肉腫|【獣医師国家試験対策】

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肉腫は、骨、血管、線維、筋、脂肪といった間葉系の組織から生まれる悪性腫瘍です。国家試験では、骨肉腫のX線像、血管肉腫の脾臓の腫瘤や腹腔内出血、組織球性肉腫の病理像から、腫瘍名や性質を問う問題が出題されています。

肉腫には、「細胞がはがれにくい」「血管に入りやすい」という共通の性質があります。本記事は、この共通点を押さえたうえで、代表的な4つの肉腫の違いを整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 骨肉腫:X線像からの診断、初診時の肺転移の見え方
  • 血管肉腫:脾臓の腫瘤や出血を示す症例問題
  • 組織球性肉腫:病理像、血球貪食性組織球性肉腫の進行の速さ
  • 軟部組織肉腫・線維肉腫:細胞診や病理像からの診断
この記事で押さえること
  • 肉腫に共通する細胞診の見え方と血行性転移
  • 骨肉腫の好発部位、X線の骨膜反応、肺への転移
  • 血管肉腫の好発臓器と破裂、血液の異常
  • 組織球性肉腫の好発犬種と、血球貪食性の型
  • 軟部組織肉腫の見た目より広い浸潤と、猫の注射部位肉腫

1. 肉腫に共通する性質

  • 細胞診:細胞どうしが結合組織の中にしっかり埋まっているため、針で吸引してもはがれにくく、紡錘形の細胞がまばらに少数しか採れない。細胞診だけで確定できないことが多い
  • 転移:腫瘍が血管に入り込みやすく、血行性に肺へ転移しやすい。所属リンパ節への転移は、癌に比べて少ない

2. 骨肉腫

  • 位置づけ:犬の原発性の骨の腫瘍で最も多い。大型犬・超大型犬の中高齢に多い
  • 好発部位:四肢の長骨の骨幹端。前肢では橈骨の遠位と上腕骨の近位、後肢では大腿骨の遠位と脛骨の近位に多く、「肘から遠く、膝に近い」と覚える
  • 症状:跛行、骨の腫れと痛み。骨がもろくなって病的骨折を起こすこともある
  • X線:骨の融解と、腫瘍がつくる新しい骨が入りまじる。骨膜が持ち上げられてできる三角形の影(コッドマン三角)や、放射状に伸びる骨の形成(サンバースト)がみられる。腫瘍は一般に関節を越えない
  • 転移:血行性に肺へ。初診時の胸部X線で肺転移が見えるのは一部だが、多くの犬ではすでに目に見えない微小な転移が起きている
「初診時に肺転移が写らない」=「転移していない」ではない

骨肉腫では、胸部X線で肺転移が見えないことが多い一方、ほとんどの犬に微小な転移があるとされます。「初診時のX線で肺転移が見つかることが多い」は誤りとして問われます。

3. 血管肉腫

  • 由来:血管の内皮細胞の悪性腫瘍
  • 好発:ジャーマン・シェパード・ドッグ、ゴールデン・レトリーバーなどの中高齢の犬
  • 好発臓器:脾臓が最も多く、右心房(右心耳)、肝臓、皮膚・皮下にもできる
  • 破裂と出血:腫瘍は血液をためたもろい血管の塊で、破れやすい。脾臓の腫瘍が破れると腹腔内出血、右心房の腫瘍が破れると心膜液の貯留と心タンポナーデを起こし、急な虚脱で来院することが多い
  • 血液の異常:出血による貧血、腫瘍の異常な血管の中で赤血球が傷ついてできる破砕赤血球、血小板の減少、播種性血管内凝固(DIC)
  • 転移:血行性に肺、肝臓など全身へ広がりやすく、悪性度が高い

4. 組織球性肉腫

  • 由来:組織球(樹状細胞やマクロファージ)の悪性腫瘍
  • 好発:バーニーズ・マウンテン・ドッグ、フラットコーテッド・レトリーバー、ロットワイラー、ゴールデン・レトリーバー
  • 型:関節の周囲などに1か所できる局所型と、肺・脾臓・肝臓・リンパ節などに多数できる播種型
  • 血球貪食性組織球性肉腫:マクロファージに由来し、脾臓や骨髄で増えて赤血球や血小板を食べてしまう。強い貧血と血小板減少を起こし、急速に進行する

