薬の逆引き辞典

DRUG REVERSE DICTIONARY

薬の逆引き辞典

作用点の種類、使われる場面、注意すべき副作用、動物種の注意などの手がかりから、薬を逆に引く辞典です。「受容体を遮断する心不全の薬は?」「猫で特に注意する薬は?」のように、条件を重ねて絞り込めます。どの薬も「どこに、どう効くか」までを確認できます。

系統
作用点の種類
使われる場面
注意すべき副作用
動物種・個体の注意
当てはまる薬:46種

使い方の例:

同じ欄の中で複数を選ぶと「いずれかに当てはまる」、別の欄どうしは「すべてに当てはまる」で絞り込みます。薄く表示されたボタンは、押すと0種になる条件です。

アトロピン

自律神経
分類
抗コリン薬(副交感神経遮断薬)
作用点
ムスカリン受容体を遮断し、アセチルコリンの副交感神経の作用を止める。
使われる場面
麻酔の前に唾液や気道の分泌を減らす目的や、徐脈のときに使われる。有機リン中毒のよだれや縮瞳を抑えるのにも使われる。
体に現れる作用
心拍数の増加、散瞳、唾液・気道分泌の減少、腸の動きの低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
瞳孔が開いて眼の中の水の出口が狭くなるため、緑内障では使えない。
解説
副交感神経の働き(心拍を落とす、分泌を増やす、瞳孔を縮める)を止める薬です。そのため心拍は上がり、分泌は減り、瞳孔は開きます。緑内障で禁忌になるのは、散瞳で隅角が狭くなり、眼圧が上がるためです。

ネオスチグミン

自律神経
分類
コリンエステラーゼ阻害薬(可逆的)
作用点
アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを一時的に止め、神経と筋の接合部などでアセチルコリンを増やす。
使われる場面
手術で使った筋弛緩薬の作用を戻すときや、重症筋無力症の診断と治療に使われる。
体に現れる作用
筋力の回復。副交感神経の作用が強まり、徐脈、よだれ、腸の動きの亢進がみられる。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
副交感神経の作用が強く出すぎるのを抑えるため、抗コリン薬と一緒に使うことがある。
解説
アセチルコリンの分解を止めて、その量を増やす薬です。神経と筋の接合部で働けば筋力が戻り、副交感神経で働けば徐脈やよだれが出ます。有機リン系殺虫剤は同じ酵素を長く止めてしまうため中毒を起こし、アトロピンでその症状の一部を抑えます。

アドレナリン

自律神経
分類
カテコールアミン(α・β受容体作動薬)
作用点
α受容体とβ受容体の両方を刺激する(α1で血管収縮、β1で心臓の刺激、β2で気管支拡張)。
使われる場面
アナフィラキシーや心停止のときに使われる。
体に現れる作用
心拍数と心臓の収縮力の増加、血管の収縮による血圧の上昇、気管支の拡張。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
不整脈を起こすことがある。
解説
α受容体とβ受容体の両方に働くため、アナフィラキシーで起こる血圧の低下と気管支の収縮を同時に立て直せます。心停止では、血管を収縮させて心臓と脳への血流を保つ目的で使われます。

ドブタミン

自律神経
分類
カテコールアミン(β1受容体作動薬)
作用点
主に心臓のβ1受容体を刺激する。
使われる場面
心臓の収縮力が落ちて血圧が保てないとき(心原性ショックなど)に、点滴で使われる。
体に現れる作用
心臓の収縮力の増加。心拍数や血管への作用は比較的小さい。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
効きすぎると頻脈や不整脈を起こす。
解説
心臓のβ1受容体を主に刺激して、収縮力を高める薬です。血管を強く収縮させるα作用が小さいため、心臓の負担を増やしすぎずにポンプの力を補えます。

プロプラノロール

自律神経
分類
β遮断薬(非選択性)
作用点
β1受容体とβ2受容体の両方を遮断する。
使われる場面
頻脈性の不整脈や、猫の甲状腺機能亢進症に伴う頻脈を抑えるのに使われる。
体に現れる作用
心拍数の減少、心臓の収縮力の低下、血圧の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
気管支のβ2受容体も遮断するため、気管支が収縮して喘息などを悪化させることがある。
解説
β受容体を遮断して、交感神経による心臓の刺激を抑える薬です。β1だけでなくβ2も遮断するため、気管支の拡張が妨げられます。心臓のβ1だけを選んで遮断する薬(アテノロールなど)との違いが問われます。

