応用獣医学 > 獣医事法規 > 動物用医薬品の法規
動物用医薬品の法規は、過去5回すべてで出題されています。中心になる法律は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で、ここに麻薬の取り扱いを定めた麻薬及び向精神薬取締法、飼料を定めた飼料安全法、食品の残留を定めた食品衛生法が関わります。
本記事では、薬が「つくられ → 売られ → 使われ → 食品に残らないようにする」流れに沿って、それぞれの段階の規制を整理しました。
過去の出題では、次の形式が問われています。
- 獣医師の義務:動物用医薬品の副作用の報告
- 使用の規制:未承認医薬品の使用の禁止と、その例外
- 麻薬:麻薬施用者免許の対象、保管の方法
- 残留と飼料:食品の残留基準の対象、飼料の表示事項
- 動物用医薬品は、薬機法の中で農林水産大臣が所管すること
- 要指示医薬品は、獣医師の処方箋か指示がなければ売れないこと
- 食用動物への未承認医薬品の使用の禁止と、使用基準(休薬期間)
- 獣医師の副作用報告が義務であること
- 毒薬・劇薬の表示と、麻薬施用者・麻薬の保管
- 食品のポジティブリスト制度と、飼料安全法
1. 薬機法と動物用医薬品
薬機法は、医薬品などの品質、有効性、安全性を確保し、使用による保健衛生上の危害を防ぐための法律です。人の医薬品は厚生労働大臣が所管しますが、動物用医薬品については、読み替えの規定によって農林水産大臣が承認や許可を行います。
1-1. つくる段階 — 製造販売の承認
動物用医薬品の製造販売には、品目ごとに農林水産大臣の承認が必要です。承認のときには、成分、用法・用量、効能・効果、副作用などが審査され、食用動物に使う薬では休薬期間も承認の内容に含まれます。
2. 売る段階 — 要指示医薬品
副作用が強いもの、病原菌が耐性をもちやすいものなど、獣医師の専門的な判断が必要な医薬品は要指示医薬品に指定されています。ワクチン、抗菌性物質、ホルモン剤などが代表で、容器に「要指示」などと表示されます。
- 獣医師から処方箋の交付または指示を受けた者以外には、販売・授与してはならない(薬機法49条)
- 獣医師は、要指示医薬品を自ら診察しないで処方・投与してはならない(獣医師法18条)
3. 使う段階 — 食用動物への使用の規制
牛、豚、鶏など食用に供される動物に使う医薬品は、畜産物への残留を防ぐため、使い方が法律で規制されています。
3-1. 未承認医薬品の使用の禁止(薬機法83条の3)
容器や被包に定められた事項が記載されていない医薬品、つまり承認を受けていない医薬品を、食用動物に使ってはなりません。ただし、獣医師が診療のために使う場合(一部の物質を除く)など、省令で定める例外があります。
3-2. 使用基準(薬機法83条の4)
抗菌性物質など、とくに残留が問題になる医薬品には使用基準が定められ、使用者はこれを守らなければなりません。
- 使用できる動物
- 用法と用量
- 使用禁止期間(休薬期間):最後に使ってから、と殺・搾乳・採卵などをしてはならない期間
獣医師が診療のため、やむを得ず使用基準と異なる使い方をする場合は、畜産物を出荷してはならない期間(出荷制限期間)を指示書で飼い主に示します。使用者は、医薬品を使った日、動物、薬の名前、用法・用量、出荷できる日などを帳簿に記録するよう努めます。
3-3. 獣医師の副作用報告
獣医師は、動物用医薬品の副作用によると疑われる病気などを知った場合で、保健衛生上の危害の発生や拡大を防ぐために必要と認めるときは、農林水産大臣に報告しなければなりません(義務)。
3-4. 毒薬と劇薬
- 毒薬:黒地に白枠・白字で、品名と「毒」の文字を表示する。ほかの医薬品と区別し、鍵をかけて保管する
- 劇薬:白地に赤枠・赤字で、品名と「劇」の文字を表示する。ほかの医薬品と区別して保管する
4. 麻薬と向精神薬 — 麻薬及び向精神薬取締法
動物の診療でも、ケタミン、フェンタニル、モルヒネなどの麻薬が使われます。
- 麻薬施用者:麻薬を施用・処方できるのは、都道府県知事から麻薬施用者の免許を受けた医師・歯科医師・獣医師。愛玩動物看護師は免許を受けられない
