受容体は鍵穴、薬は鍵にゃん

薬が受容体に結合したあと、どんなシグナルが細胞内を走るかという仕組みが作用機序(MOA)だにゃ。鍵を回すか塞ぐかから、受容体の4タイプ、オピオイド、NSAIDsまで一気につなげて整理するにゃん!

アゴニスト 鍵を回す
作用を起こす
アンタゴニスト ふさぐだけ
作用は起きない
用量反応 完全作動と
部分作動(天井効果)

1鍵と鍵穴の関係アゴニストとアンタゴニスト

薬と受容体の関係は、大きく2パターンに分かれるにゃん!

薬 受容体 細胞内へシグナル伝達 生理作用が起こる 鍵を回す

アゴニスト(作動薬)
結合して構造を変え、シグナルを出させる

薬 本来の 生体内物質 シグナルは発生しない アゴニストの結合をブロック ふさぐだけ

アンタゴニスト(拮抗薬/遮断薬)
鍵穴にはハマるが、鍵は回らない

作アゴニスト作動薬

受容体に結合して鍵を回すお薬だにゃん。構造を変えて細胞内へシグナルを伝達し、生理作用を引き起こすにゃ。

遮アンタゴニスト拮抗薬・遮断薬

鍵穴にハマるけれど鍵は回らない(ふさぐだけ)お薬だにゃん。シグナルは発生させず、本来の生体内物質(アゴニスト)がくっつくのを邪魔するにゃ!

2受容体の4タイプ構造とスピードで分ける

薬がターゲットにする受容体は、細胞膜上での構造とシグナル伝達の速さによって4つに分類されるにゃん!

GPCR Gタンパク cAMPなど 二次伝達物質 秒〜分 イオンチャネル内蔵型 Cl⁻・Na⁺が通る 膜電位が変わる ミリ秒 酵素結合型 キナーゼ リン酸化 細胞内へ連鎖 分〜時間 核内受容体 転写を制御 核(DNA) 時間〜日 左から右へ、効くまでの時間が長くなる

4つの受容体タイプ
膜の近くで完結するほど速く、核まで届くほど遅い

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受容体の4分類 / 仕組み・速さ・犬猫での代表例
受容体分類シグナル伝達の仕組み応答速度犬猫での代表例
Gタンパク質共役受容体
(GPCR)
Gタンパク質を介して二次伝達物質(cAMP等)を増減させる秒〜分α₂アドレナリン受容体(メデトミジン)、オピオイド受容体(ブプレノルフィン)
イオンチャネル内蔵型受容体結合によりチャネルが開き、イオン(Cl⁻・Na⁺など)を通過させるミリ秒GABAA受容体(ジアゼパム)、ニコチン性アセチルコリン受容体
酵素結合型受容体結合により細胞内ドメインのキナーゼが活性化(リン酸化)する分〜時間インスリン受容体、チロシンキナーゼ受容体(マシチニブ等の分子標的薬)
核内受容体細胞膜を透過して結合し、DNAの転写(遺伝子発現)を直接制御する時間〜日糖質コルチコイド受容体(プレドニゾロン)

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効き目のスピードは「経由するステップ数」で決まるにゃん!
イオンを通すだけのチャネルは「ミリ秒」で超最速!対して、核内受容体はDNAを読ませてタンパク質を作らせるから「時間〜日」かかるにゃん。ステロイド(プレドニゾロン)を打っても即効性がない理由はここにあるんだにゃ!

3犬猫の臨床で重要な受容体作用機序と種差

同じ受容体でも、動物種によって「密度」や「感受性」が違うところが臨床の肝だにゃん!

ジアゼパム 結合 Cl⁻ 細胞内が負に(過分極) 異常な脱分極=痙攣が抑えられる

GABAA受容体
Cl⁻チャネルの開口頻度を高める

ノルアドレナリン神経の終末 Gi → ブレーキ α₂ メデトミジン 放出↓ シナプス間隙 受け手の神経 ノルアドレナリンが減る → 鎮静 本来はNA自身が踏むブレーキ(自己受容体)

α₂アドレナリン受容体
放出にブレーキをかけて鎮静する

糸球体 輸入 輸出細動脈 収縮を解除 糸球体内圧が下がる 蛋白尿・高血圧の改善へ

AT₁受容体
猫の慢性腎臓病(CKD)で使う

GGABAA受容体抗痙攣・静穏作用

ジアゼパムなどが結合するとCl⁻チャネルの開口頻度が高まり、細胞内が負(過分極)になるにゃん。これにより中枢神経の異常な脱分極(痙攣発作)をバシッと抑えるにゃ!

