犬と猫の繁殖|【獣医師国家試験対策】

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犬と猫の繁殖は、牛とは違う独特のしくみをもっています。犬は妊娠していなくても黄体の働きが約2か月続き、猫は交尾の刺激で排卵します。国家試験では、この特徴から生まれる偽妊娠、子宮蓄膿症、交配の適期などが問われています。

本記事では、犬と猫それぞれについて、「性周期 → 交配と妊娠 → 分娩 → 病気」の順に一続きで整理しました。

過去問分析

過去の出題では、次の形式が問われています。

  • 犬:性周期とホルモン、子宮蓄膿症、卵巣子宮摘出術、乳腺腫瘍と避妊手術
  • 猫:プロジェステロンの働き、交尾排卵、乳腺の病気
この記事で押さえること
  • 犬の性周期の4つの時期と、妊娠の有無にかかわらず約2か月続く黄体期
  • 犬の卵子は未熟なまま排卵され、卵管の中で成熟すること(交配の適期)
  • 腟スメアで発情の時期を見分けること
  • 犬の子宮蓄膿症が発情休止期に起こる理由と、多飲多尿のしくみ
  • 分娩前の体温の低下、産褥性テタニー、前立腺肥大症
  • 猫の季節性の発情と交尾排卵

1. 犬の性周期

犬は、1回の発情期に1回だけ排卵する単発情の動物で、発情はおよそ年に2回(5〜12か月ごと)です。性周期は次の4つの時期に分かれます。

  • 発情前期(約9日):外陰部が腫れ、血のまじった分泌物が出る。雄を引きつけるが、交配は許さない。卵胞が育ち、エストロジェンが上がる
  • 発情期(約9日):雄を受け入れる。エストロジェンが下がり、LHサージが起こって排卵する。犬では、排卵の前から卵胞が黄体化し始め、プロジェステロンが排卵前から上がる
  • 発情休止期(約2か月):黄体がプロジェステロンを出す。妊娠していてもいなくても、黄体の働きはほぼ同じ長さ続く
  • 無発情期(数か月):卵巣が休んでいる時期
犬の黄体は「妊娠していなくても続く」

牛などでは、妊娠しなければ子宮がPGF2αを出して黄体を退行させます。犬ではこのしくみが働かないため、妊娠していなくても約2か月、プロジェステロンが出続けます。これが、犬の偽妊娠と子宮蓄膿症の背景になります。

2. 犬の交配と妊娠

2-1. 排卵と交配の適期

排卵はLHサージのおよそ2日後に起こります。犬の卵子は未熟な状態(一次卵母細胞)で排卵され、卵管の中で2〜3日かけて成熟してから受精できるようになります。そのため、交配の適期は排卵の2〜3日後、つまりLHサージから4〜6日後です。血中のプロジェステロンの上がり方を測って、排卵の時期を推定します。

2-2. 腟スメア

腟の粘膜の細胞は、エストロジェンの影響で厚くなり、表面の細胞が角化します。

  • 発情前期から発情期:角化した表層の細胞が増え、発情期にはほとんどが角化細胞になる
  • 発情休止期の始まり:角化細胞が急に減り、小さな中間の細胞や傍基底細胞と、好中球が再び現れる

2-3. 偽妊娠

妊娠していないのに、黄体期の終わりに黄体が退行してプロラクチンが上がることで、乳腺が張って乳が出る、巣づくりをする、おもちゃを子のように扱うといった妊娠のような変化がみられます。犬では、ほぼすべての雌で程度の差はあれ起こるとされます。

2-4. 妊娠と妊娠診断

  • 妊娠期間:排卵からおよそ63日
  • 胎盤:子宮を帯のように取り巻く帯状胎盤
  • 超音波検査:妊娠25日ごろから胎嚢が見える
  • X線検査:妊娠45日ごろ以降、胎子の骨が写り、胎子の数を数えられる
  • リラキシン:胎盤がつくるホルモンで、妊娠している犬だけで上がる。偽妊娠と見分けられる

3. 犬の分娩

分娩の前にプロジェステロンが下がると、直腸の温度が約1℃下がり、およそ12〜24時間後に分娩が始まります。短頭種や、胎子が1頭だけで大きく育った場合などは、難産になりやすくなります。

3-1. 産褥性テタニー(子癇)

分娩後1〜4週の授乳期に、とくに小型犬で起こる低カルシウム血症です。乳に多くのカルシウムが出ていくのに、上皮小体ホルモンによる補充が追いつかないために起こります。パンティング、震え、歩き方の異常から、けいれんや高体温に進みます。

