眼と耳の疾患|【獣医師国家試験対策】

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眼と耳の疾患は、「外から奥へ」並んだ層のどこに病変があるかを決めると解きやすくなる分野です。眼の外貌写真や眼底写真、耳の病気による斜頸の写真から疾患名を問う問題が、実地試験で繰り返し出題されています。

本ページでは、眼と耳を層ごとに整理する考え方を軸に、房水とタペタム、馬の喉嚢の解剖、緑内障で使う薬と禁忌の薬を整理し、重要テーマの詳細へ案内します。

過去問分析に基づく出題傾向
出題割合約2.5〜3.5%
出題数の目安8〜12問
主な出題動物種犬・猫・牛・馬・ウサギ

必須問題から実地試験まで幅広く出題され、実地試験では外貌写真と眼底写真の読影が中心です。緑内障の薬理(使う薬と禁忌の薬)は、薬理学と眼科学の両方で繰り返し問われています。

本ページの出題傾向は、第73回〜第77回(全1,650問)を編集部が分野別に分類集計したものです。

1. 眼と耳の疾患の出題傾向

  • 前眼部:第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ)、角膜潰瘍とデスメ瘤、ぶどう膜炎の外貌写真
  • 緑内障:房水の排出障害、好発犬種、慢性期の牛眼、ラタノプロストとアトロピン
  • 水晶体と網膜:糖尿病白内障、進行性網膜萎縮症、高血圧性網膜症と網膜剥離の眼底写真
  • 全身の病気に伴う眼病変:犬ジステンパー、犬伝染性肝炎(ブルーアイ)、ぶどう膜皮膚症候群
  • 耳:子牛やウサギの中耳炎・内耳炎による斜頸、馬の耳管憩室(喉嚢)

2. 「外から奥へ」の層で病変を当てる

2-1. 眼

  • 眼瞼・第三眼瞼・涙:チェリーアイ、乾性角結膜炎
  • 角膜:角膜潰瘍、デスメ瘤、角膜浮腫(ブルーアイ)
  • ぶどう膜と隅角:ぶどう膜炎、緑内障
  • 水晶体:白内障、水晶体の脱臼
  • 網膜と視神経:進行性網膜萎縮症、高血圧性網膜症、網膜剥離

2-2. 耳

  • 外耳:外耳炎、耳ダニ
  • 中耳:中耳炎。顔面神経の麻痺やホルネル症候群を伴うことがある
  • 内耳:内耳炎。前庭障害(斜頸・眼振・旋回)を起こす
学習のコツ

写真の問題では、まず「どの層が白く濁っているか、どの層が赤いか」を見てください。角膜全体が青白く濁っていれば角膜の浮腫、瞳孔の奥が白ければ水晶体、眼底の出血や剥離なら網膜です。層が決まれば、選択肢は大きく絞れます。

3. 学説A対策 — 解剖と生理

3-1. 房水の流れと眼圧

房水は毛様体でつくられて後房に出て、瞳孔を通って前房に入り、2つの経路で眼の外へ出ていきます。眼圧は、この産生と排出のバランスで決まります。

  • 隅角(線維柱帯)からの排出:角膜と虹彩の付け根のあいだにある隅角から出ていく、主な経路
  • ぶどう膜強膜流出路:毛様体の筋のすきまから強膜の外へしみ出していく経路

排出が妨げられて眼圧が上がり、視神経が傷むのが緑内障です(緑内障の詳細解説)。

3-2. タペタム

多くの動物の眼底の上半分には、光を反射して網膜にもう一度当てるタペタム(輝板)があり、暗い所で物を見る助けになります。犬や猫の眼が夜に光って見えるのはこのためです。豚にはタペタムがありません。眼底写真では、タペタムの反射の強さが網膜の厚さの手がかりになります。

3-3. 涙と第三眼瞼腺

涙は主に涙腺と第三眼瞼腺でつくられ、第三眼瞼腺はその大きな割合を担います。涙が足りなくなると、角膜が乾いて乾性角結膜炎になります。

3-4. 耳と馬の喉嚢

犬の外耳道は、縦に下りる垂直耳道と、奥へ曲がる水平耳道からなるL字形で、湿気や耳垢がこもりやすい構造です。鼓膜の奥が中耳(鼓室胞)、さらに奥が内耳(蝸牛と前庭・三半規管)です。