若い犬の良性の皮膚組織球腫とは、名前は似ていても別の病気です(皮膚の腫瘍の解説)。

5. 軟部組織肉腫

線維肉腫、末梢神経鞘腫瘍、血管周皮腫など、皮膚の下や筋の間にできる間葉系の悪性腫瘍をまとめた呼び方です。由来は違っても、次の性質が共通しています。

  • 見た目より広い浸潤:周りを押し固めた偽被膜に包まれて境界がはっきりして見えるが、実際には腫瘍細胞がその外側まで入り込んでいる。そのため取り残して局所で再発しやすい
  • 転移:悪性度の低いものが多く、転移は比較的少ない

5-1. 猫の注射部位肉腫

猫では、ワクチンなどを注射した部位に続いた慢性の炎症から、線維肉腫などの悪性腫瘍が生まれることがあります。浸潤性が強く、再発しやすい腫瘍です(発がんのしくみの解説)。

6. 肉腫で国家試験に狙われるポイント

  • 肉腫の共通点:細胞診ではがれにくく紡錘形の細胞がまばら。血行性に肺へ転移しやすい
  • 骨肉腫:大型犬、長骨の骨幹端(肘から遠く、膝に近い)。骨融解と骨新生、コッドマン三角、サンバースト、関節を越えない。肺転移(初診時は微小転移が多い)
  • 血管肉腫:血管内皮由来。脾臓・右心房・肝臓・皮膚。破裂による腹腔内出血・心タンポナーデ。貧血、破砕赤血球、血小板減少、DIC
  • 組織球性肉腫:バーニーズなど。局所型と播種型。血球貪食性の型は急速に進行する
  • 軟部組織肉腫:偽被膜の外まで浸潤し局所で再発しやすい。転移は比較的少ない。猫の注射部位肉腫

7. 肉腫の確認問題

Q1. 肉腫の細胞診で採れる細胞が少ないことが多い理由を述べよ。

A. 肉腫の細胞は結合組織の中にしっかり埋まっていて細胞どうしがはがれにくいため、針で吸引しても紡錘形の細胞がまばらに少数しか採れない。

Q2. 犬の骨肉腫の好発部位を、前肢と後肢に分けて答えよ。

A. 前肢は橈骨の遠位と上腕骨の近位、後肢は大腿骨の遠位と脛骨の近位(いずれも長骨の骨幹端)。

Q3. 骨肉腫のX線でみられるコッドマン三角とは何か。

A. 腫瘍に押されて持ち上げられた骨膜の下に新しい骨ができ、骨の表面との間に三角形の影として写るもの。骨膜反応の一つである。

Q4. 脾臓の血管肉腫の犬が急な虚脱で来院した。考えられる原因と、血液検査で予想される所見を述べよ。

A. 腫瘍の破裂による腹腔内出血。血液検査では出血による貧血、破砕赤血球、血小板の減少がみられ、播種性血管内凝固(DIC)を伴うことがある。

Q5. 軟部組織肉腫が局所で再発しやすい理由を述べよ。

A. 周りを押し固めた偽被膜に包まれて境界がはっきり見えるが、実際には腫瘍細胞がその外側まで浸潤しているため、見た目の境界で切除すると腫瘍細胞が取り残されやすい。

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理解度チェック

詳細な解説

  • 分野別まとめ:腫瘍学 — 腫瘍を由来・性質・広がり方で読み解く考え方と、腫瘍学全体の出題傾向を整理しています。
  • 皮膚の腫瘍 — 細胞診の3つの型と、皮膚組織球腫を扱います。
  • 腫瘍随伴症候群 — 血管肉腫に伴う播種性血管内凝固(DIC)を扱います。
  • 発がんのしくみ — 猫の注射部位肉腫が生まれる背景を扱います。

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月25日/最終更新日:2026年9月25日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。