内科学|【獣医師国家試験対策】

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内科学は、獣医師国家試験において単独で最大の配点をもつ分野です。とくに実地試験C・Dでは、血液検査データ・X線・超音波・心電図を提示して疾患を特定させる症例問題が集中します。

この形式で問われる以上、疾患名を覚えているだけでは1点も取れません。必要なのは「疾患名」と「検査値」と「画像所見」と「治療薬」を相互に変換できる状態です。本ページでは、内科学全体の出題傾向を整理したうえで、この変換を可能にする検査値の読み方と、器官系を横断する症候からの絞り込みを解説します。

過去問分析に基づく出題傾向
出題割合約15〜20%
出題数の目安50〜65問
臨床獣医学全体では約35〜40%

内科学は「臨床獣医学」という大きな括りに含まれ、この括り全体では試験の約35〜40%を占めます。内科学はそのなかで最も配分が多い中核分野です。

「疾患名」-「特徴的な臨床検査値(血液・尿)」-「画像診断」-「治療薬」の組み合わせを整理しておくことが、合格への最短経路となります。

本ページの出題傾向は、第73回〜第77回獣医師国家試験を編集部が分野別に分類集計したものです。

1. 試験区分別の出題傾向

試験区分出題数の目安問われる内容
必須問題
(50問中)
約5問前後各器官系の代表的疾患の徴候、尿検査・血液検査の基本的な解釈
学説試験A
(80問中)
数問程度基礎・応用系が中心だが、内科学に関わる生理機能や病態生理の基礎知識が出題される
学説試験B
(80問中)
約10〜15問疾患の定義・原因・治療薬の選択。外科学・繁殖学などの臨床科目と同一セクション
実地試験C・D
(120問中)
約35〜45問内科学の配分が最も高いセクション。血液検査、X線・超音波画像、心電図を用いた症例問題

臨床分野(内科・外科・繁殖・伝染病)だけで実地試験の約7〜8割を占め、そのなかでも内科学の比重が最大です。実地試験の対策は、そのまま内科学の対策とほぼ同義と考えて差し支えありません。

2. 内科は「4点セット」で問われる

実地試験の症例問題は、次の4つの要素のうちいくつかを提示して、残りを答えさせるという構造をしています。

学習の基本単位

疾患名 ← → 特徴的な検査値 ← → 画像所見 ← → 治療

疾患を一つ覚えるときは、必ずこの4点をセットで押さえてください。「第四胃変位」だけを覚えても、「低Cl・低K血症と代謝性アルカローシスを呈する牛」という設問には答えられません。逆に4点が結びついていれば、どこから提示されても残りを導けます。