- 麻薬管理者:麻薬施用者が2人以上いる診療施設では、麻薬を管理する麻薬管理者の免許が必要
- 保管:麻薬は、ほかの医薬品と区別して、鍵をかけた堅固な設備の中に保管する
- 記録と届出:帳簿に受け払いを記録し、紛失や盗難などの事故があったときは届け出る
ベンゾジアゼピン系の鎮静薬やブプレノルフィンなどは向精神薬に指定され、保管や記録が定められています。
5. 食品に残さない — 残留基準と飼料
5-1. 食品衛生法のポジティブリスト制度
食品に残る農薬、飼料添加物、動物用医薬品には、食品衛生法で残留基準が定められています。基準が定められていない物質は、一律の基準(ごく低い濃度)を超えて残る食品の販売が禁止されます(ポジティブリスト制度)。飼料添加物も対象に含まれる点が問われます(食品衛生の法規と制度の解説)。
5-2. 飼料安全法
飼料安全法(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)は、農林水産省が所管し、飼料と飼料添加物の基準・規格、製造や使用の規制、表示を定めています。飼料には製造年月日などの表示が求められます。牛海綿状脳症(BSE)の対策として、牛などの反芻動物に動物性たん白質を与えることの規制もこの法律に基づいています。
6. 動物用医薬品の法規で国家試験に狙われるポイント
- 所管:動物用医薬品は農林水産大臣(薬機法の読み替え)
- 要指示医薬品:ワクチン・抗菌性物質・ホルモン剤など。獣医師の処方箋か指示がなければ販売不可。獣医師は診察しないで処方できない
- 未承認医薬品:食用動物への使用は禁止。獣医師の診療など省令の例外あり
- 使用基準:使用できる動物、用法・用量、使用禁止期間(休薬期間)
- 副作用報告:獣医師の義務(農林水産大臣へ)
- 毒薬:黒地に白枠・白字、鍵をかけて保管。劇薬:白地に赤枠・赤字
- 麻薬施用者:医師・歯科医師・獣医師(都道府県知事の免許)。愛玩動物看護師は不可。鍵をかけた堅固な設備で保管
- ポジティブリスト制度:農薬・飼料添加物・動物用医薬品が対象
- 飼料安全法:農林水産省。反芻動物への動物性たん白質の規制
7. 動物用医薬品の法規の確認問題
Q1. 要指示医薬品とはどのような医薬品か。販売についての規制とあわせて述べよ。
A. 副作用が強い、病原菌が耐性をもちやすいなど、獣医師の専門的な判断が必要な医薬品で、ワクチン、抗菌性物質、ホルモン剤などが指定されている。獣医師から処方箋の交付または指示を受けた者以外には販売・授与してはならない。
Q2. 食用動物に対する未承認医薬品の使用について、薬機法の規定を述べよ。
A. 承認を受けていない医薬品を食用動物に使用することは禁止されている。ただし、獣医師が診療のために使う場合など、省令で定める例外がある。
Q3. 使用基準に定められている「使用禁止期間(休薬期間)」とは何か。
A. 医薬品を最後に使ってから、その動物のと殺や、乳・卵などの出荷をしてはならない期間。畜産物に医薬品が残留するのを防ぐために定められている。
Q4. 動物病院で麻薬を扱うときの規定を、施用できる者と保管の方法から述べよ。
A. 麻薬を施用・処方できるのは、都道府県知事から麻薬施用者の免許を受けた獣医師などで、愛玩動物看護師は免許を受けられない。麻薬はほかの医薬品と区別し、鍵をかけた堅固な設備の中に保管する。
Q5. 食品衛生法のポジティブリスト制度で、残留が規制される物質の種類を3つ挙げよ。
A. 農薬、飼料添加物、動物用医薬品。基準が定められていない物質は、一律の基準を超えて残留する食品の販売が禁止される。
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理解度チェック
- 問題集:必須(法規) — 必須問題の形式で、法規の知識を確認できます。
詳細な解説
- 分野別まとめ:獣医事法規 — 法律を「誰を、何のために規制するか」で整理し、所管と事例問題をまとめています。
- 食品衛生の法規と制度 — 残留基準とポジティブリスト制度を、食品衛生の側から扱います。
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