メデトミジン

麻酔・鎮痛・中枢拮抗薬あり
分類
α2作動薬
作用点
中枢と末梢のα2受容体を刺激し、ノルアドレナリンの放出を抑える。
使われる場面
鎮静・鎮痛・筋弛緩を一度に得たいとき(検査や処置、麻酔前投与)に使われる。
体に現れる作用
深い鎮静。徐脈、末梢の血管収縮、猫では嘔吐、インスリン分泌の抑制による高血糖、尿量の増加。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
心臓や循環への影響が大きい。作用はアチパメゾールで戻せる。
解説
α2受容体を刺激して、交感神経の働きを中枢から抑える薬です。鎮静・鎮痛・筋弛緩がそろう一方、徐脈や嘔吐、高血糖などの副作用があります。拮抗薬のアチパメゾールで作用を戻せる点が特徴です。

アチパメゾール

麻酔・鎮痛・中枢
分類
α2遮断薬(拮抗薬)
作用点
α2受容体を遮断し、α2作動薬を受容体から追い出す。
使われる場面
メデトミジンなどによる鎮静から覚ますときに使われる。
体に現れる作用
鎮静からの覚醒、心拍数の回復。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
鎮痛の作用も一緒に消えるため、痛みのある処置のあとは注意する。
解説
α2作動薬の拮抗薬です。鎮静だけでなく鎮痛も消えるため、痛みが残る処置のあとでは別の鎮痛が必要になります。

プロポフォール

麻酔・鎮痛・中枢
分類
注射麻酔薬
作用点
脳のGABA_A受容体の働きを強め、神経の興奮を抑える。
使われる場面
全身麻酔の導入に使われる。白く濁った乳剤。
体に現れる作用
すみやかな意識の消失と、すっきりした覚醒。呼吸の抑制と血圧の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
猫で連日使うと赤血球にハインツ小体ができることがある。
解説
GABA_A受容体を介して脳の働きを抑える麻酔薬です。体内での処理が速いため覚醒がすっきりしています。猫はこの薬を処理する力が弱く、続けて使うとハインツ小体ができることがあります。

ケタミン

麻酔・鎮痛・中枢
分類
解離性麻酔薬(麻薬に指定)
作用点
NMDA受容体を遮断し、興奮を伝えるグルタミン酸の働きを止める。
使われる場面
麻酔や、ほかの薬と組み合わせた鎮痛に使われる。
体に現れる作用
目を開けたまま意識がなくなる解離性の麻酔。反射が残り、筋肉がこわばる。心拍数と血圧は上がる。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
筋のこわばりを抑えるため、鎮静薬と組み合わせて使う。
解説
NMDA受容体を遮断する麻酔薬で、ほかの麻酔薬と違って心拍数と血圧を上げます。反射が残り筋肉がこわばるため、ベンゾジアゼピンやα2作動薬と組み合わせて使います。痛みが強くなる「中枢の感作」を防ぐ働きもあります。

ミダゾラム

麻酔・鎮痛・中枢拮抗薬あり
分類
ベンゾジアゼピン系
作用点
GABA_A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAの作用を強める。
使われる場面
鎮静やけいれんを止めるとき、麻酔の導入の補助に使われる。
体に現れる作用
鎮静、筋弛緩、けいれんの抑制。心臓や血圧への影響が小さい。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
若く元気な動物では、かえって興奮することがある。作用はフルマゼニルで戻せる。
解説
GABA_A受容体の働きを強める薬で、循環への影響が小さいため、体調の悪い動物の鎮静にも使いやすいのが特徴です。拮抗薬はフルマゼニルです。

アセプロマジン

麻酔・鎮痛・中枢
分類
フェノチアジン系鎮静薬
作用点
ドパミンD2受容体とα1受容体を遮断する。
使われる場面
麻酔の前の鎮静に使われる。
体に現れる作用
鎮静、吐き気の抑制。血管の拡張による血圧の低下と体温の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
鎮痛の作用がなく、作用を戻す拮抗薬がない。
解説
D2受容体の遮断で鎮静と制吐の作用を、α1受容体の遮断で血管拡張と血圧低下を起こします。鎮痛の作用がないこと、拮抗薬がないことが、α2作動薬やベンゾジアゼピンとの違いです。

ブプレノルフィン

麻酔・鎮痛・中枢拮抗薬あり
分類
オピオイド(部分作動薬)
作用点
μ受容体の部分作動薬。
使われる場面
中くらいの痛みに対する長めの鎮痛に使われる。
体に現れる作用
鎮痛。量を増やしても効果が頭打ちになる(天井効果)。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
受容体に強く結合するため、完全作動薬の効き目を弱めることがある。
解説
μ受容体を部分的に刺激するオピオイドで、効果に上限(天井効果)があります。その分、呼吸の抑制なども強くなりすぎません。フェンタニルなどの完全作動薬との違いが問われます。

