創傷治癒と縫合・滅菌|【獣医師国家試験対策】

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創傷の治り方、縫合、滅菌は、外科のすべての基礎です。国家試験では、必須問題で滅菌法や縫合法が、学説試験で創傷治癒の過程や湿潤環境、切開の向きが問われています。

本記事では、「傷はどう治り、何がその治りを妨げるのか」を出発点に、縫合と滅菌がなぜ必要なのかを整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 滅菌:高圧蒸気滅菌など、滅菌法の選び方
  • 縫合:垂直マットレス縫合などの縫合法
  • 創傷治癒:湿潤環境での治癒、張力線に平行な切開
この記事で押さえること
  • 創傷治癒の炎症期・増殖期・成熟期と、それぞれで働く細胞
  • 一次癒合・二次癒合・三次癒合の違い
  • 湿潤環境で治りが早くなる理由と、張力線に平行に切開する理由
  • 縫合糸の吸収性と非吸収性、単糸と編み糸の性質
  • 縫合法の使い分けの考え方
  • 滅菌と消毒の違い、滅菌法と消毒薬の選び方

1. 創傷治癒の3つの段階

  • 炎症期(受傷直後から数日):血管が収縮して血が固まり、血小板が止血する。続いて好中球が細菌を、マクロファージが死んだ組織を片づけ、マクロファージは次の段階を進める成長因子も出す
  • 増殖期(数日から数週):線維芽細胞がコラーゲンをつくり、新しい血管とともに肉芽組織が傷を埋める。表面では上皮が伸びて傷を覆い、筋線維芽細胞が傷を引き寄せて縮める
  • 成熟期(数週から数か月):コラーゲンが組み直されて傷あとが引き締まる。傷の強さはもとの皮膚に近づくが、完全には戻らない

2. 一次・二次・三次癒合

  • 一次癒合:清潔な傷を縫い合わせ、傷の縁がぴったり合った状態で治る。肉芽組織が少なく、早く、傷あとが小さい
  • 二次癒合:傷を開いたまま、肉芽組織が埋め、傷が縮み、上皮が覆って治る。汚れた傷や組織が大きく欠けた傷の治り方で、時間がかかり、傷あとが大きい
  • 三次癒合:汚れた傷をしばらく開いたまま清潔にし、感染を抑えてから縫い合わせる治り方(遅延一次縫合)

3. 治りを助けるもの、妨げるもの

3-1. 湿潤環境

傷の表面を乾かすと、かさぶたができ、上皮の細胞はその下をもぐるように進まなければなりません。適度に湿った環境を保つと、上皮の細胞が傷の表面を移動しやすく、成長因子も働きやすいため、治りが早くなります。

3-2. 張力線に平行な切開

皮膚には、張力のかかる方向(張力線)があります。張力線に平行に切開すると傷を引き離す力が弱く、傷が開きにくく、傷あとも小さくなります。直角に切ると、傷が引き離されて治りにくくなります。

3-3. 治りを妨げるもの

感染、死んだ組織や異物、血流の不足(糸の締めすぎ、組織の乱暴な扱い)、組織のすき間(死腔)、傷にかかる強い張力、そして全身の要因(低栄養、糖質コルチコイドの使用、糖尿病、副腎皮質機能亢進症など)が、傷の治りを遅らせます。

4. 縫合糸

4-1. 吸収性と非吸収性

  • 吸収性:体内で分解されて消える。天然の糸(腸線)は酵素で分解され、組織の反応が強い。合成の吸収糸(ポリグラクチン910、ポリジオキサノン、ポリグリコール酸など)は加水分解でゆっくり分解され、組織の反応が弱い。皮膚の下の組織や、抜糸できない体内の縫合に使う
  • 非吸収性:体内に残る。ナイロン、ポリプロピレン、絹、ステンレス鋼のワイヤーなど。皮膚の縫合(抜糸する)や、長く強さが必要な部位に使う。絹は天然の素材で、組織の反応が比較的強い

4-2. 単糸と編み糸

  • 単糸:1本の糸。表面がなめらかで組織を通りやすく、細菌が入り込むすき間がない。結び目がほどけやすい
  • 編み糸:細い糸を編んだもの。しなやかで結びやすいが、編み目のすき間に液や細菌が吸い込まれて、感染の温床になりやすい

