜N3:数字が大きいほど、転移しているリンパ節の数が多い・または遠い場所に及んでいる
MDistant Metastasis
(遠隔転移)
原発巣から離れた別の臓器(肺・肝臓・骨・脳など)への飛び火
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり

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5病期(ステージ)3要素をかけ合わせる

T・N・Mの3要素を組み合わせることで、最終的な病期(ステージ I〜IV)が決まります。覚えるべき決定的なルールは「M1になった時点でステージIV」です。

ステージ I T1〜T2・N0・M0 局所にとどまる早期 ステージ II〜III Tが大きい、またはN1〜N3 局所進行 ステージ IV M1(遠隔転移) =遠くへ飛んだ TやNの状態を問わず、M1となった時点でステージIV =どんなに小さな腫瘍でも、遠隔転移があれば IV T・N・M の組み合わせで病期が決まる

ステージの決まり方
点線のとおり、M1は一足飛びにIVへ

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Iステージ I局所にとどまる早期

T1〜T2、N0、M0。腫瘍が小さく、リンパ節転移も遠隔転移もない状態です。

IIステージ II〜III局所進行

Tが大きくなる、またはN1〜N3(周辺リンパ節への進展がある)状態です。

IVステージ IV遠隔転移あり

TやNの状態を問わず、M1(遠隔転移あり)となった時点でステージIVになります。ここがTNMのいちばん重要なルールです。

cTNM と pTNMいつ・何で判断したか

c臨床的病期(cTNM)clinical

画像診断や身体検査など、治療前の情報で判断した病期です。治療方針を立てるときの土台になります。

p病理学的病期(pTNM)pathological

手術後の病理組織検査で確定する病期です。実際に取り出した組織を顕微鏡で確認するため、より正確な評価になります。

ステージの決め手は「M1かどうか」にゃん。TとNがどれだけ小さくても、遠隔転移がひとつ見つかった瞬間にステージIVにゃん。そしてcは治療前の見立て、pは手術後の答え合わせにゃん。

腫瘍の分類とTNMのミニテスト(10問)

0 / 10 問正解

選ぶとすぐに正解と解説が出ます。まちがえた項目だけ、上の図や表に戻って確認してください。

Q1.良性腫瘍の発育様式として正しいのはどれ?

正解:膨張性発育 増殖はゆっくりで境界がくっきりし、浸潤も転移もしません。ただし大きくなれば周囲を圧迫するため、良性=無害とはかぎりません。

Q2.悪性腫瘍を良性腫瘍と分ける決定的な2つの特徴はどれ?

正解:浸潤と転移 根を張るように周囲へ染み込む(浸潤)ほか、血管やリンパ管に乗って遠くの臓器へ移動します(転移)。

Q3.上皮性の悪性腫瘍の呼び名はどれ?

正解:癌腫 皮膚・粘膜・腺組織を覆う上皮細胞から発生し、ヒトの悪性腫瘍の約9割を占めます。

Q4.骨・筋肉・脂肪・血管・神経などから発生する悪性腫瘍の呼び名はどれ?

正解:肉腫 非上皮性組織(支持組織)由来で、若年層にも見られ比較的稀です。骨肉腫・平滑筋肉腫などが代表例です。

Q5.造血器悪性腫瘍の特徴として正しいのはどれ?

正解:カタマリを作らず全身を巡る 白血球やリンパ球などの血液細胞由来で、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などが含まれます。

Q6.TNM分類の「Tis」が意味するのはどれ?

正解:上皮内癌(carcinoma in situ) 基底膜を超えていないため、転移のリスクがない段階です。T1〜T4は数字が大きいほど大きく、深く浸潤しています。

Q7.「N0」が意味するのはどれ?

正解:所属リンパ節転移なし 遠隔転移がないのはM0です。N1〜N3は、転移したリンパ節の数が多い、またはより遠い場所に及んでいることを示します。

Q8.M1(遠隔転移あり)と判定された場合、ステージはどうなる?

正解:ステージIV どんなに小さな腫瘍でも、遠隔転移が確認された時点でステージIVです。TNM分類でいちばん重要なルールです。

Q9.pTNM(病理学的病期)の説明として正しいのはどれ?

正解:手術後の病理組織検査で確定する病期 画像診断等で治療前に判断するのはcTNM(臨床的病期)です。

Q10.腫瘍を分類するときの考え方として正しいのはどれ?

正解:性質と発生源の2軸で見る 軸1で危険度、軸2で名前が決まります。この順で考えると、腫瘍の名前は理屈でつながります。