3. 主要疾患の4点セット一覧

各器官系の代表的疾患を、4点セットの形式で整理しました。縦に読めば疾患の理解、横に読めば検査値からの逆引きができます。

疾患特徴的な検査値画像・身体所見治療の要点
消化器
牛の第四胃変位 低Cl・低K血症、代謝性アルカローシス、奇異性酸性尿 左第9〜12肋間の金属音、超音波で第一胃と左腹壁の間に第四胃 生理食塩水+KCl、外科的整復と固定
牛の第一胃アシドーシス 代謝性アシドーシス、D-乳酸上昇、ルーメン液pH 5.0未満・原虫消失 ルーメン内容の液状化、後の鼻出血(後大静脈血栓症) 重炭酸ナトリウム、ルーメン洗浄
犬のGDV 血中乳酸上昇(変化率が予後を反映) 右側横臥位X線でコンパートメント化 前肢からの輸液、減圧、整復と胃固定術
犬のEPI cTLI著明低値、コバラミン低下・葉酸上昇 特異的所見に乏しい。多食にもかかわらず削痩 膵酵素補充+コバラミン補充
猫の巨大結腸症 脱水、電解質異常(低K・高Ca が誘因にも) X線で結腸拡張(L5椎体長との比)、硬い糞塊の触知 摘便、ラクツロース、モサプリド、結腸亜全摘
内分泌・代謝
クッシング症候群 ALP著明上昇、ストレスリューコグラム、高コレステロール 超音波で両側副腎腫大(PDH)/片側腫大+対側萎縮(ADH) トリロスタン(3β-HSD の可逆的阻害)
アジソン病 高K・低Na、Na/K比低下、ストレスリューコグラムの欠如 X線で小心臓、超音波で両側副腎萎縮。ショックなのに徐脈 生理食塩水、フルドロコルチゾン/DOCP
糖尿病 持続的高血糖、尿糖、フルクトサミン上昇 犬では白内障、猫では蹠行姿勢 インスリン、食事療法。ソモジー効果では減量
猫の甲状腺機能亢進症 T4上昇、ALT・ALP上昇、BUN・Cre は見かけ上正常 頸部腹側に甲状腺腫を触知、頻脈・奔馬調律 抗甲状腺薬、放射性ヨウ素、手術
犬の甲状腺機能低下症 高コレステロール血症、非再生性貧血、fT4低値+cTSH高値 左右対称性・非掻痒性脱毛、粘液水腫、徐脈 レボチロキシン(T4製剤)の生涯補充
血液・免疫
免疫介在性溶血性貧血(IMHA) 再生性貧血、球状赤血球、自己凝集、高ビリルビン血症 超音波で脾腫、粘膜蒼白と黄疸の併存 免疫抑制療法、診断時からの抗血栓療法
バベシア症 再生性貧血、血小板減少。球状赤血球・自己凝集を呈しうる 発熱、脾腫。塗抹で赤血球内に原虫 抗原虫薬。B. gibsoni にはアトバコン+アジスロマイシン
一次止血の異常(vWD・血小板減少症) 血小板数、BMBT延長、vWF:Ag低下(vWD) 点状出血、粘膜出血、鼻出血 vWDはクリオプレシピテート/DDAVP、ITPは免疫抑制療法
二次止血の異常(血友病A・B) APTT延長・PT正常。個別の凝固因子活性が低下 血腫、関節内出血、体腔内出血 新鮮凍結血漿。血友病Aにはクリオプレシピテート
播種性血管内凝固(DIC) 血小板減少、PT・APTT延長、FDP/Dダイマー上昇、AT低下 点状出血、基礎疾患の所見 基礎疾患の治療が最優先
腎泌尿器
慢性腎臓病(CKD) SDMA上昇が先行、等張尿、BUN・Cre上昇、高リン血症、非再生性貧血 超音波で腎の萎縮・エコー輝度上昇。高血圧による網膜剥離 リン制限食、リン吸着剤、降圧治療、輸液
尿石症 尿pH(ストルバイトはアルカリ性、シュウ酸Caは酸性)、尿沈渣の結晶 X線で描出(尿酸塩・シスチンは写らない ストルバイトは溶解可能、シュウ酸Caは外科的摘出
猫の多発性嚢胞腎(PKD) 進行するとCKDの所見。PKD1遺伝子検査で確定 超音波で腎実質内に多発する無エコー嚢胞 根治療法なし。CKDに準じた管理と繁殖からの除外
猫の尿道閉塞 高K血症、代謝性アシドーシス、高窒素血症 膀胱の緊満、心電図でT波尖鋭化・徐脈 閉塞解除(逆行性尿道水圧推進法)、輸液、高K血症への対応

4. 検査値の読み方

4-1. 単独では読まない — 組み合わせて読む

原則

検査値は単独では意味が確定しません。かならず別の項目と組み合わせて読みます。もっとも典型的なのが高窒素血症と尿比重の組み合わせです。

BUN・Cre尿比重解釈
上昇高比重(濃縮尿)腎前性。脱水や循環血液量減少。腎は正常に働いている
上昇等張尿腎性。濃縮能が失われている
上昇さまざま腎後性。尿路閉塞・破裂。膀胱の触診と画像で確認

この原則の応用として、「脱水しているのに尿比重が低い」という所見は強い異常です。慢性腎臓病のほか、アジソン病(髄質洗い出し)、クッシング症候群(ADH作用の拮抗)、高カルシウム血症を疑います。

4-2. 生化学検査 — 上下の意味

項目上昇するとき低下するとき
ALP犬ではステロイド誘導性が大きい(クッシング、ステロイド投与)。胆汁うっ滞、若齢の骨成長
ALT肝細胞の傷害
BUN腎機能低下のほか、消化管出血、高蛋白食、脱水肝不全、門脈体循環シャント、低蛋白食
コレステロール甲状腺機能低下症、クッシング、ネフローゼ症候群、胆汁うっ滞肝不全、EPI、消化吸収不良、門脈体循環シャント
カリウムアジソン病、尿路閉塞・破裂、急性腎障害、重度アシドーシス第四胃変位、慢性腎臓病(猫)、利尿薬、インスリン投与後
カルシウム腫瘍(リンパ腫、肛門嚢アポクリン腺癌)、原発性上皮小体機能亢進症、アジソン病産褥テタニー、上皮小体の損傷、低アルブミン血症

4-3. 白血球像 — 2つのパターン

パターン所見意味
ストレス
リューコグラム
好中球↑・単球↑・リンパ球↓・好酸球↓内因性コルチゾールの作用。クッシング症候群、あらゆる重篤な疾患
炎症性の
白血球像
好中球↑と核の左方移動。重度では好中球減少に転じる感染・炎症
ストレス
リューコグラムの欠如
重篤なのにリンパ球・好酸球が減っていないアジソン病を強く示唆

4-4. 貧血の分類

貧血を見たとき、まず評価するのは赤血球数でも Ht でもなく網赤血球数です。骨髄が反応しているかどうかで、原因の探し方が完全に変わります。

網赤血球数による貧血の分類を示すフローチャート 貧血(Ht・Hb・RBCの低下) 網赤血球数を評価 増加あり 増加なし 再生性貧血 非再生性貧血 出血 急性・慢性の失血 溶血 IMHA・寄生虫・中毒 骨髄疾患 腎性(EPO不足) 慢性炎症 甲状腺機能低下症 網赤血球数が、貧血の原因を二分する最初の分岐点になる。