5. 縫合法

  • 単純結節縫合:一針ごとに結ぶ最も基本の縫い方。1か所の糸が切れても、ほかが残る
  • 連続縫合:1本の糸で続けて縫う。速く縫えるが、どこか1か所が切れると全体がゆるむ
  • マットレス縫合:糸を傷の縁から離れた位置で折り返して縫い、張力を分散させる。垂直マットレス縫合は、傷と直角の方向に糸をかけるため、傷の縁の血流を妨げにくく、張力のかかる皮膚の縫合に使われる。水平マットレス縫合は張力の分散に優れるが、傷の縁の血流を妨げやすい

6. 滅菌と消毒

6-1. 違い

滅菌は、芽胞も含めてすべての微生物を死滅させることです。消毒は、病原微生物を感染を起こさない程度まで減らすことで、芽胞までは死なないことがあります。手術器具は滅菌し、皮膚や手指は消毒します。

6-2. 滅菌法

  • 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ):加圧した飽和水蒸気で、芽胞まで確実に死滅させる。金属の器具、布、ガラスなど、熱と水に耐えるものに使う。最も広く使われる
  • 乾熱滅菌:高温の乾いた空気で長時間加熱する。ガラスや金属、油や粉末に使う
  • 酸化エチレンガス滅菌:低温で滅菌できるため、熱に弱いプラスチック製品や内視鏡などに使う。ガスに毒性があり、滅菌後にガスを抜く時間が必要
  • 過酸化水素ガスプラズマ滅菌:低温で短時間に滅菌でき、毒性の残留がない
  • 放射線滅菌(γ線など):包装したまま滅菌でき、使い捨ての製品の工場での滅菌に使われる

6-3. 消毒薬

  • 効く範囲が広い(芽胞まで):グルタルアルデヒドなど。器具の消毒に使い、生体には使わない
  • 中程度:アルコール、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム。芽胞には効きにくい。アルコールはエンベロープのないウイルスに効きにくい
  • 狭い:クロルヘキシジン、逆性石けん(第四級アンモニウム塩)。芽胞や多くのウイルスに効かない

7. 創傷治癒と縫合で国家試験に狙われるポイント

  • 創傷治癒:炎症期(血小板・好中球・マクロファージ)→ 増殖期(線維芽細胞・肉芽組織・上皮化・収縮)→ 成熟期(コラーゲンの組み直し、強さは完全には戻らない)
  • 癒合:一次癒合は縫い合わせた清潔な傷、二次癒合は開いたまま、三次癒合は遅延一次縫合
  • 湿潤環境で上皮化が早い。張力線に平行に切開する
  • 縫合糸:合成の吸収糸は加水分解、腸線は酵素で分解。単糸は細菌が入りにくい、編み糸は感染の温床になりやすい
  • 縫合法:マットレス縫合は張力を分散。垂直は傷の縁の血流を妨げにくい
  • 滅菌:芽胞まで。高圧蒸気が基本、熱に弱いものは酸化エチレンガスなど

8. 創傷治癒と縫合の確認問題

Q1. 創傷治癒の増殖期で起こる変化を3つ挙げよ。

A. 線維芽細胞がコラーゲンをつくり新しい血管とともに肉芽組織が傷を埋めること、上皮が伸びて傷を覆うこと、筋線維芽細胞が傷を引き寄せて縮めること。

Q2. 傷を湿潤環境に保つと治りが早くなる理由を述べよ。

A. 傷の表面を乾かすとかさぶたの下を上皮の細胞がもぐって進まなければならないが、適度に湿った環境では上皮の細胞が傷の表面を移動しやすく、成長因子も働きやすいため。

Q3. 編み糸が単糸に比べて感染の温床になりやすい理由を述べよ。

A. 細い糸を編んだ構造のため、編み目のすき間に液や細菌が吸い込まれて入り込み、そこで細菌が守られてしまうため。

Q4. 滅菌と消毒の違いを述べよ。

A. 滅菌は芽胞も含めてすべての微生物を死滅させること、消毒は病原微生物を感染を起こさない程度まで減らすことで、芽胞までは死なないことがある。

Q5. 熱に弱いプラスチック製の器具の滅菌に適した方法と、その注意点を答えよ。

A. 酸化エチレンガス滅菌。低温で滅菌できるが、ガスに毒性があるため、滅菌後にガスを抜く時間が必要である(過酸化水素ガスプラズマ滅菌も低温で使える)。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。