ブトルファノール

麻酔・鎮痛・中枢拮抗薬あり
分類
オピオイド(作動-拮抗薬)
作用点
κ受容体を刺激し、μ受容体を遮断する。
使われる場面
鎮静や軽い痛みの鎮痛、咳を止める目的で使われる。
体に現れる作用
鎮静と咳の抑制。鎮痛の作用は弱く短い。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
μ受容体を遮断するため、ほかのオピオイドの鎮痛を弱めることがある。
解説
κ受容体の作動とμ受容体の遮断を併せもつオピオイドです。強い痛みには向かず、鎮静や鎮咳に使われます。ブプレノルフィン(μの部分作動薬)との区別が過去問で問われています。

リドカイン

麻酔・鎮痛・中枢
分類
局所麻酔薬(抗不整脈薬としても使う)
作用点
ナトリウムチャネルを遮断する。
使われる場面
局所の麻酔や神経ブロック、心室性の不整脈の治療に使われる。
体に現れる作用
神経の信号の伝わりを止める。心臓では心室の異常な興奮を抑える。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
猫は中毒を起こしやすく、量が多いとふるえやけいれん、心臓の抑制が起こる。
解説
ナトリウムチャネルを遮断して、神経や心筋の興奮を抑える薬です。神経に効けば局所麻酔、心臓に効けば抗不整脈薬になります。炎症のある酸性の組織では効きにくくなります。

フェノバルビタール

麻酔・鎮痛・中枢
分類
バルビツール酸系抗てんかん薬
作用点
GABA_A受容体の働きを強め、神経の興奮を抑える。
使われる場面
犬や猫のてんかん発作を長く抑えるのに使われる。
体に現れる作用
発作の抑制。飲み始めにふらつきや眠気が出る。多飲多尿、多食。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
肝臓の薬物代謝酵素を増やし、長く使うと肝臓を傷めることがある。ほかの薬の効き方も変わる。
解説
GABA_A受容体を介して脳の興奮を抑える、代表的な抗てんかん薬です。肝臓の酵素を誘導するため、自分やほかの薬の分解を速めたり、肝臓の障害を起こしたりします。血中濃度と肝臓の検査値を確かめながら使います。

マロピタント

麻酔・鎮痛・中枢
分類
制吐薬(NK1受容体拮抗薬)
作用点
嘔吐の信号を伝えるサブスタンスPのNK1受容体を遮断する。
使われる場面
犬や猫の嘔吐を止める、乗り物酔いを防ぐ目的で使われる。
体に現れる作用
嘔吐の抑制。原因を問わず、中枢・末梢のさまざまな嘔吐に効く。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
吐かせて原因物質を出すべき場面では使わない。
解説
嘔吐の最終的な経路で働くサブスタンスPの受容体(NK1)を遮断するため、いろいろな原因の嘔吐に効きます。

メトクロプラミド

麻酔・鎮痛・中枢
分類
制吐薬・消化管運動促進薬
作用点
脳の嘔吐の引き金になる部位(化学受容器引金帯)のドパミンD2受容体を遮断する。
使われる場面
嘔吐を止め、胃から腸への送り出しをよくする目的で使われる。
体に現れる作用
嘔吐の抑制と、胃や小腸の動きの促進。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
消化管がふさがっている(閉塞)ときは使わない。
解説
化学受容器引金帯のD2受容体を遮断して吐き気を抑え、同時に胃や腸の動きを促します。腸がふさがっているときに動きを強めると危険なため、閉塞では禁忌です。

ピモベンダン

循環・腎
分類
強心薬(血管拡張作用も併せもつ)
作用点
ホスホジエステラーゼ3(PDE3)を阻害し、心筋のカルシウムへの感受性を高める。
使われる場面
犬の僧帽弁閉鎖不全症などで、心臓が大きくなった段階や心不全の段階に使われる。
体に現れる作用
心臓の収縮力の増加と血管の拡張を同時に起こす。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
心臓の出口がせまくなる病気(流出路の閉塞)では使い方に注意する。
解説
心筋のカルシウム感受性を高めて収縮力を強め、PDE3の阻害で血管を広げる薬です。心臓を強く動かしながら負担を減らせるため、犬の僧帽弁閉鎖不全症で中心的に使われます。

