犬と猫の肝臓・胆道・膵臓の疾患|【獣医師国家試験対策】

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肝臓・胆道・膵臓の病気は、嘔吐や食欲不振といったよく似た症状で来院するため、見分けが難しい分野です。国家試験では、先天性門脈体循環シャントと肝性脳症、銅関連性慢性肝炎、胆嚢の病気の超音波像、猫の肝リピドーシスと胆管炎、膵炎が問われています。

本記事では、まず肝臓の3つの仕事を押さえ、「どの仕事が失われると、どんな症状や検査値の変化が出るか」を導いたうえで、病気ごとに整理しました。

過去問分析

第73回〜第77回では、次のような形で出題されています。

  • 肝臓:先天性門脈体循環シャント(門脈奇静脈シャントの画像を含む)、肝性脳症の管理、銅関連性慢性肝炎の好発犬種、特発性慢性肝炎、肝細胞癌
  • 胆道:胆嚢壁の水腫性の肥厚(超音波像)、猫のリンパ球性胆管炎
  • 猫:肝リピドーシス
この記事で押さえること
  • 肝臓の3つの仕事と、失われたときの症状・検査値
  • 門脈体循環シャントで肝性脳症が起こるしくみと、高タンパク食が悪化させる理由
  • 銅関連性慢性肝炎の好発犬種
  • 胆嚢粘液嚢腫と、胆嚢の壁が二重に見える理由
  • 猫の肝リピドーシスと、三臓器炎
  • 犬の急性膵炎が起こるしくみと症状

1. 肝臓の3つの仕事から症状を導く

  • つくる:アルブミン、血液を固める凝固因子、ブドウ糖(血糖)、コレステロール、尿素をつくる。失われると、低アルブミン血症(腹水・むくみ)、出血しやすさ、低血糖、低コレステロール、尿素窒素(BUN)の低下が起こる
  • 片づける:腸から吸収されたアンモニアを尿素に変えて無害にし、薬やビリルビンを処理する。失われると、アンモニアが増えて脳に作用し(肝性脳症)、黄疸が出る
  • 胆汁をつくって流す:脂肪の消化を助ける胆汁をつくり、胆管から腸へ流す。流れが悪くなると、黄疸が出る

1-1. 肝臓の検査値の読み方

  • ALT:肝細胞の中にある酵素。肝細胞が壊れると血液に出てきて上がる
  • ALP:胆汁の流れが悪いと上がる。犬では、ステロイド(糖質コルチコイド)の影響でも上がる(犬の副腎皮質機能亢進症の解説)
  • 総胆汁酸:腸から戻ってきた胆汁酸を、肝臓がどれだけ回収できているか(肝臓の働き)を表す。食後に大きく上がれば、肝臓の働きが落ちているか、血液が肝臓を素通りしている
  • ビリルビン:黄疸の原因は、赤血球が壊れすぎる(溶血)、肝臓の処理が追いつかない、胆汁の出口がふさがる、の3つに分けて考える(超簡単まとめ「黄疸」)
「壊れている」と「働けていない」は別

ALTが高いのは肝細胞が壊れているしるしで、肝臓の働きとは別です。肝臓が小さく働きが落ちている病気(門脈体循環シャントや進んだ肝硬変)では、ALTはあまり上がらず、総胆汁酸やアンモニアが上がり、アルブミンやBUNが下がることがあります。

2. 先天性門脈体循環シャントと肝性脳症

2-1. どんな病気か

腸から吸収された栄養やアンモニアを含む血液は、本来門脈を通って肝臓に集まり、処理されてから全身へ流れます。門脈体循環シャントは、門脈と全身の静脈をつなぐ余分な血管(短絡血管)が生まれつきあり、血液が肝臓を素通りしてしまう病気です。

  • 小型犬:肝臓の外に短絡血管があるもの(門脈と後大静脈や奇静脈をつなぐ)が多い
  • 大型犬:胎子のときに肝臓の中にあった血管(静脈管)が残る、肝臓の中の短絡が多い

2-2. 症状と検査

  • 肝性脳症:処理されないアンモニアなどが脳に届き、ふらつき、頭を壁に押しつける、ぐるぐる回る、けいれんなどを起こす。食後に悪化しやすい
  • 発育不良:同じ年の子より体が小さい。肝臓に十分な血液が届かないため肝臓が小さい
  • 尿酸アンモニウム結石:アンモニアや尿酸が増えて、膀胱に結石ができる(尿石症の解説)
  • 検査:食前と食後の総胆汁酸の上昇、アンモニアの上昇、BUN・アルブミン・コレステロールの低下

2-3. 肝性脳症を悪化させるもの

アンモニアの多くは、腸の中でタンパク質が細菌に分解されてできます。そのため、高タンパク食、消化管の出血(血液はタンパク質のかたまり)、便秘は肝性脳症を悪化させます。管理の原則は、良質なタンパク質を適量にすることと、腸の中を酸性にしてアンモニアを便と一緒に出させる薬(ラクツロース)を使うことです。

「高タンパク食で予防」は誤り

肝臓の病気だから栄養をたっぷり、と考えがちですが、肝性脳症ではタンパク質のとりすぎがアンモニアを増やして悪化させます。この選択肢は過去問で問われています。

3. 犬の慢性肝炎

  • 銅関連性慢性肝炎:肝臓に銅がたまって肝細胞を傷つけ、慢性の肝炎から肝硬変へ進む。ベドリントン・テリア(遺伝子の異常で銅を胆汁に出せない)、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマン、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどに多い
  • 特発性慢性肝炎:原因がはっきりしない慢性の肝炎。免疫の関与が考えられている

4. 胆嚢と胆管の病気

4-1. 胆嚢粘液嚢腫(犬)