4. 犬の病気

4-1. 子宮蓄膿症

  • 好発:中高齢の未避妊の雌犬。発情休止期(発情が終わって1〜2か月後)に多い
  • しくみ:発情休止期にプロジェステロンが続くと、子宮内膜が厚くなり(嚢胞性子宮内膜過形成)、分泌が増え、子宮の筋の動きと免疫の働きが弱まる。そこに腟から細菌(主に大腸菌)が入って増える
  • 開放性と閉鎖性:子宮頸管が開いていて膿が外に出る開放性と、閉じていて膿がたまる閉鎖性がある。閉鎖性のほうが気づかれにくく、重症になりやすい
  • 症状:元気・食欲の低下、嘔吐、発熱、多飲多尿、白血球の著しい増加。子宮が破れて腹膜炎や敗血症を起こすことがある
  • 多飲多尿のしくみ:大腸菌の内毒素が、腎臓の集合管で抗利尿ホルモンの働きを弱め、尿を濃くできなくなる

4-2. 前立腺肥大症

未去勢の中高齢の雄犬で、アンドロゲン(ジヒドロテストステロン)の働きで前立腺が左右対称に大きくなります。直腸を圧迫して排便しにくくなったり、血尿が出たりします。アンドロゲンに依存するため、去勢すると前立腺は小さくなります。

4-3. 潜在精巣

精巣が陰嚢に下りずに腹腔や鼠径部に残る状態で、遺伝が関わります。残った精巣は腫瘍(セルトリ細胞腫など)が起こりやすくなります(生殖器と乳腺の腫瘍の解説)。

5. 猫の繁殖

5-1. 季節性の発情

猫は、日が長くなる時期に発情を繰り返す季節性多発情の動物です。発情期には、大きな声で鳴く、床を転がる、腰を持ち上げる姿勢をとるといった行動がみられます。排卵しなければ、1〜3週ごとに発情が繰り返されます。

5-2. 交尾排卵

猫は、交尾の刺激が神経を通じて視床下部に伝わり、LHサージが起こってはじめて排卵する交尾排卵(誘起排卵)の動物です。1回の交尾では排卵しないこともあり、交尾を繰り返すと排卵しやすくなります。

5-3. 妊娠と偽妊娠

  • 妊娠期間:およそ63〜65日。胎盤は犬と同じ帯状胎盤
  • 偽妊娠:交尾などで排卵したが妊娠しなかった場合、黄体が1か月あまり働いてから次の発情が来る。犬と違い、乳腺の症状や行動の変化はあまり目立たない
  • 乳腺の病気:若い猫や、黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響を受けた猫では、乳腺が急に大きく腫れる線維腺腫様過形成が起こる(生殖器と乳腺の腫瘍の解説)

6. 犬と猫の繁殖で国家試験に狙われるポイント

  • 犬の性周期:単発情、年約2回。発情前期(約9日)→ 発情期(約9日)→ 発情休止期(約2か月)→ 無発情期
  • 犬の黄体:妊娠の有無にかかわらず約2か月。子宮のPGF2αによる退行がない。プロジェステロンは排卵前から上がる
  • 犬の排卵:LHサージの約2日後、一次卵母細胞で排卵し卵管内で2〜3日かけて成熟
  • 腟スメア:発情期は角化細胞が主体。発情休止期に入ると中間・傍基底細胞と好中球
  • 妊娠:約63日、帯状胎盤。X線で胎子の数(約45日以降)、リラキシンで妊娠を確認
  • 分娩:プロジェステロンが下がり体温が約1℃下がる
  • 子宮蓄膿症:未避妊の中高齢、発情休止期、嚢胞性子宮内膜過形成+大腸菌、内毒素による多飲多尿
  • 産褥性テタニー:授乳期の小型犬の低カルシウム血症
  • 猫:季節性多発情、交尾排卵、妊娠約63〜65日

7. 犬と猫の繁殖の確認問題

Q1. 犬で、妊娠していなくても黄体期が約2か月続く理由を述べよ。

A. 犬では、妊娠しなかったときに子宮がPGF2αを出して黄体を退行させるしくみが働かないため、黄体が妊娠したときとほぼ同じ長さプロジェステロンを出し続けるから。

Q2. 犬の交配の適期が、LHサージから4〜6日後とされる理由を述べよ。

A. 犬はLHサージの約2日後に排卵するが、卵子は一次卵母細胞の未熟な状態で排卵され、卵管の中で2〜3日かけて成熟してから受精できるようになるため。

Q3. 犬の子宮蓄膿症が発情休止期に起こりやすい理由を述べよ。

A. 発情休止期にはプロジェステロンが続き、子宮内膜が厚くなって分泌が増え、子宮の筋の動きと免疫の働きが弱まるため、腟から入った大腸菌などが増えやすくなるから。

Q4. 子宮蓄膿症の犬で多飲多尿がみられるしくみを述べよ。

A. 大腸菌の内毒素が、腎臓の集合管で抗利尿ホルモンの働きを弱めるため、尿を濃くできなくなり、尿量が増えて水を多く飲むようになる。

Q5. 猫の排卵の特徴を述べよ。

A. 交尾の刺激が神経を通じて視床下部に伝わり、LHサージが起こってはじめて排卵する交尾排卵(誘起排卵)である。1回の交尾では排卵しないこともある。

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詳細な解説

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本記事は獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。