図:貧血の分類。網赤血球の増加があれば骨髄は正常に反応しており、赤血球が体外へ失われたか壊されたかを考える。増加がなければ産生側の問題であり、骨髄・腎臓・慢性疾患・内分泌を探す。

なお、急性出血では発症直後まだ骨髄が反応していないため、一時的に非再生性に見えます。網赤血球が増えるまでには数日を要する点に注意してください。

4-5. 画像診断の使い分け

原則

X線は「位置・大きさ・輪郭・ガス・結石」を見る。超音波は「中身」を見る。

臓器がどこにあり、どんな形をしているかはX線が得意です。一方、実質の内部構造、液体貯留、腫瘤の性状、血流は超音波でなければ評価できません。両者は競合するのではなく、役割が分かれています。

5. 症候から器官系を絞る

症例問題では主訴から入ることが多いため、症候ごとの鑑別リストを持っておくと絞り込みが速くなります。

症候鑑別に挙げる疾患
多飲多尿 糖尿病、クッシング症候群、慢性腎臓病、猫の甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、尿崩症、子宮蓄膿症、アジソン病
食欲があるのに
体重が減る
糖尿病、猫の甲状腺機能亢進症、EPI、消化吸収不良、寄生虫。摂取したエネルギーを利用できない、または吸収できていない状態
黄疸 溶血性(IMHA、寄生虫)/肝性(肝炎、リピドーシス)/閉塞性(胆管閉塞、膵炎)。網赤血球と肝酵素、超音波で切り分ける
左右対称性・
非掻痒性の脱毛
クッシング症候群、甲状腺機能低下症、性ホルモン失調。脱毛の見た目だけでは鑑別できず、ALP・コレステロール・白血球像で切り分ける
虚脱・脱力 低血糖(インスリノーマ)、アジソン病、貧血、心疾患、電解質異常

6. 器官系別のページ

消化器

内科のなかで約4〜5%

動物種ごとに出題される疾患がまったく異なるのが特徴です。前胃発酵(牛)・後腸発酵(馬)・単胃(犬)・絶対的肉食(猫)という消化管構造の違いから疾患を導く考え方を軸に、牛の第四胃変位と第一胃アシドーシス、犬のGDVとEPI、猫の巨大結腸症を解説しています。消化管ホルモン・栄養素の吸収部位・下痢治療薬の薬理も扱います。

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内分泌・代謝

内科のなかで約3〜5%

ほぼすべての疾患がフィードバック機構のどこが壊れたかで説明でき、かつ過剰と不足の対になっています。負荷試験の設計原理(足りないなら押す、多すぎるなら止める)を土台に、クッシング症候群とアジソン病、糖尿病とインスリノーマ、猫の亢進症と犬の低下症を対で解説しています。

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血液・免疫

内科のなかで約4〜6%

顕微鏡での読影と検査数値の解釈が、そのまま得点になる分野です。塗抹所見と病態の対応、MCV・MCHCによる貧血の形態学的分類、免疫学的検査(クームス試験・交差適合試験)を土台に、IMHAとバベシア症一次止血と二次止血をそれぞれ対で解説しています。造血器腫瘍や免疫介在性多発性関節炎も扱います。

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腎泌尿器

内科のなかで約3〜5%

基礎生理の理解がそのまま臨床判断につながる分野です。ネフロンの部位別機能と腎臓の内分泌機能を土台に、慢性腎臓病・尿石症・猫の多発性嚢胞腎を解説しています。本ページ第4章で扱った高窒素血症と尿比重の組み合わせが、そのまま入口になります。ネフローゼ症候群、猫の特発性膀胱炎、犬の異所性尿管、牛・馬の泌尿器疾患も扱います。

→ 腎泌尿器のページへ

なお、循環器・神経・皮膚については、トップページの臨床獣医学の項から各解説ブックへ進めます。

7. 推奨する学習順序

  1. 検査値の読み方を先に固める:本ページ第4章。どの器官系にも共通する土台であり、ここが弱いと症例問題が解けません
  2. 配点の大きい器官系から着手する:消化器 → 内分泌・代謝の順に、各ページの重要テーマを読み進めます
  3. 4点セットで覚える:疾患ごとに「検査値・画像・治療」を必ずセットで押さえます
  4. 横断整理に戻る:本ページ第3章の一覧表と第5章の症候別鑑別で、器官系をまたいだ結びつきを確認します
  5. 演習で確認する:分野別の問題集で定着を測り、間違えた項目の記事に戻ります

参考文献

  • 新獣医内科学 文永堂出版
  • 伴侶動物治療指針 緑書房
  • 犬と猫の治療ガイド インターズー
  • CAP 緑書房
  • SA Medicine インターズー
  • 獣医生理学第二版 文永堂出版
  • 動物病理学各論 文永堂出版
  • 動物病理学総論 文永堂出版
  • 農林水産省 獣医師国家試験(公式)

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床13年、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年8月15日/最終更新日:2026年8月23日
本ページは獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。