  • どんな病気か:胆嚢の中に、ゼリーのように固まった粘液がたまる病気。中高齢の犬に多く、シェットランド・シープドッグやミニチュア・シュナウザーで目立つ
  • 関わる病気:甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、高脂血症(血液の脂質が多い状態)
  • 超音波:胆嚢の中が、放射状の模様(キウイフルーツの断面のような模様)に見える
  • 危険:胆嚢が破裂すると、胆汁がおなかに漏れて腹膜炎を起こす

4-2. 胆嚢の壁が二重に見えるとき

超音波で胆嚢の壁が厚く、二重の線のように見えるのは、壁がむくんでいるしるしです。犬のアナフィラキシー(犬では肝臓とその周りの血管が強く反応する)、右心不全、低アルブミン血症などで起こります。胆嚢そのものの病気とは限らない点が大切です。

4-3. 猫の胆管炎と三臓器炎

  • 好中球性胆管炎:腸から胆管へ細菌がさかのぼって起こる、急性の炎症。発熱や黄疸
  • リンパ球性胆管炎:ゆっくり進む慢性の炎症で、免疫の関与が考えられている
  • 三臓器炎:猫では、胆管と膵管が合流してから十二指腸に開くため、胆管炎、膵炎、腸炎が同時に起こりやすい

5. 猫の肝リピドーシス

  • 起こり方:太った猫が、ストレスやほかの病気で数日食べなくなると、体の脂肪が一気に分解されて肝臓に運ばれる。肝臓が処理しきれず、肝細胞に脂肪がたまって働けなくなる
  • 症状:食欲の廃絶、黄疸、嘔吐、やせ
  • 考え方:原因は食べないことそのものなので、栄養をとらせることが回復の鍵になる

6. 膵炎

6-1. 犬の急性膵炎

  • しくみ:膵臓がつくる消化酵素は、ふつうは腸に出てから働く。何かのきっかけで膵臓の中で働き始め、膵臓自身を消化してしまう
  • きっかけ:高脂肪の食事、肥満、高脂血症(ミニチュア・シュナウザーに多い)、副腎皮質機能亢進症など
  • 症状:嘔吐、腹痛(前肢を伸ばしてお尻を上げる「祈りの姿勢」)、元気の消失。重くなると全身に炎症が広がり、播種性血管内凝固などを起こす
  • 検査:膵臓に特有のリパーゼ(膵特異的リパーゼ)の上昇、超音波で膵臓の腫れと周りの脂肪の変化

6-2. 猫の膵炎

猫の膵炎は、嘔吐や腹痛がはっきりせず、元気と食欲がないだけのことが多いのが特徴です。三臓器炎として、胆管炎や腸炎と一緒に起こることがあります。

膵臓の消化酵素がつくれなくなる膵外分泌不全は、犬の膵外分泌不全の解説で扱っています。

7. 肝臓の腫瘍

犬の肝細胞癌は、肝臓の一部に大きな塊として単独でできることが多い腫瘍です。肝臓は、ほかの臓器の腫瘍(血管肉腫、リンパ腫など)が転移しやすい場所でもあります(腫瘍学の分野別まとめ)。

8. 肝臓・胆道・膵臓の疾患で国家試験に狙われるポイント

  • 肝臓の仕事:つくる(アルブミン・凝固因子・血糖・BUN)、片づける(アンモニア・ビリルビン)、胆汁。ALTは細胞の破壊、ALPは胆汁の流れ、総胆汁酸は働き
  • 門脈体循環シャント:小型犬は肝外、大型犬は肝内(静脈管の遺残)。肝性脳症(食後に悪化)、小肝症、尿酸アンモニウム結石、総胆汁酸の上昇、BUN・アルブミンの低下
  • 肝性脳症:高タンパク食・消化管出血・便秘で悪化。ラクツロースで腸を酸性に
  • 銅関連性慢性肝炎:ベドリントン・テリア、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマンなど
  • 胆嚢粘液嚢腫:シェルティー・シュナウザー、内分泌の病気や高脂血症、キウイフルーツ状、破裂
  • 胆嚢壁の二重像:壁のむくみ(アナフィラキシー、右心不全、低アルブミン血症)
  • 猫:肝リピドーシス(肥満の猫の絶食)、胆管炎(好中球性・リンパ球性)、胆管と膵管の合流による三臓器炎
  • 犬の急性膵炎:高脂肪食、酵素による自己消化、祈りの姿勢、膵特異的リパーゼ

9. 肝臓・胆道・膵臓の疾患の確認問題

Q1. 先天性門脈体循環シャントの犬で、肝性脳症が起こるしくみを述べよ。

A. 腸から吸収されたアンモニアなどを含む血液が、短絡血管を通って肝臓を素通りし、処理されないまま全身に回って脳に作用するため。

Q2. 肝性脳症の犬に高タンパク食を与えることが勧められない理由を述べよ。

A. 腸の中でタンパク質が細菌に分解されてアンモニアができるため、タンパク質をとりすぎるとアンモニアが増え、肝性脳症が悪化するから。

Q3. 銅関連性慢性肝炎の好発犬種を2つ挙げよ。

A. ベドリントン・テリア、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマン、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアから2つ。

Q4. 超音波で胆嚢の壁が厚く二重に見えた。どのような状態を考えるか。

A. 胆嚢の壁のむくみ。犬のアナフィラキシー、右心不全、低アルブミン血症などで起こり、胆嚢そのものの病気とは限らない。

Q5. 猫で胆管炎・膵炎・腸炎が同時に起こりやすい理由を、解剖から述べよ。

A. 猫では胆管と膵管が合流してから十二指腸に開くため、腸から細菌や炎症が胆管と膵管の両方に及びやすいから(三臓器炎)。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年10月2日/最終更新日:2026年10月2日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。