α₂α₂アドレナリン受容体鎮静・催吐作用

メデトミジンがシナプス前膜のα₂受容体を刺激し、ノルアドレナリンの放出を抑えて鎮静をかけるにゃん。

猫の種差:猫は延髄の嘔吐中枢にあるα₂受容体の密度・感受性が高いため、少量のα₂作動薬でも強い催吐反応を引き起こすんだにゃ!

AT₁AT₁受容体腎保護・降圧作用

テルミサルタンがアンジオテンシンII 1型(AT₁)受容体をシャットアウト。輸出細動脈の収縮を解除して糸球体内圧を下げ、猫の慢性腎臓病(CKD)における蛋白尿や高血圧を改善するにゃん。

種差は根性論ではなく受容体の数の問題だにゃん!
猫がα₂作動薬で吐きやすいのは「デリケートだから」ではなく、嘔吐中枢のα₂受容体が多いからにゃん。受容体の数と感受性で理解しておくと応用が効くにゃ!

4オピオイド受容体μとκ、そして固有活性

オピオイド受容体(GPCR)が刺激されると、細胞内で「cAMP低下(Ca²⁺チャネル閉鎖で伝達物質ストップ)」と「K⁺流出(過分極で受け手の興奮性ダウン)」が同時に起こり、痛みの伝達をダブルでブロックするにゃん!

シナプス前終末 AC cAMP ↓ 1 Ca²⁺チャネル閉鎖 サブスタンスP・グルタミン酸の放出を抑制 2 シナプス後膜 K⁺流出 → 過分極 膜の興奮性が下がる 3 ①はGαi、③はGβγサブユニットの働き

オピオイドの3つの動き
①cAMPを下げる ②伝達物質を出させない ③受け手を興奮しにくくする

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μμ(ミュー)受容体強力だが副作用も大きい

強力な鎮痛・鎮静をもたらす反面、呼吸抑制・徐脈・便秘(消化管運動抑制)のリスクも大きいにゃん。

κκ(カッパ)受容体安全域が広い

主に脊髄レベルでの鎮痛(内臓痛に有効)や鎮静をもたらすにゃ。μに比べて呼吸抑制や消化管抑制が少なく、安全域が広いにゃん。

固有活性(Intrinsic Activity)と作動様式

最大応答(%) 100 0 用量(対数) 完全作動薬(α=1) 部分作動薬(0<α<1) 天井効果でここが限界 拮抗薬(α=0) 差

用量反応曲線
部分作動薬は用量を上げても、ある高さより上には行かない

オピオイドの作動様式 / 固有活性と代表薬
作動様式固有活性(α)代表薬臨床メカニズムと特徴
完全作動薬
Full agonist
α=1フェンタニル、モルヒネ、メサドン用量依存性に100%の最大応答を引き出すにゃん!
部分作動薬
Partial agonist
0<α<1ブプレノルフィンμ受容体に強くくっつく(高親和性)が、最大応答に限界がある(天井効果)。高用量でも呼吸抑制が少ない反面、フルアゴニストの邪魔(受容体を占有)をして効果を弱めてしまうにゃん。
アゴニスト・
アンタゴニスト
サブタイプ依存ブトルファノールκ受容体フルアゴニスト / μ受容体アンタゴニスト(弱部分作動)。κ作動で内臓痛を抑えつつ、μをブロックしてフルアゴニストによる過度の呼吸抑制を逆転(リバース)させる際にも使えるにゃん。

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部分作動薬(ブプレノルフィン)の二面性に注意だにゃん!
「天井効果があって安全」だけど、高親和性で受容体にしっかり居座るから、あとからフルアゴニスト(フェンタニル等)を足しても効きにくくなっちゃうにゃ。鎮痛プランを立てるときの超重要ポイントだにゃん!

5NSAIDsとCOX選択性同じ酵素でも役割が違う

NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジン(PG)の産生を抑えるにゃん。ポイントはCOX-1とCOX-2で仕事内容がまったく違うことだにゃ!

細胞膜リン脂質 ホスホリパーゼA₂ アラキドン酸 COX-1(構成型) いつも一定量つくられている 生体の恒常性を守るPG 胃粘膜の保護・血小板のTXA₂ 腎血流の維持 COX-2(誘導型) 炎症のときに一気に増える 炎症性のPG 痛み・発熱・腫脹をつくる ※腎臓では構成的にも発現 COX-1は「守り」、COX-2は「炎症」。ただし腎臓ではCOX-2も守りに回っている

アラキドン酸カスケード
同じ材料から、役割の違う2つのPGができる

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非選択的NSAIDs COX-1 COX-2 守りも止まる 炎症は止まる 胃粘膜が荒れる・血小板が働きにくい 胃潰瘍・出血傾向のリスク

