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皮膚疾患は、皮疹の形と、検査で見える像(皮膚掻爬・細胞診・病理組織)から原因を当てる分野です。外貌の写真、皮膚掻爬で見つかった虫体、細針吸引の細胞像、病理組織像を示して疾患名を問う問題が、実地試験で繰り返し出題されています。
本ページでは、皮疹の用語と検査の使い分けを軸に、皮膚の構造と病理の用語、殺ダニ薬や抗真菌薬の作用機序を整理し、免疫介在性・寄生虫と真菌・腫瘍・内分泌性の皮膚疾患の詳細へ案内します。
皮膚疾患は、写真を見て疾患名を答える形の問題が多く、実地試験のビジュアル問題として好まれるテーマです。
本ページの出題傾向は、第73回〜第77回(全1,650問)を編集部が分野別に分類集計したものです。
1. 皮膚疾患の出題傾向
- 免疫介在性の皮膚疾患:落葉状天疱瘡、エリテマトーデス、多形紅斑などの病理組織像と疾患名の組み合わせ。無菌性結節性脂肪織炎の細胞診像、アトピー性皮膚炎
- 寄生虫と真菌:疥癬、毛包虫症(ニキビダニ)、皮膚糸状菌症の虫体・菌の像と、薬の作用
- 皮膚の腫瘍:肥満細胞腫の異染性、皮膚組織球腫の自然退縮、扁平上皮癌、皮膚リンパ腫のポートリエ微小膿瘍
- 内分泌性の皮膚徴候:クッシング症候群やセルトリ細胞腫による左右対称性の脱毛
- 皮膚病理の基礎:原発疹と続発疹の区別。学説試験で定期的に出題される
2. 皮疹と検査の像から原因を当てる
2-1. 原発疹と続発疹
病気が最初に皮膚につくる変化を原発疹、原発疹が変化したり、掻いたりして後からできる変化を続発疹といいます。
- 原発疹:斑(色の変化だけ)、丘疹(小さな盛り上がり)、局面(平たく広い盛り上がり)、膿疱(膿を含む)、水疱(透明な液を含む)、膨疹(一時的なむくみ)、結節・腫瘤(深い大きなしこり)
- 続発疹:鱗屑(ふけ)、痂皮(かさぶた)、びらん(表皮の浅い欠損)、潰瘍(真皮に達する欠損)、苔癬化(皮膚が厚く硬くなる)、色素沈着、表皮小環(膿疱が破れた跡の輪状の鱗屑)、瘢痕
くわしくは皮膚病理の読み方と自己免疫性皮膚疾患の解説で扱っています。
2-2. 検査の使い分け
- 皮膚掻爬検査:ダニを探す。毛包の中にいるニキビダニは深く、角質層にトンネルを掘る疥癬のダニは浅く広く掻爬する
- 被毛検査とウッド灯:皮膚糸状菌を探す。犬猫のMicrosporum canisでは、感染した被毛の一部が紫外線で黄緑色に光る
- テープ・押捺の細胞診:皮膚表面の細菌やマラセチアを見る
- 細針吸引(FNA):しこりの細胞を吸って見る。肥満細胞腫や皮膚組織球腫など、腫瘍の見分けに使う
- 皮膚生検(病理組織):天疱瘡やエリテマトーデスなど、表皮のどこで何が起きているかを見る必要がある病気の確定に使う
3. 学説A対策 — 皮膚の構造と病理の用語
3-1. 皮膚の構造
表皮は外側から角質層・顆粒層・有棘層・基底層の4層で、基底層の下の基底膜を隔てて真皮、その下に皮下組織(脂肪織)が続きます。角化細胞どうしはデスモソームという接着装置でつながっています。毛包・皮脂腺・アポクリン汗腺は、表皮から真皮へ落ち込んだ付属器です。
3-2. 病理組織の用語
- 棘融解:デスモソームの結合が失われ、角化細胞がばらばらになって丸くなる。天疱瘡の特徴
- 境界部皮膚炎:表皮と真皮の境目(基底層)に炎症が集中する。エリテマトーデスやぶどう膜皮膚症候群でみられる
- 角化細胞のアポトーシス:表皮の中に、縮んで好酸性になった細胞が散らばる。多形紅斑の特徴
- 異染性(メタクロマジー):トルイジンブルーで染めると、肥満細胞の顆粒が色素本来の青ではなく赤紫に染まる。顆粒のヘパリンなどによる(染色法と細胞の同定の解説)
- ポートリエ微小膿瘍:表皮の中に腫瘍性のリンパ球が小さく集まったもの。上皮向性のT細胞リンパ腫の特徴
4. 学説B対策 — 皮膚で使う薬の作用機序
本ページでは作用機序までを扱い、用量や使い分けは扱いません。
