DNAウイルスの科と代表的な病気|【獣医師国家試験対策】

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DNAウイルスは、科の数はRNAウイルスより少ないものの、ヘルペスウイルスやパルボウイルスなど、国家試験で繰り返し問われる重要な科を含んでいます。

本記事では、DNAウイルスをエンベロープがあるか、ないかで2つに分け、科ごとに「構造の特徴 → そこから生まれる性質 → 代表的な病気」の順に整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 原因ウイルスの科:ヘルペスウイルス科の病気、パルボウイルス科の病気
  • 性状:潜伏感染、封入体、エンベロープの有無、ゲノムの形
この記事で押さえること
  • DNAウイルスの多くは核の中で増え、ポックスとアスファは細胞質で増えること
  • ヘルペスウイルスの潜伏感染と再活性化
  • パルボウイルスが分裂中の細胞を狙い、環境に強い理由
  • 各科の代表的な動物の病気

1. エンベロープのあるDNAウイルス

1-1. ポックスウイルス科

  • 構造と性質:2本鎖DNA。動物のウイルスで最も大きい。DNAウイルスなのに細胞質で増えるため、細胞質に好酸性の封入体をつくる。皮膚や粘膜に痘(発疹・水疱・痂皮)をつくる
  • 代表的な病気:鶏痘、羊痘、山羊痘、ランピースキン病、伝染性膿疱性皮膚炎(めん羊・山羊、人にもうつる)、牛の偽牛痘、人のエムポックス

1-2. ヘルペスウイルス科

  • 構造と性質:2本鎖DNA。核で増え、核内封入体をつくる。感染した動物の神経節やリンパ球に潜伏感染し、ストレスや免疫の低下で再活性化して再びウイルスを出す。一度感染すると、生涯ウイルスをもち続ける
  • 代表的な病気:
    • 牛伝染性鼻気管炎(牛)
    • オーエスキー病(豚。豚以外の動物では強いかゆみと神経症状で死亡する)
    • 馬鼻肺炎(馬。呼吸器の病気と妊娠後期の流産)
    • 犬ヘルペスウイルス感染症(生まれて間もない子犬の急死)
    • 猫ウイルス性鼻気管炎(猫の上部気道の病気と角膜炎)
    • マレック病、鶏伝染性喉頭気管炎(鶏)
    • 悪性カタル熱(牛)
ヘルペスは「一度かかると一生」

ヘルペスウイルスは、症状が治まったあとも神経節などに潜んでいます。牛伝染性鼻気管炎やオーエスキー病で、症状のない牛や豚がウイルスを広げるのはこのためです。

1-3. アスファウイルス科

  • 構造と性質:2本鎖DNA。細胞質で増える。ダニ(ヒメダニ類)も感染を広げる
  • 代表的な病気:アフリカ豚熱(家畜伝染病)。豚熱(フラビウイルス科)とは別のウイルスであることに注意

1-4. ヘパドナウイルス科

一部が1本鎖の環状DNAで、増えるときに逆転写を行うという特殊なウイルスです。人のB型肝炎ウイルスが代表です。

2. エンベロープのないDNAウイルス

2-1. アデノウイルス科

  • 構造と性質:2本鎖DNA。核で増え、大きな核内封入体をつくる
  • 代表的な病気:犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型。回復期に角膜が青白く濁るブルーアイ)、犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型、ケンネルコフの原因の一つ)、鶏の封入体肝炎、産卵低下症候群

2-2. パピローマウイルス科

  • 構造と性質:2本鎖の環状DNA。皮膚や粘膜の上皮に乳頭腫(いぼ)をつくる
  • 代表的な病気:牛の乳頭腫、犬の口腔乳頭腫。免疫が働いて自然に消えることが多い

2-3. パルボウイルス科

  • 構造と性質:1本鎖DNAで、とても小さい。自分でDNAを複製する酵素をもたないため、宿主の細胞がDNAを複製している時期(分裂中の細胞)でしか増えられない。そのため、腸の陰窩の細胞、骨髄、胎子の組織など、盛んに分裂する細胞を侵す。エンベロープがなく、環境中で長く生き残り、消毒薬に強い
  • 代表的な病気:
    • 犬パルボウイルス感染症:激しい嘔吐と血便の腸炎、白血球の減少。子犬の心筋炎
    • 猫汎白血球減少症:腸炎と白血球の著しい減少。妊娠中の感染では、子猫に小脳の形成不全(運動失調)が起こる
    • 豚パルボウイルス感染症:初めて妊娠した雌豚の死産、ミイラ化した胎子
「分裂中の細胞」で病変の場所が決まる

パルボウイルスは分裂している細胞でしか増えないため、病変は腸の陰窩(腸炎)、骨髄(白血球の減少)、胎子の発育中の組織(小脳の形成不全、胎子の死亡)に現れます。1つの性質から、症状がまとめて説明できます。

2-4. サーコウイルス科

  • 構造と性質:1本鎖の環状DNAで、動物のウイルスで最も小さい部類
  • 代表的な病気:豚サーコウイルス2型感染症(離乳後の子豚の発育不良、リンパ組織の障害)、オウムやインコの嘴や羽の病気

3. DNAウイルスで国家試験に狙われるポイント

  • エンベロープあり:ポックス(最大、細胞質で増殖、痘)、ヘルペス(潜伏感染と再活性化、核内封入体)、アスファ(アフリカ豚熱、ダニ)、ヘパドナ(逆転写)
  • エンベロープなし:アデノ(犬伝染性肝炎、核内封入体)、パピローマ(乳頭腫)、パルボ(1本鎖DNA、分裂中の細胞、環境に強い)、サーコ(最小、豚サーコウイルス)
  • 細胞質で増えるDNAウイルス:ポックスとアスファ
  • ヘルペスの病気:牛伝染性鼻気管炎、オーエスキー病、馬鼻肺炎、犬ヘルペス、猫ウイルス性鼻気管炎、マレック病、鶏伝染性喉頭気管炎
  • パルボの病気:犬パルボウイルス感染症、猫汎白血球減少症(小脳の形成不全)、豚パルボウイルス感染症

4. DNAウイルスの確認問題

Q1. DNAウイルスのうち、細胞質で増える科を2つ挙げよ。

A. ポックスウイルス科とアスファウイルス科。多くのDNAウイルスは核で増える。

Q2. ヘルペスウイルスに感染して回復した牛が、症状がないのにウイルスを広げることがある理由を述べよ。

A. ヘルペスウイルスは神経節などに潜伏感染し、ストレスや免疫の低下で再活性化して再びウイルスを出すため。一度感染すると生涯ウイルスをもち続ける。

Q3. パルボウイルスが腸の陰窩や骨髄を侵す理由を述べよ。

A. パルボウイルスは自分でDNAを複製する酵素をもたず、宿主の細胞がDNAを複製している分裂中の細胞でしか増えられないため、盛んに分裂する腸の陰窩の細胞や骨髄の細胞を侵す。

Q4. 妊娠中の猫が猫汎白血球減少症ウイルスに感染したとき、生まれた子猫にみられる異常は何か。

A. 小脳の形成不全による運動失調。ウイルスが発育中の小脳の分裂している細胞を侵すため。

Q5. アフリカ豚熱と豚熱の原因ウイルスの科をそれぞれ答えよ。

A. アフリカ豚熱はアスファウイルス科(DNAウイルス)、豚熱はフラビウイルス科(RNAウイルス)で、まったく別のウイルスである。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。