馬には、中耳と咽頭をつなぐ耳管が大きくふくらんだ耳管憩室(喉嚢)が左右に1対あります。喉嚢の壁には内頸動脈と、舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経、交感神経幹が接して走っています。

4. 学説B対策 — 眼の薬理

本ページでは作用機序までを扱い、用量や使い分けは扱いません。

  • ラタノプロスト(プロスタグランジンF2α誘導体):ぶどう膜強膜流出路からの房水の排出を増やして眼圧を下げる。犬では強い縮瞳も起こす
  • 炭酸脱水酵素阻害薬:毛様体での房水の産生を減らす
  • β遮断薬の点眼:房水の産生を減らす
  • 縮瞳薬(ピロカルピンなど、ムスカリン受容体作動薬):瞳孔を縮めて虹彩を中央へ引き、隅角を開く
  • アトロピン(ムスカリン受容体遮断薬):散瞳させる。散瞳すると虹彩の付け根が厚くなって隅角をふさぐため、緑内障では禁忌。一方、ぶどう膜炎では痛みを和らげ、虹彩の癒着を防ぐ目的で使われる
  • フルオレセイン(染色液):角膜の上皮が欠けて露出した実質を緑に染める。角膜潰瘍の確認に使う

5. 眼の重要テーマ

犬第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ)と乾性角結膜炎

チェリーアイは、第三眼瞼腺が裏返って飛び出し、目頭に赤い球状の腫れとして見える状態です。若い犬に多く、ビーグル、ブルドッグ、コッカー・スパニエル、ペキニーズなどでみられます。第三眼瞼腺は涙をつくる大切な腺なので、この腺が失われると乾性角結膜炎を招きやすくなります。乾性角結膜炎では、粘りのある目やに、角膜の色素沈着や血管の侵入がみられます。

犬・猫角膜潰瘍とデスメ瘤

角膜の上皮が欠けると、露出した角膜実質がフルオレセインで緑に染まります。潰瘍が深くなって角膜の最も奥のデスメ膜が露出したものがデスメ瘤です。デスメ膜はフルオレセインに染まらないため、潰瘍の縁の実質は緑に染まり、底は透明なまま残ります。デスメ瘤は穿孔の一歩手前の状態です。眼が出ていて角膜が傷つきやすい短頭種に多くみられます。

犬・猫ぶどう膜炎とぶどう膜皮膚症候群

虹彩と毛様体の炎症(前部ぶどう膜炎)では、縮瞳、房水の濁り(フレア)、眼圧の低下、充血がみられます。原因は、レプトスピラ症などの感染症、腫瘍、免疫介在性の病気のほか、糖尿病白内障などで水晶体のタンパク質が漏れ出して起こる水晶体起因性ぶどう膜炎があります。

ぶどう膜皮膚症候群は、秋田犬やシベリアン・ハスキーなどで、メラニンをつくる細胞が免疫に攻撃され、ぶどう膜炎と、鼻・口唇・まぶたの脱色素(白斑・白毛)が同時に起こる病気です。皮膚の病理ではメラニンを取り込んだマクロファージがみられます(皮膚病理の読み方と自己免疫性皮膚疾患の解説)。

犬・猫緑内障

房水の排出が妨げられて眼圧が上がり、視神経が傷む病気です。柴犬やアメリカン・コッカー・スパニエルなどに多く、慢性期には眼球が大きくなる牛眼になります。ラタノプロストが使われ、アトロピンが禁忌になる理由を、房水の流れから解説します。

→ 緑内障の詳細解説を読む

犬白内障

糖尿病の犬では、水晶体に入ったブドウ糖からソルビトールがつくられてたまり、浸透圧で水が引き込まれて水晶体の線維が膨らみ、両眼に急速に白内障が進みます(犬と猫の糖尿病の解説)。高齢の犬で水晶体の中心が青白く見える核硬化症は加齢による変化で、白内障と違って眼底を透かして見ることができます。

