鶏の主要な感染症|【獣医師国家試験対策】

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鶏は何千羽、何万羽という群で飼われるため、1羽の感染があっという間に群全体へ広がります。国家試験では、高病原性鳥インフルエンザ、ニューカッスル病、マレック病、伝染性ファブリキウス嚢病などが、原因ウイルスの科、特徴的な病変、法律上の扱いとあわせて繰り返し問われています。

本記事では、鶏の感染症を「どこに症状が出るか(全身・呼吸器・神経と腫瘍・免疫・皮膚・腸)」で整理しました。

過去問分析

第73回〜第77回では、次のような形で出題されています。

  • 鳥インフルエンザ:原因ウイルスの科、高病原性になりうる亜型(H5・H7)
  • マレック病:末梢神経の腫大、鶏白血病との見分け(選択肢を含めて9問)
  • そのほか:伝染性ファブリキウス嚢病、鶏伝染性気管支炎、鶏痘、鶏コクシジウム症
この記事で押さえること
  • 高病原性鳥インフルエンザが全身に広がる理由と、家畜伝染病としての扱い
  • ニューカッスル病の呼吸器・神経・消化器の症状と腺胃の出血
  • 呼吸器の病気(鶏伝染性気管支炎、鶏伝染性喉頭気管炎)の違い
  • マレック病の神経の腫大と、伝染性ファブリキウス嚢病の免疫抑制
  • 鶏痘の2つの型と、鶏コクシジウム症の寄生部位

1. 症状が出る場所で整理する

  • 全身(急死・大量死):高病原性鳥インフルエンザ、ニューカッスル病
  • 呼吸器:鶏伝染性気管支炎、鶏伝染性喉頭気管炎、鶏マイコプラズマ病
  • 神経と腫瘍:マレック病、鶏白血病
  • 免疫:伝染性ファブリキウス嚢病
  • 皮膚と粘膜:鶏痘
  • 腸:鶏コクシジウム症

2. 高病原性鳥インフルエンザ

  • 原因:オルトミクソウイルス科のA型インフルエンザウイルス(RNAウイルスの解説)
  • 高病原性になるしくみ:ウイルスが細胞に入るには、表面のHA(ヘマグルチニン)が宿主の酵素で切られて活性化される必要がある。高病原性のウイルスは、HAが全身のどこにでもある酵素で切られる形をしているため、呼吸器や腸にとどまらず全身で増える。H5亜型とH7亜型が高病原性に変わりうる
  • 症状:急な大量死、とさかや肉垂の暗紫色の変色(チアノーゼ)、顔の腫れ、脚の皮下の出血、産卵の急な低下
  • 広がり方:渡り鳥などの野鳥がウイルスを持ち込み、その糞で汚れたものや野生動物を介して鶏舎に入る
  • 法律:家畜伝染病。発生した農場では殺処分と消毒が行われ、周囲の移動が制限される(家畜伝染病予防法の解説)

3. ニューカッスル病

  • 原因:パラミクソウイルス科の鳥のウイルス
  • 症状:強い病原性の株では、呼吸器の症状(あえぎ、咳)、緑色の下痢、神経の症状(首をねじる、脚や翼の麻痺)、産卵の低下と死亡が起こる
  • 病変:腺胃(胃の前の部分)の粘膜の点状出血が特徴的
  • 法律:家畜伝染病(病原性の低いものは届出伝染病)

4. 呼吸器の病気

  • 鶏伝染性気管支炎(コロナウイルス科、届出伝染病):若い鶏では咳やあえぎなどの呼吸器の症状、産卵鶏では産卵の低下と卵殻の異常(殻の薄い卵、形のいびつな卵)が起こる。腎臓を侵す型もある。血清型が多く、ワクチンの型が合わないと防げない
  • 鶏伝染性喉頭気管炎(ヘルペスウイルス科、届出伝染病):首を伸ばして口を開ける強いあえぎと、血のまじった痰。気管に出血性の炎症が起こり、上皮の細胞に核内封入体がみられる
  • 鶏マイコプラズマ病(届出伝染病):ゆっくり進む呼吸器の病気。卵を通じてひなにうつる(介卵感染)

