臨床獣医学 > 繁殖
繁殖学・産科は、性周期 → 交配と妊娠 → 分娩 → 繁殖障害という一続きの流れを、動物種ごとに理解する分野です。国家試験では、実地試験の画像問題(直腸検査の所見、超音波像、胎子や胎盤の写真)が特に多く、学説試験ではホルモンの働きや繁殖障害の病態が問われています。
本ページでは、すべての動物に共通するホルモンの流れと繁殖に使う薬の作用を短くまとめ、動物種ごとの詳細記事へ案内します。各記事は、その動物の繁殖を最初から最後まで一続きで読めるように構成しています。
繁殖・産科に関わる問題は、実地Cの画像問題が半分近くを占めます。動物種では牛が最も多く、発情周期と排卵、繁殖技術、卵巣と子宮の繁殖障害、難産、乳房炎が繰り返し出題されています。
本ページの出題傾向は、第73回〜第77回(全1,650問)を編集部が分類集計したものです。
1. 繁殖学の出題傾向
- 牛:発情周期と排卵のタイミング、過剰排卵と胚移植、黄体遺残・卵胞嚢腫などの繁殖障害、尿膜水腫、難産、乳房炎
- 犬と猫:性周期、子宮蓄膿症、プロジェステロンの働き、乳腺腫瘍と避妊手術
- 豚:妊娠期間、発情の持続時間、卵巣嚢腫、ゼアラレノン、繁殖障害を起こす感染症
- 馬、めん羊と山羊:交配の適期、馬伝染性子宮炎、妊娠中毒、発情周期
- 共通:生殖器の解剖、ホルモンの働き、胎盤の構造
2. 共通の基礎 — ホルモンの流れ
どの動物でも、繁殖は次のホルモンの流れで動いています。
- 視床下部がGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を出す
- 下垂体前葉がFSH(卵胞を育てる)とLH(排卵を起こし、黄体をつくる)を出す
- 育った卵胞がエストロジェンを出す。発情の徴候を起こし、高くなると下垂体からLHが一気に放出され(LHサージ)、排卵が起こる
- 排卵のあとにできた黄体がプロジェステロンを出す。発情を抑え、妊娠を維持する
- 妊娠しなければ、子宮がPGF2αを出して黄体を退行させ、次の発情が来る(牛・豚・馬・めん羊・山羊)
分娩と射乳には下垂体後葉のオキシトシンが、泌乳にはプロラクチンが働きます。犬では、子宮のPGF2αによる黄体の退行が起こらないため、妊娠していなくても黄体の働きが長く続きます(犬と猫の繁殖の解説)。
3. 共通の基礎 — 繁殖に使うホルモン剤の作用
本ページでは作用の仕組みまでを扱い、用量や使い方は扱いません。
- GnRH製剤:下垂体からLHを放出させ、排卵を起こしたり、卵胞嚢腫を黄体化させたりする
- hCG:LHに似た作用で、排卵を起こし、黄体化させる
- FSH製剤、eCG:卵胞を育てる。多数の卵胞を同時に育てて過剰排卵を起こすのに使われる
- PGF2α製剤:黄体を退行させる。発情を起こしたり、発情をそろえたり(同期化)、黄体が残って起こる無発情や、妊娠の中断・分娩の誘起に使われる
- プロジェステロン製剤:腟内に入れるなどして黄体期と同じ状態をつくり、取り除いたときに発情をそろえる
4. 共通の基礎 — 胎盤と初乳
胎盤で母体の血液と胎子の血液を隔てる層の数は、動物によって異なります。牛・豚・馬などは層が多いため、母体の抗体が胎盤を通れず、子は生まれてすぐの初乳から抗体を受け取ります(移行抗体)。初乳を飲めない子牛や子馬が感染症にかかりやすいのはこのためです(免疫学の分野別まとめ)。
5. 動物種ごとの詳細解説
牛牛の繁殖(性周期・妊娠・繁殖技術)
21日の発情周期、発情の見つけ方と排卵のタイミング、人工授精の適期、妊娠の認識と妊娠診断、発情の同期化、過剰排卵と胚移植、繁殖成績の指標を解説します。
牛牛の繁殖障害と周産期の異常
卵胞嚢腫・黄体嚢腫、鈍性発情、黄体遺残、子宮内膜炎と子宮蓄膿症、尿膜水腫、胎子のミイラ変性、難産、胎盤停滞を、「黄体があるか、ないか」を軸に解説します。
6. 学習教材
関連する教材
- 解説ブック:犬の妊娠とホルモン — 犬の性周期と妊娠のホルモンを体系的に扱います
- 解説ブック:猫の発情と妊娠 — 猫の交尾排卵と妊娠を体系的に扱います
- 生殖器と乳腺の腫瘍 — 乳腺腫瘍と避妊手術、卵巣と精巣の腫瘍
- 法定伝染病かるた — 流産や異常産を起こす家畜の伝染病
7. 繁殖学の勉強法 ― おすすめの学習順序
- 共通の基礎:本ページ第2章と第3章で、ホルモンの流れとホルモン剤の作用を押さえる
- 牛:出題が最も多い。性周期と繁殖技術 → 繁殖障害と周産期 → 乳房炎の順に読む
- 犬と猫:犬の黄体期の長さと子宮蓄膿症、猫の交尾排卵
- 馬・豚・めん羊と山羊:それぞれの特徴を押さえる
参考文献
- 獣医繁殖学 文永堂出版
- 獣医生理学第二版 文永堂出版
- 新獣医内科学 文永堂出版
- 犬と猫の治療ガイド インターズー
- 農林水産省 獣医師国家試験(公式)