細菌の構造・遺伝・毒素|【獣医師国家試験対策】

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細菌の性質は、その構造から多くが説明できます。細胞壁の違いが染まり方と毒素を、芽胞が消毒への強さを、プラスミドが薬剤耐性の広がりを決めています。国家試験では、染色法、リピドA、Rプラスミド、外毒素と内毒素などが問われています。

本記事では、「構造 → 生き方(酸素) → 遺伝子の受け渡し → 病気を起こす武器(毒素)」の順に整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 構造と染色:グラム染色、内毒素の本体(リピドA)
  • 遺伝:薬剤耐性の獲得のしくみ(Rプラスミドの伝達)、薬剤感受性試験の読み方
  • 毒素:腸管出血性大腸菌と溶血性尿毒症症候群、ボツリヌス菌
この記事で押さえること
  • グラム陽性菌と陰性菌の細胞壁の違いと、グラム染色で色が分かれる理由
  • 抗酸菌、芽胞、莢膜、べん毛、線毛
  • 酸素要求性による分け方
  • 形質転換・形質導入・接合と、Rプラスミドによる耐性の広がり
  • 薬剤耐性のしくみと、MICの読み方
  • 外毒素と内毒素の違い

1. 細胞壁 — グラム陽性菌と陰性菌

  • グラム陽性菌:細胞膜の外側に厚いペプチドグリカンの層をもつ。外膜はない
  • グラム陰性菌:薄いペプチドグリカンの層の外側に、外膜をもつ。外膜にはリポ多糖(LPS)があり、そのリピドAが内毒素の本体になる。LPSの外側の糖の鎖(O抗原)は、大腸菌O157などの血清型を決める

1-1. グラム染色で色が分かれる理由

クリスタルバイオレットで染めてヨウ素で固定したあと、アルコールで脱色します。ペプチドグリカンの厚いグラム陽性菌は色素が抜けずに紫に、層の薄いグラム陰性菌は色素が抜けて、あとから染めるサフラニンで赤に見えます。

1-2. 抗酸菌

結核菌やヨーネ菌は、細胞壁にミコール酸という脂質を多く含み、グラム染色では染まりにくい細菌です。チール・ネールゼン染色で一度染まると、酸とアルコールでも脱色されずに赤く残るため、抗酸菌と呼ばれます(染色法と細胞の同定の解説)。

2. そのほかの構造

  • 芽胞:バチルス属(炭疽菌など)とクロストリジウム属(破傷風菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌など)がつくる耐久型の構造。熱、乾燥、消毒薬に強く、確実に殺すには高圧蒸気滅菌が必要
  • 莢膜:菌体を包む膜で、白血球に食べられるのを防ぐ。炭疽菌の莢膜などが病原性に関わる
  • べん毛:運動のための器官。その抗原はH抗原と呼ばれる
  • 線毛:宿主の細胞に付着するための器官。性線毛は接合で遺伝子を渡すのに使われる

3. 酸素要求性

  • 偏性好気性菌:酸素がないと増えない(結核菌など)
  • 通性嫌気性菌:酸素があってもなくても増える(大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラなど)
  • 偏性嫌気性菌:酸素があると増えない(クロストリジウム属など)。深い傷や腸の中など、酸素の少ない場所で増える
  • 微好気性菌:酸素が少しだけある環境を好む(カンピロバクターなど)

4. 遺伝子の受け渡しと薬剤耐性

4-1. 遺伝子を受け渡す3つの方法

  • 形質転換:周りにあるむき出しのDNAを取り込む
  • 形質導入:細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)が、前の菌の遺伝子を運んでくる
  • 接合:菌どうしが性線毛でつながり、プラスミドを直接渡す

4-2. Rプラスミドと耐性の広がり

薬剤耐性の遺伝子をのせたプラスミドをRプラスミドといいます。Rプラスミドは接合によって、同じ菌種だけでなく別の菌種にも渡されるため、耐性が細菌のあいだに一気に広がります。染色体やプラスミドの間を移動する遺伝子(トランスポゾン)も、耐性遺伝子を運びます。

4-3. 耐性のしくみ

  • 薬を分解・修飾する:β-ラクタマーゼがペニシリンなどを分解する
  • 薬の標的を変える:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、β-ラクタム系が結合しにくい細胞壁の合成酵素をもつ
  • 薬を外に出す:排出ポンプで薬をくみ出す
  • 薬を入れない:外膜の通り道を減らす

