大動物の跛行と蹄の病気|【獣医師国家試験対策】

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牛の跛行の多くは蹄の病気から、競走馬の跛行の多くは腱と骨への繰り返しの負荷から起こります。国家試験では、牛の蹄の写真や馬の肢のX線像・超音波像を示して病名を問う問題が、実地試験で繰り返し出題されています。

本記事では、「蹄のどこが、何によって傷むのか」「馬の肢のどこに負荷が集中するのか」という位置と原因から整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 牛:蹄底潰瘍、白帯病の写真
  • 馬:浅屈腱炎、第3中手骨と第3手根骨の骨折の画像
この記事で押さえること
  • 牛の蹄の病気が後肢の外側の蹄に多い理由
  • 蹄底潰瘍・白帯病・蹄葉炎が角質の質の低下でつながっていること
  • 感染による趾皮膚炎と趾間腐爛の違い
  • 馬の浅屈腱炎の部位と超音波の所見
  • 若い競走馬の管骨の骨膜炎と、第3中手骨・第3手根骨の骨折
  • 馬の蹄葉炎で蹄骨が回転・沈下する理由

1. 牛の蹄の病気

1-1. 後肢の外側の蹄に多い理由

牛の体重の多くは後肢の外側の蹄にかかります。乳房が大きくなるとさらに負担が外側へ寄り、硬い床やぬかるみの環境、長時間の起立が重なると、この蹄の蹄底や白線が傷みやすくなります。

1-2. 蹄葉炎 — 角質の質が落ちる土台

第一胃アシドーシスなどで生じた内毒素やヒスタミンが、蹄の内側の真皮の血流を乱し、角質をつくる働きが落ちます。その結果、柔らかく質の悪い角質ができ、蹄底潰瘍や白帯病の土台になります。分娩前後の栄養の急な変化と重なって起こりやすく、第一胃アシドーシスの解説ともつながる病気です。

1-3. 蹄底潰瘍

後肢の外側の蹄の、蹄底の蹄踵寄りの決まった場所に、角質が欠けて真皮が露出する病気です。蹄骨の突起がその下の真皮を内側から圧迫し、血流が悪くなって角質がつくられなくなるために起こります。

1-4. 白帯病

蹄壁と蹄底をつなぐ白線が分かれ、そのすき間に土や細菌が入り込んで膿瘍をつくる病気です。後肢の外側の蹄の、外側(反軸側)の白線に多く、膿が蹄の中を進んで蹄冠から出ることもあります。

1-5. 感染による病気

  • 趾皮膚炎(乳頭腫状趾皮膚炎):トレポネーマなどのらせん菌による感染で、蹄踵の上の皮膚に、いちごのような赤い病変や乳頭腫状の病変ができる。強い痛みがあり、群の中で伝染する
  • 趾間腐爛:フソバクテリウム・ネクロフォルムなどによる趾間の皮膚の壊死。趾間が腫れ、悪臭のある壊死組織がみられる

2. 馬の跛行

2-1. 浅屈腱炎

  • 部位:競走馬の前肢の管部(中手部)の後ろ側を走る浅指屈腱
  • 起こり方:高速で走るたびに腱が大きく引き伸ばされ、腱の線維が少しずつ傷んで断裂する
  • 症状:管部の後ろ側が弓なりに腫れ、熱と痛みをもつ
  • 超音波:腱の断面が大きくなり、線維が断裂した部分が黒く(低エコーに)写る
  • 経過:治った腱は瘢痕組織で置き換わり弾力が落ちるため、再発しやすい

2-2. 管骨の骨膜炎と骨折

  • 管骨の骨膜炎(ソエ):調教を始めたばかりの若い競走馬の前肢の第3中手骨(管骨)の前面に、繰り返しの負荷で骨膜炎が起こる。骨が負荷に合わせて強くなる前に負荷がかかりすぎるために起こる
  • 第3中手骨の骨折:骨膜炎が進むと、前面に疲労骨折が起こることがある。遠位の顆の骨折も競走馬に多い
  • 第3手根骨の骨折:手根関節(前膝)の前面に強い圧縮がかかり、第3手根骨の前面が板状に割れる(板状骨折)

いずれも高速での走行の繰り返しで、同じ場所に負荷が集中することが原因です。

2-3. 馬の蹄葉炎

蹄の内側では、蹄骨が葉状層という薄いひだで蹄壁につり下げられています。穀物の食べすぎ、内毒素の血症、下垂体中葉機能障害(馬のクッシング病)や肥満に伴う高インスリン血症などで葉状層が傷むと、蹄骨を支えられなくなります。深指屈腱に引っ張られて蹄骨の先が下を向いて回転し、重いときは蹄骨全体が沈み込みます。前肢に多く、蹄の先に体重をかけまいとして、前肢を前に出して後肢に体重を移した独特の立ち方になります。

3. 大動物の跛行と蹄の病気で国家試験に狙われるポイント

  • 牛の蹄:後肢の外側の蹄に多い。蹄葉炎による角質の質の低下が蹄底潰瘍と白帯病の土台
  • 蹄底潰瘍:蹄底の蹄踵寄り、蹄骨による真皮の圧迫
  • 白帯病:白線の分離と膿瘍、外側(反軸側)の白線
  • 趾皮膚炎:トレポネーマ、蹄踵の上の皮膚、いちご状の病変、伝染性
  • 趾間腐爛:フソバクテリウム・ネクロフォルム、趾間の皮膚の壊死と悪臭
  • 浅屈腱炎:前肢の管部の後ろ側、超音波で低エコー、再発しやすい
  • 管骨:若い競走馬の第3中手骨の骨膜炎と疲労骨折、第3手根骨の板状骨折
  • 馬の蹄葉炎:葉状層の障害、蹄骨の回転と沈下、前肢に多い

4. 大動物の跛行と蹄の病気の確認問題

Q1. 牛の蹄底潰瘍と白帯病が、後肢の外側の蹄に多い理由を述べよ。

A. 牛の体重の多くが後肢の外側の蹄にかかり、乳房が大きくなるとさらに外側へ負担が寄るため、この蹄の蹄底や白線が傷みやすいから。

Q2. 牛の蹄葉炎が、蹄底潰瘍や白帯病の土台になる理由を述べよ。

A. 第一胃アシドーシスなどで生じた内毒素やヒスタミンが蹄の真皮の血流を乱し、角質をつくる働きが落ちて柔らかく質の悪い角質ができるため、蹄底や白線が傷みやすくなるから。

Q3. 群の牛で、蹄踵の上の皮膚にいちごのような赤い病変がみられ、強い痛みを示した。考えられる病気と原因を答えよ。

A. 趾皮膚炎(乳頭腫状趾皮膚炎)。トレポネーマなどのらせん菌の感染が原因で、群の中で伝染する。

Q4. 競走馬の浅屈腱炎の部位と、超音波で見られる所見を述べよ。

A. 前肢の管部の後ろ側を走る浅指屈腱に起こる。超音波では腱の断面が大きくなり、線維が断裂した部分が低エコー(黒)に写る。

Q5. 馬の蹄葉炎で蹄骨が回転する理由を述べよ。

A. 蹄骨を蹄壁につり下げている葉状層が傷んで支えられなくなり、深指屈腱に引っ張られて蹄骨の先が下を向くため。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。