伝染病学 > 魚の病気
魚の病気(魚病)は、学説試験Bの終わりで毎年のように出題されています。コイヘルペスウイルス病、レンサ球菌症、リンホシスチス病、エドワジエラ症など、病名と原因と魚の種類の組み合わせが問われます。
魚は水の中で群れで飼われ、体温が水温で変わる動物です。本記事では、この魚ならではの条件を押さえたうえで、ウイルス・細菌・寄生虫の順に整理しました。
過去問分析
第73回〜第77回では、次のような形で出題されています。
- ウイルス:コイヘルペスウイルス病(持続的養殖生産確保法の特定疾病)、リンホシスチス病
- 細菌:レンサ球菌症、エドワジエラ症
- 寄生虫:グルゲア症、ベネデニア症
- 体のつくり:鰓耙(さいは)、脾臓
この記事で押さえること
- 魚の病気に水温と水質が大きく関わる理由
- コイヘルペスウイルス病と、法律上の特定疾病
- 皮膚に白いつぶができるリンホシスチス病と白点病の違い
- レンサ球菌症、エドワジエラ症、冷水病などの細菌の病気
- 人の食中毒につながるクドア
1. 魚の病気の特徴
- 体温が水温で変わる:魚は体温を一定に保てない(変温動物)ため、病原体が増えやすい水温の時期に病気がはやる。病気ごとに流行する季節が決まっている
- 水の中で群れで飼う:1尾の病気が、水を通じていけす全体に広がる。水中の酸素の不足や水の汚れは、魚を弱らせて発病の引き金になる
- 治療は群れ単位:薬は、餌にまぜたり水に溶かしたりして、群れ全体に与える。食用の魚では、薬が残らないよう使い方が決められている(動物用医薬品の法規の解説)
2. ウイルスの病気
- コイヘルペスウイルス病:コイ(ニシキゴイを含む)に起こる。鰓が壊死して呼吸ができなくなり、大量死する。水温がおよそ18〜25℃の時期に多い。持続的養殖生産確保法の特定疾病に指定されている
- リンホシスチス病(イリドウイルス科):ヒラメなどの皮膚やひれに、白い粒の集まりができる。粒の一つひとつは、ウイルスに感染して巨大化した細胞。見た目が悪くなるが、死ぬことは少ない
- マダイイリドウイルス病(イリドウイルス科):マダイやブリなどが夏に死ぬ。脾臓などに、大きく膨らんだ細胞がみられる
- ウイルス性神経壊死症:生まれて間もない仔魚や稚魚の脳と網膜に空胞をつくり、異常な泳ぎ方をして死ぬ
- 伝染性造血器壊死症(ラブドウイルス科):サケやマスの稚魚の、血液をつくる組織を壊す
3. 細菌の病気
- レンサ球菌症:ブリやカンパチ(主に Lactococcus garvieae)、ヒラメ(Streptococcus iniae)などに起こる。眼球の突出と出血、えらぶたの内側の出血が特徴
- エドワジエラ症:ヒラメやウナギに起こる。腹部が膨れ、肛門が赤く腫れ、腸が飛び出すこともある。腎臓や肝臓に膿がたまる
- 冷水病(Flavobacterium psychrophilum):アユなどに、名前の通り水温の低い時期に起こる。体表の潰瘍や貧血
- せっそう病(Aeromonas salmonicida):サケやマスの皮膚の下に、腫れもの(せっそう)ができる
- 類結節症:ブリの脾臓や腎臓に、小さな白い点(結節)が多数できる
- ビブリオ病:アユや海の魚に、体表の出血や潰瘍を起こす
4. 寄生虫と真菌の病気
- 白点病:繊毛虫が皮膚や鰓に寄生し、体表に白い点が散らばる。淡水魚と海水魚で原因の虫が違う。リンホシスチス病の白い粒(巨大化した細胞)とは別の病気
- ベネデニア症:ブリやカンパチの体表に吸盤で張りつく扁形動物(ハダムシ)。魚が体をいけすにこすりつけて傷ができる。淡水に弱い性質を利用して落とす
- グルゲア症(微胞子虫):アユなどの体の中に白い袋(シスト)ができる
- クドア(粘液胞子虫):ヒラメの筋肉に寄生する Kudoa septempunctata は、生で食べた人に、食後数時間の一時的な嘔吐や下痢を起こす(自然毒とカビ毒の解説もあわせて)
- ミズカビ病(真菌):傷ついた体表に、綿のような菌糸が生える
5. 魚の体のつくりで問われること
- 鰓:酸素を取り込む器官。鰓耙は、鰓の内側に並ぶくしのような突起で、口から入った水の中の餌をこし取る
- 脾臓・腎臓(頭腎):魚には骨髄やリンパ節がなく、腎臓の前の部分(頭腎)と脾臓が、血液をつくり免疫を担う。多くの感染症で、これらの臓器に病変が出る
6. 魚の病気で国家試験に狙われるポイント
- 魚の特徴:変温動物で水温により流行の季節が決まる、群れで飼うため水を通じて広がる、治療は群れ単位
- コイヘルペスウイルス病:コイ、鰓の壊死、持続的養殖生産確保法の特定疾病
- リンホシスチス病:イリドウイルス、ヒラメなどの皮膚の白い粒(巨大化した細胞)、死亡は少ない
- レンサ球菌症:ブリ類、眼球の突出と出血。エドワジエラ症:ヒラメ・ウナギ、腹部の膨満
- 冷水病:アユ、低い水温。せっそう病:サケ・マスの皮膚の腫れもの。類結節症:ブリの脾臓・腎臓の白い点
- 寄生虫:白点病(繊毛虫)、ベネデニア症(ブリ類の体表、淡水に弱い)、グルゲア症(微胞子虫)、クドア(ヒラメ、人の食中毒)
- 体のつくり:鰓耙は餌をこし取る。頭腎と脾臓が血液と免疫を担う
7. 魚の病気の確認問題
Q1. 魚の病気で、病気ごとに流行する季節が決まっている理由を述べよ。
A. 魚は体温が水温で変わる変温動物で、病原体が増えやすい水温と、魚が弱りやすい水温が病気ごとに決まっているため。
Q2. コイヘルペスウイルス病の主な病変と、法律上の位置づけを答えよ。
A. 鰓の壊死で呼吸ができなくなり、大量死する。持続的養殖生産確保法の特定疾病に指定されている。
Q3. リンホシスチス病でヒラメの皮膚にみられる白い粒の正体は何か。
A. イリドウイルスに感染して巨大化した細胞。
Q4. ブリで眼球の突出と出血、えらぶたの内側の出血がみられた。考えられる細菌の病気を答えよ。
A. レンサ球菌症(主に Lactococcus garvieae による)。
Q5. ヒラメを生で食べた人に、食後数時間の一時的な嘔吐や下痢を起こす寄生虫を答えよ。
A. クドア(Kudoa septempunctata)。ヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫である。
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詳細な解説
- 分野別まとめ:伝染病学 — 病原体の分類、消毒薬の選び方、疫学の基礎と、伝染病学全体の出題傾向を整理しています。
- 自然毒とカビ毒 — 魚介類の毒による食中毒を扱います。
- RNAウイルスの科と代表的な病気 — 魚の病気を起こすラブドウイルスなどの性状を扱います。
- DNAウイルスの科と代表的な病気 — コイヘルペスウイルスの仲間、ヘルペスウイルス科の性状を扱います。
参考文献
- 獣医伝染病学 近代出版
- 農林水産省 獣医師国家試験(公式)