非選択的:効くが、守りも削ってしまう

COX-2選択的阻害薬 COX-1 COX-2 守りは残る 炎症は止まる 消化器の副作用は少ないが 脱水・低血圧時はAKIのリスク

COX-2選択的:胃にはやさしい。ただし腎臓は別問題

1COX-1構成型・守りのPG

全身の細胞で常に働いているにゃ。胃粘膜の保護、血小板のトロンボキサンA₂(TXA₂)産生、腎血流の維持など、体を守る恒常性維持のPGをつくるにゃん。ここを止めると胃潰瘍や出血傾向が出やすくなるにゃ。

ここを止めると、胃潰瘍や出血傾向が起こりやすくなります。

2COX-2誘導型・炎症のPG

普段は少ないが、炎症の刺激で一気に急増!痛み・発熱・腫脹を引き起こす炎症性PGをつくるので、NSAIDsの本来の狙いどころだにゃん。

!腎臓のCOX-2だけは別格だにゃん!

COX-2選択的阻害薬(マロピタント……ではなくメロキシカムやロベナコキシブなど)は胃にはやさしいにゃん。でも腎臓ではCOX-2も常時働いて腎血流を守っているんだにゃ!
だから脱水や低血圧の子に使うと、いくらCOX-2選択的でも急性腎障害(AKI)を起こすリスクがあるにゃん。「投与前の脱水補正」が絶対条件だにゃ!

「COX-1は守り、COX-2は炎症」が基本にゃん。でも腎臓だけはCOX-2も守りに回っているから、脱水している子にCOX-2選択薬を使っても腎臓は守られないにゃん。投与前の脱水補正が大事な理由がここにあるにゃん。

薬理学の受容体のミニテスト(10問)

0 / 10 問正解

選ぶとすぐに正解と解説が出ます。まちがえた項目だけ、上の図や表に戻って確認してください。

Q1.アンタゴニスト(拮抗薬)の説明として正しいのはどれ?

正解:結合するがシグナルを出さない 鍵穴にハマるものの鍵が回らない状態です。作用を起こすのはアゴニスト(作動薬)です。

Q2.4つの受容体タイプのうち、応答速度がミリ秒と最も速いのはどれ?

正解:イオンチャネル内蔵型 チャネルが開くだけなのでミリ秒で応答します。GPCRは秒〜分、酵素結合型は分〜時間、核内受容体は時間〜日です。

Q3.プレドニゾロンが作用する受容体と、その応答速度の組み合わせはどれ?

正解:核内受容体/時間〜日 細胞膜を透過して結合し、DNAの転写を直接制御します。ステロイドの効果発現に時間がかかるのはこのためです。

Q4.ジアゼパムの作用機序として正しいのはどれ?

正解:Cl⁻チャネルの開口頻度を高める 細胞内が負の電位(過分極)になり、痙攣発作の原因となる異常な脱分極が抑えられます。

Q5.猫にα₂作動薬(メデトミジンなど)を使うと強い催吐が起こりやすい理由はどれ?

正解:嘔吐中枢のα₂受容体の密度・感受性が高いため 種差は「受容体の数と感受性のちがい」として理解すると応用が効きます。

Q6.テルミサルタンの作用機序と主な適応の組み合わせはどれ?

正解:AT₁受容体の遮断/猫のCKD 輸出細動脈の収縮が解除されて糸球体内圧が下がり、蛋白尿と高血圧が改善します。

Q7.オピオイド受容体が活性化したときに、シナプス後膜で起こることはどれ?

正解:K⁺チャネル開口による過分極 あわせて、Gi/Goを介したアデニル酸シクラーゼ抑制(cAMP低下)と、シナプス前膜のCa²⁺チャネル閉鎖による伝達物質放出抑制も起こります。

Q8.ブプレノルフィンの特徴として正しいのはどれ?

正解:部分作動薬で天井効果がある 高用量でも呼吸抑制の危険が少ない反面、高親和性で受容体を占有するため、フルアゴニストの効果を減弱させることがあります。

Q9.ブトルファノールの作動様式として正しいのはどれ?

正解:κ作動/μ拮抗 κ作動で内臓痛を抑えつつμをブロックするため、フルアゴニストによる過度の呼吸抑制を逆転(リバース)させる用途にも使われます。

Q10.COX-2選択的阻害薬でも急性腎障害(AKI)のリスクが残る理由はどれ?

正解:腎臓ではCOX-2も構成的に発現しているため とくに脱水や低血圧の状態では腎血流がPG依存になるため、投与前の脱水補正が重要です。なおCOX-1阻害では胃潰瘍や出血傾向が問題になります。