5. マレック病と伝染性ファブリキウス嚢病

5-1. マレック病

  • 原因:ヘルペスウイルス科のウイルス(届出伝染病)
  • 病気の本体:T細胞の腫瘍(リンパ腫)。数週齢からの若い鶏に起こる
  • 症状と病変:坐骨神経などの末梢神経が太く腫れ、片脚を前に、もう片脚を後ろに投げ出した特徴的な麻痺が起こる。目の虹彩の色が抜ける(灰白眼)。内臓や皮膚にも腫瘍ができる
  • 広がり方:羽の根もと(羽包)の上皮で増えたウイルスが、ふけとともに鶏舎内に広がる

鶏白血病(レトロウイルス科、B細胞の腫瘍、ファブリキウス嚢から発生、神経は腫れない)との見分けは、発がんのしくみの解説で扱っています。

5-2. 伝染性ファブリキウス嚢病

  • 原因:ビルナウイルス科のウイルス(届出伝染病)。エンベロープがなく、環境に強い
  • 病気の本体:鶏のB細胞を育てる器官(ファブリキウス嚢)を壊す。3〜6週齢ごろに多い
  • 病変:ファブリキウス嚢が腫れて出血し、その後萎縮する
  • 影響:抗体をつくる力が落ちる免疫抑制が起こり、ほかの感染症にかかりやすくなったり、ワクチンが効きにくくなったりする

6. 鶏痘と鶏コクシジウム症

6-1. 鶏痘

  • 原因:ポックスウイルス科のウイルス(届出伝染病)。蚊が運ぶほか、傷口からもうつる
  • 皮膚型:とさかや肉垂など、羽のない皮膚にいぼ状のかさぶたができる
  • 粘膜型(ジフテリー型):口や気管の粘膜に黄白色の膜がはりつき、呼吸困難を起こす
  • 病理:上皮の細胞の細胞質内に封入体がみられる(ポックスウイルスは細胞質で増えるため)

6-2. 鶏コクシジウム症

  • 原因:原虫のアイメリア。種類によって寄生する腸の場所が決まっている
  • 代表:盲腸に寄生する種(Eimeria tenella)では、盲腸からの出血で血便を出して死亡する
  • 起こりやすい条件:若い鶏の、床で飼われている群。糞の中のオーシストを口にしてうつる(超簡単まとめ「原虫」)

7. 鶏の感染症で国家試験に狙われるポイント

  • 高病原性鳥インフルエンザ:オルトミクソ、H5・H7、HAが全身の酵素で切られて全身感染、大量死、野鳥が持ち込む、家畜伝染病
  • ニューカッスル病:パラミクソ、呼吸器・緑色便・神経症状、腺胃の出血、家畜伝染病
  • 鶏伝染性気管支炎:コロナ、産卵低下と卵殻の異常、血清型が多い
  • 鶏伝染性喉頭気管炎:ヘルペス、血痰、気管の出血性炎、核内封入体
  • マレック病:ヘルペス、T細胞リンパ腫、末梢神経の腫大、灰白眼、羽包からふけで広がる
  • 伝染性ファブリキウス嚢病:ビルナ、ファブリキウス嚢の破壊、免疫抑制
  • 鶏痘:ポックス、蚊、皮膚型と粘膜型、細胞質内封入体
  • 鶏コクシジウム症:アイメリア、種ごとに寄生部位、盲腸の種で血便

8. 鶏の感染症の確認問題

Q1. 高病原性鳥インフルエンザウイルスが全身で増える理由を、HAに注目して述べよ。

A. ウイルスが細胞に入るにはHAが宿主の酵素で切られる必要があるが、高病原性のウイルスのHAは全身のどこにでもある酵素で切られる形をしているため、呼吸器や腸にとどまらず全身で増える。

Q2. ニューカッスル病で特徴的な消化管の病変を答えよ。

A. 腺胃の粘膜の点状出血。

Q3. 産卵鶏で産卵の低下と、殻の薄い卵や形のいびつな卵がみられた。考えられるコロナウイルス科の病気は何か。

A. 鶏伝染性気管支炎。

Q4. マレック病で脚の麻痺が起こる理由と、ウイルスが鶏舎に広がるしくみを述べよ。

A. T細胞の腫瘍が坐骨神経などの末梢神経に入り込んで神経が腫れるため。ウイルスは羽の根もとの上皮で増え、ふけとともに鶏舎内に広がる。

Q5. 伝染性ファブリキウス嚢病にかかった鶏で、ワクチンが効きにくくなる理由を述べよ。

A. ウイルスがB細胞を育てる器官であるファブリキウス嚢を壊すため、抗体をつくる力が落ちる(免疫抑制)から。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年10月2日/最終更新日:2026年10月2日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。