犬・猫網膜と眼底の疾患

遺伝性に視細胞が変性する進行性網膜萎縮症と、猫の慢性腎臓病などで起こる高血圧性網膜症と網膜剥離を、眼底写真の見え方から解説します。

→ 網膜と眼底の疾患の詳細解説を読む

犬全身の感染症に伴う眼病変

  • 犬ジステンパー:涙腺が侵されて乾性角結膜炎になる。肉球や鼻の角質が厚く硬くなるハードパッドもみられる
  • 犬伝染性肝炎:回復期に、免疫複合体による前部ぶどう膜炎と角膜内皮の障害で角膜がむくみ、青白く濁る(ブルーアイ)

「角膜が乾くジステンパー」と「角膜がむくむ伝染性肝炎」を対にして覚えてください。

6. 耳の重要テーマ

犬・猫外耳炎・中耳炎・内耳炎

外耳炎は犬で最も多い耳の病気で、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが土台にあることが多く、垂れ耳や耳道の毛、湿気が悪化させます。マラセチアやブドウ球菌、緑膿菌が増えます。猫では耳ダニによる黒褐色の耳垢もよくみられます。外耳炎が鼓膜を越えて広がると中耳炎になり、顔面神経の麻痺やホルネル症候群を、さらに内耳炎になると前庭障害を起こします(前庭障害とホルネル症候群の解説)。

牛・ウサギ子牛とウサギの斜頸

  • 子牛の中耳炎:Mycoplasma bovisなどによるもので、肺炎と一緒に起こりやすい。耳の下垂、斜頸、顔面神経の麻痺がみられる(呼吸器疾患の分野別まとめ)
  • ウサギの斜頸:パスツレラなどの細菌による中耳炎・内耳炎と、微胞子虫のエンセファリトゾーンによる脳の病変が主な原因。エンセファリトゾーンは腎臓や眼(白内障とぶどう膜炎)にも病変をつくる

馬喉嚢の疾患

喉嚢真菌症では、真菌(アスペルギルスなど)が喉嚢の壁に病変をつくり、そばを走る内頸動脈を侵食して大量の鼻出血を起こします。命にかかわる出血です。壁に接する脳神経が傷むと、飲み込みにくさ、喉頭片麻痺(馬の喘鳴症の解説)、ホルネル症候群などが現れます。喉嚢蓄膿症は、腺疫(Streptococcus equi)でできたリンパ節の膿瘍が喉嚢へ破れて起こります。

7. 学習教材

理解度チェック

  • ふつう:フローチャート — 薬理学フローチャート。緑内障で使う薬を、系統・受容体・作用の順にたどれます

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8. 眼と耳の疾患の勉強法 ― おすすめの学習順序

  1. 層の考え方:本ページ第2章で、眼と耳を外から奥への層で整理する
  2. 房水と薬理:第3章の房水の流れを押さえてから、第4章と緑内障の記事で使う薬と禁忌の薬を覚える
  3. 前眼部:チェリーアイ、角膜潰瘍とデスメ瘤、ぶどう膜炎を写真の見え方で確認する
  4. 眼底:網膜と眼底の疾患の記事で、進行性網膜萎縮症と高血圧性網膜症を見分ける
  5. 耳:外耳炎から中耳炎・内耳炎への広がりと、子牛・ウサギ・馬の特有の病気を確認する
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眼と耳は内科学を構成する領域のひとつです。ほかの領域を含めた内科学全体の出題傾向は、臨床獣医学 > 内科のページで整理しています。

参考文献

  • 新獣医内科学 文永堂出版
  • 犬と猫の治療ガイド インターズー
  • 伴侶動物治療指針 緑書房
  • CAP 緑書房
  • SA Medicine インターズー
  • 新編 家畜薬理学 養賢堂
  • 動物病理学各論 文永堂出版
  • 獣医生理学第二版 文永堂出版
  • 家畜比較解剖図説 養賢堂
  • 農林水産省 獣医師国家試験(公式)

執筆・編集:Vet Study Library 編集部
監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)/小動物臨床、環境衛生監視員としての実務経験、獣医療系出版社での獣医学情報誌・獣医学書籍の編集経験、医療系情報サイトでの執筆経験
公開日:2026年9月24日/最終更新日:2026年9月24日
本ページは獣医学生および獣医療従事者の学習支援を目的とした教育用コンテンツです。実際の診療上の判断は担当獣医師の責任において行ってください。