- イベルメクチン:ダニや線虫のグルタミン酸作動性のClチャネルを開き、神経や筋を過分極させて麻痺させる。哺乳類ではこの作用が脳の血液脳関門で守られているが、MDR1遺伝子に変異のある犬(コリーなど)では脳にたまって中毒を起こす(神経疾患の分野別まとめ)
- イソキサゾリン系:ダニや昆虫のGABA作動性・グルタミン酸作動性のClチャネルを阻害し、神経を過剰に興奮させて殺す
- アミトラズ:ダニのオクトパミン受容体を刺激する。哺乳類ではα2受容体に作用し、鎮静や徐脈、高血糖を起こすことがある
- アゾール系抗真菌薬:真菌の細胞膜の成分であるエルゴステロールの合成を阻害する
- グリセオフルビン:真菌の細胞分裂(微小管)を妨げる。催奇形性があるため妊娠動物では問題になる
5. 重要テーマ別の詳細解説
犬・猫皮膚病理の読み方と自己免疫性皮膚疾患
落葉状天疱瘡、エリテマトーデス、多形紅斑、ぶどう膜皮膚症候群を、表皮のどの層で、何が壊れているかで見分けます。原発疹と続発疹の区別もあわせて扱います。
犬アトピー性皮膚炎と無菌性結節性脂肪織炎
アトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲンに対するIgEを介したI型過敏症と、皮膚のバリアの弱さが重なって起こる、痒みの強い皮膚炎です。顔、耳、腋、指の間、腹に出やすいのが特徴です(解説ブック006、アレルギーの解説)。無菌性結節性脂肪織炎は、ダックスフンドなどで皮下に多数のしこりができ、破れて瘻孔になる病気です。細胞診では泡沫状のマクロファージと好中球がみられ、細菌は見つかりません。
犬・猫・牛疥癬・毛包虫症と皮膚糸状菌症
痒みの強い疥癬、毛包の中で増えるニキビダニ、円形の脱毛をつくる皮膚糸状菌を、検査のしかたと見える像で見分けます。
犬内分泌性の脱毛
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群):体幹の左右対称性の脱毛、皮膚が薄くなる、真皮に石灰が沈着する皮膚石灰沈着症(犬のクッシング症候群の解説)
- 甲状腺機能低下症:尾の脱毛(ラットテール)、脂漏、むくんだ悲しげな顔つき(犬の甲状腺機能低下症の解説)
- セルトリ細胞腫:精巣の腫瘍がエストロジェンを過剰につくり、左右対称性の脱毛、乳頭の発達や包皮の下垂といった雌性化、骨髄の抑制を起こす。潜在精巣で発生しやすい
いずれも痒みが少なく、左右対称性の脱毛が手がかりになります。
6. 学習教材
理解度チェック
- むずかしい:推理ラボ — ズーノーシス推理ラボで疥癬や皮膚糸状菌症などの人獣共通感染症を、臓器病理推理ラボで肥満細胞腫などの病理所見を見分けます
詳細な解説
- 解説ブック:犬のアトピー性皮膚炎 — 発症の仕組みから診断までを体系的に扱います
- 解説ブック:猫の皮膚トラブル(好酸球肉芽腫症候群編)・(痤瘡編) — 猫に特有の皮膚疾患を扱います
- 超簡単まとめ:かんたん組織学 — 肥満細胞と異染性、皮膚の組織を図解で確認できます
- アレルギー(Ⅰ〜Ⅳ型) — 天疱瘡やアトピー性皮膚炎の免疫学的な背景を扱います
7. 皮膚疾患の勉強法 ― おすすめの学習順序
- 用語と検査:本ページ第2章で、原発疹と続発疹、検査の使い分けを押さえる
- 構造と病理:第3章で表皮の4層と病理の用語を覚え、自己免疫性皮膚疾患の記事で「どの層で何が壊れるか」を確認する
- 寄生虫と真菌:検査の像と薬の作用点をセットで覚える
- 腫瘍:細胞診の見え方で見分ける練習をする
- 内分泌性の脱毛:クッシング症候群と甲状腺機能低下症の記事で、全身の病気の一部として確認する
皮膚は内科学を構成する領域のひとつです。ほかの領域を含めた内科学全体の出題傾向は、臨床獣医学 > 内科のページで整理しています。
参考文献
- 新獣医内科学 文永堂出版
- 犬と猫の治療ガイド インターズー
- 伴侶動物治療指針 緑書房
- CAP 緑書房
- SA Medicine インターズー
- 新編 家畜薬理学 養賢堂
- 動物病理学各論 文永堂出版
- 農林水産省 獣医師国家試験(公式)