4-4. 薬剤感受性試験の読み方

  • 最小発育阻止濃度(MIC):菌の発育を止めるのに必要な薬の最小の濃度。MICが小さいほど、少ない量で効く(感受性が高い)
  • ディスク拡散法:薬をしみ込ませた円盤の周りに、菌が育たない円(阻止円)ができる。阻止円が大きいほど効く

5. 毒素 — 外毒素と内毒素

  • 外毒素:菌が菌体の外に分泌するタンパク質の毒素。グラム陽性菌にも陰性菌にもある。作用が特定の細胞や臓器に限られ、ごく少量で強く効く。多くは熱に弱い。ホルマリンなどで毒性をなくしたトキソイドはワクチンに使える(破傷風など)
  • 内毒素:グラム陰性菌の外膜のLPS(リピドA)で、菌が壊れると放出される。熱に強く、発熱、ショック、播種性血管内凝固を起こす。作用は菌の種類によらずほぼ同じ。トキソイドにはできない

5-1. 代表的な外毒素

  • 神経毒:ボツリヌス毒素(弛緩性麻痺)、破傷風毒素(強直性けいれん)(ボツリヌス症と破傷風の解説)
  • 志賀毒素(ベロ毒素):腸管出血性大腸菌がつくり、血便と溶血性尿毒症症候群を起こす(細菌性食中毒の解説)
  • エンテロトキシン:黄色ブドウ球菌のもの(熱に強く、加熱しても食中毒を防げない)、コレラ毒素(腸の細胞のcAMPを増やして激しい水様性の下痢)など
「タンパク質か、細胞壁か」で性質が決まる

外毒素はタンパク質なので、熱で壊れやすく、トキソイドにできます。内毒素は細胞壁の成分(脂質と糖)なので、熱に強く、トキソイドにできません。性質の違いは、何でできているかから導けます。

6. 細菌の構造と毒素で国家試験に狙われるポイント

  • グラム陽性:厚いペプチドグリカン、紫。グラム陰性:薄いペプチドグリカン+外膜(LPS、リピドA)、赤
  • 抗酸菌:ミコール酸、チール・ネールゼン染色で赤(結核菌、ヨーネ菌)
  • 芽胞:バチルス属とクロストリジウム属。高圧蒸気滅菌が必要
  • 莢膜:食作用を防ぐ。べん毛:運動(H抗原)。線毛:付着と接合
  • 酸素:偏性好気、通性嫌気、偏性嫌気、微好気
  • 遺伝子の伝達:形質転換(DNA)、形質導入(ファージ)、接合(性線毛とプラスミド)。Rプラスミドは菌種を越えて耐性を広げる
  • 耐性:分解(β-ラクタマーゼ)、標的の変化(MRSA)、排出、透過性の低下。MICは小さいほど効く
  • 毒素:外毒素はタンパク質・熱に弱い・トキソイド可。内毒素はリピドA・熱に強い・トキソイド不可

7. 細菌の構造と毒素の確認問題

Q1. グラム染色でグラム陽性菌が紫、グラム陰性菌が赤に染まる理由を、細胞壁の構造から述べよ。

A. グラム陽性菌はペプチドグリカンの層が厚く、アルコールで脱色しても色素が抜けずに紫のまま残る。グラム陰性菌は層が薄く外膜があるため色素が抜け、あとから染めるサフラニンで赤に見える。

Q2. 内毒素の本体は何か。また、内毒素をもつのはどのような細菌か。

A. リポ多糖(LPS)のリピドA。グラム陰性菌の外膜に含まれる。

Q3. Rプラスミドによって薬剤耐性が細菌のあいだに広がりやすい理由を述べよ。

A. Rプラスミドは接合によって、同じ菌種だけでなく別の菌種にも渡されるため、耐性遺伝子が細菌のあいだに一気に広がるから。

Q4. ある菌に対する薬Aの最小発育阻止濃度(MIC)が薬Bより小さかった。どちらの薬がこの菌によく効くか。

A. 薬A。MICが小さいほど、少ない濃度で菌の発育を止められるため、感受性が高い。

Q5. 外毒素と内毒素の違いを、成分と熱への強さ、トキソイドにできるかどうかから述べよ。

A. 外毒素は菌が分泌するタンパク質で、多くは熱に弱く、ホルマリンなどでトキソイドにしてワクチンに使える。内毒素はグラム陰性菌の外膜のリポ多糖(リピドA)で、熱に強く、トキソイドにはできない。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。