外科学|【獣医師国家試験対策】

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外科学は、組織がどのように治るかを知り、その治り方を助ける原理を学ぶ分野です。国家試験では、骨折の分類とX線像、関節の病気、創傷の治り方、縫合と滅菌、大動物の跛行が繰り返し出題されています。

本ページでは、手術の手順には立ち入らず、「なぜそう治るのか」「なぜその原理が必要なのか」を軸に整理し、重要テーマの詳細へ案内します。麻酔は麻酔学の分野別まとめで別に扱っています。

過去問分析に基づく出題傾向
出題割合約4%
出題数の目安約13問
主な出題動物種犬・猫・牛・馬

骨折はほぼ毎回出題され、成長板の骨折の分類、骨折の形、骨折に伴う神経の損傷が問われています。必須問題では滅菌法や縫合法、学説試験では関節の病気や創傷の治り方、実地試験ではX線像から骨折や関節の異常を読み取らせる問題が中心です。

本ページの出題傾向は、第73回〜第77回(全1,650問)を編集部が分類集計したものです。

1. 外科学の出題傾向

  • 骨折:成長板の骨折の分類(ソルター・ハリス分類)、螺旋骨折、大腿骨頸部の骨折、骨折の固定の原理、骨折に伴う橈骨神経・坐骨神経の損傷
  • 関節と発育期の骨の病気:股関節形成不全、先天性肘関節脱臼、骨軟骨腫症
  • 創傷・縫合・滅菌:高圧蒸気滅菌、垂直マットレス縫合、湿潤環境での創傷治癒、皮膚の張力線
  • 軟部組織の外科:会陰ヘルニア、尿道結石、手術後の合併症
  • 大動物:牛の蹄底潰瘍・白帯病、馬の浅屈腱炎、馬の中手骨・手根骨の骨折

2. 外科の3つの原理

  • 無菌:手術の傷は、細菌が入り込むと治らない。器具の滅菌と、術野と手指の消毒で、細菌を持ち込まない
  • 組織をいたわる:組織は血流によって治る。組織を強くつかんだり、糸をきつく締めすぎたりすると血流が失われ、治りが悪くなる。死んだ組織、出血、すき間(死腔)は感染の温床になる
  • 力学:傷や骨折は、かかる力に抵抗できる強さで支えなければ治らない。縫合の張力、骨折の固定は、どの力に対抗するかで考える
学習のコツ

外科の問題の多くは、この3つの原理のどれかで説明できます。「この縫合法はなぜ使うのか」「この骨折はなぜこう固定するのか」と迷ったら、細菌・血流・力のどれに関わるかを考えてください。

3. 学説A対策 — 組織の治り方と外科の基本

3-1. 創傷治癒

傷は炎症期 → 増殖期 → 成熟期の順に治ります。縫い合わせた清潔な傷は一次癒合、開いたままの傷は肉芽組織が埋めて縮みながら治る二次癒合で治ります。傷の表面を乾かさない湿潤環境では、上皮の細胞が移動しやすく、治りが早くなります(創傷治癒と縫合・滅菌の詳細解説)。

3-2. 骨癒合

骨は、骨片がすき間なく強固に固定されると仮骨をつくらずに直接つながり(一次癒合)、骨片にわずかな動きがあると仮骨を経てつながります(二次癒合)(骨折と骨癒合の詳細解説)。

3-3. 滅菌と消毒

滅菌は芽胞も含めてすべての微生物を死滅させること、消毒は病原微生物を害のない程度まで減らすことです。器具の滅菌には、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)が最も広く使われ、熱に弱い器具には酸化エチレンガスなどが使われます。

3-4. 縫合糸と縫合法

縫合糸は、体内で分解される吸収性か残る非吸収性か、1本の単糸か細い糸を編んだ編み糸かで性質が変わります。縫合法は、単純結節縫合を基本に、張力を分散させるマットレス縫合などを使い分けます。

4. 学説B対策 — 骨折の見方と固定の原理

  • 骨折の分類:皮膚が破れているか(開放骨折・閉鎖骨折)、骨折線の形(横骨折・斜骨折・螺旋骨折・粉砕骨折・裂離骨折)、成長板にかかるか(ソルター・ハリス分類)
  • 固定の原理:骨折部にかかる曲げ・ねじれ・圧縮・牽引の力のうち、どれに対抗するかで固定のしかたを考える。筋に引っ張られて離れようとする骨片には、その引っ張る力を骨折面を押しつける力に変えるテンションバンドワイヤー法の原理が使われる
  • 神経の損傷:上腕骨の骨折では橈骨神経、骨盤や大腿骨の骨折では坐骨神経が傷みやすい

5. 重要テーマ別の詳細解説

犬・猫骨折と骨癒合

骨折の分類、成長板の骨折(ソルター・ハリス分類I〜V型)、骨癒合の過程、固定の原理、骨折に伴う神経の損傷を解説します。

→ 骨折と骨癒合の詳細解説を読む

犬犬の関節と発育期の骨の病気

股関節形成不全、レッグ・カルベ・ペルテス病、離断性骨軟骨症、肘関節の異常、前十字靱帯断裂、膝蓋骨脱臼、汎骨炎を、好発する犬の大きさと年齢で整理します。

→ 犬の関節と発育期の骨の病気の詳細解説を読む

共通創傷治癒と縫合・滅菌

創傷治癒の3つの段階、一次癒合と二次癒合、湿潤環境、縫合糸の性質と縫合法、滅菌法と消毒薬の違いを解説します。

→ 創傷治癒と縫合・滅菌の詳細解説を読む

牛・馬大動物の跛行と蹄の病気

牛の蹄底潰瘍・白帯病・趾皮膚炎・趾間腐爛・蹄葉炎と、馬の浅屈腱炎、管骨の骨膜炎と骨折、手根骨の骨折、蹄葉炎を解説します。

→ 大動物の跛行と蹄の病気の詳細解説を読む

犬・猫ヘルニアと軟部組織の外科

  • 会陰ヘルニア:未去勢の高齢の雄犬に多く、骨盤の出口をふさぐ筋(骨盤隔膜)が萎縮して弱くなり、直腸や膀胱が会陰部に飛び出す。排便困難が主な症状
  • 横隔膜ヘルニア:交通事故や落下による外傷性のものと、生まれつき腹膜腔と心膜腔がつながっている腹膜心膜横隔膜ヘルニアがある。X線で胸腔に消化管のガス像が見える(呼吸器疾患の分野別まとめ)
  • 鼠径ヘルニア・臍ヘルニア:腹壁のすき間から腹腔の内容が出る。腸が締めつけられると(嵌頓)、血流が止まって壊死する

そのほか、胃拡張・胃捻転症候群は胃拡張・捻転症候群の解説、尿道結石は尿石症の解説、椎間板ヘルニアは椎間板ヘルニアの解説、短頭種の気道は短頭種気道症候群の解説で扱っています。

6. 学習教材

関連する教材

7. 外科学の勉強法 ― おすすめの学習順序

  1. 3つの原理:本ページ第2章で、無菌・組織をいたわる・力学の考え方をつかむ
  2. 治り方:創傷治癒と骨癒合の過程を押さえる
  3. 骨折:分類と固定の原理、神経の損傷を、X線像と結びつけて覚える
  4. 関節:犬の大きさと年齢で、関節と発育期の骨の病気を整理する
  5. 大動物:牛の蹄の病気と馬の跛行で仕上げる
関連する分野

臓器ごとの病気は臨床獣医学 > 内科のページから、麻酔は麻酔学の分野別まとめから進めます。

参考文献

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
本ページは獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。