ジゴキシン

循環・腎
分類
強心配糖体
作用点
心筋のNa⁺/K⁺-ATPaseを阻害し、細胞内のカルシウムを増やす。
使われる場面
心房細動で心拍数を下げたいときや、心臓の収縮力を補いたいときに使われる。
体に現れる作用
心臓の収縮力の増加と、心拍数の減少(房室結節の伝わりを遅くする)。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
効く量と中毒の量が近い。低カリウム血症で中毒が起こりやすくなる。中毒では嘔吐や不整脈。
解説
Na⁺/K⁺-ATPaseを阻害して細胞内のカルシウムを増やし、収縮力を高めます。迷走神経を介して房室伝導を遅らせるため、心房細動の心拍数の調節にも使われます。カリウムと同じ場所を取り合うため、低カリウム血症では効きすぎて中毒になります。

フロセミド

循環・腎
分類
ループ利尿薬
作用点
ヘンレループの太い上行脚のNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害する。
使われる場面
心不全による肺水腫や腹水を減らすのに使われる。
体に現れる作用
強い利尿。体の余分な水分と塩分を尿に出す。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
低カリウム血症と脱水を起こしやすい。
解説
ヘンレループの上行脚で塩分の再吸収を止める、最も強い利尿薬の一つです。カリウムも尿に出ていくため、低カリウム血症に注意します。

スピロノラクトン

循環・腎
分類
カリウム保持性利尿薬
作用点
遠位尿細管・集合管のアルドステロン受容体を遮断する。
使われる場面
心不全で、ほかの利尿薬や心臓の薬と組み合わせて使われる。
体に現れる作用
穏やかな利尿。カリウムは体に残る。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
ACE阻害薬などと一緒に使うと高カリウム血症に注意する。
解説
アルドステロンの働きを遮断して、ナトリウムの再吸収とカリウムの排出を減らします。利尿の作用は穏やかですが、アルドステロンによる心臓の線維化を抑える目的でも使われます。

エナラプリル

循環・腎
分類
ACE阻害薬
作用点
アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、アンジオテンシンIIができるのを防ぐ。
使われる場面
心不全や、腎臓病の蛋白尿を減らす目的で使われる。
体に現れる作用
血管の拡張と血圧の低下、アルドステロンの減少による水分と塩分の貯留の改善。蛋白尿の減少。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
腎臓の血流が減って高窒素血症が悪化したり、高カリウム血症になったりすることがある。
解説
アンジオテンシンIIがつくられるのを防いで、血管を広げ、アルドステロンを減らします。腎臓の糸球体の出口側の血管を広げて糸球体の圧を下げるため、蛋白尿を減らせます。

アムロジピン

循環・腎
分類
カルシウム拮抗薬
作用点
血管平滑筋のL型カルシウムチャネルを遮断する。
使われる場面
猫の高血圧の治療で、最初に選ばれることが多い。
体に現れる作用
血管の拡張と血圧の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
血圧が下がりすぎることがある。
解説
血管の平滑筋にカルシウムが入るのを止めて、血管を広げる薬です。猫の高血圧は慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症に伴うことが多く、放置すると網膜剥離などを起こします。

アモキシシリン

抗菌・抗寄生虫
分類
ペニシリン系抗菌薬(β-ラクタム系)
作用点
細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)の合成を止める。
使われる場面
皮膚、尿路、呼吸器などの細菌感染症に広く使われる。
体に現れる作用
細菌を殺す(殺菌的)。分裂して増えている細菌に効く。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
細胞壁のないマイコプラズマには効かない。β-ラクタマーゼで分解されるため、クラブラン酸と組み合わせることがある。
解説
細菌の細胞壁をつくる酵素(ペニシリン結合タンパク質)に結合して、細胞壁の合成を止めます。人や動物の細胞には細胞壁がないため、細菌だけに効きます。

エンロフロキサシン

抗菌・抗寄生虫
分類
フルオロキノロン系抗菌薬
作用点
細菌のDNAジャイレース(トポイソメラーゼ)を阻害し、DNAの複製を止める。
使われる場面
グラム陰性菌などによる尿路や呼吸器の感染症に使われる。
体に現れる作用
細菌を殺す(殺菌的)。組織によく移行する。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
成長期の犬の関節軟骨を傷めることがある。猫では量が多いと網膜の障害(失明)を起こすことがある。
解説
細菌がDNAを複製するときにねじれをほどく酵素を阻害します。成長期の動物の関節軟骨と、猫の網膜への影響が過去問でも問われています。耐性菌を増やさないよう、慎重に使うべき薬とされています。

ドキシサイクリン

抗菌・抗寄生虫
分類
テトラサイクリン系抗菌薬
作用点
細菌のリボソームの30Sサブユニットに結合し、タンパク質の合成を止める。
使われる場面
リケッチア(エーリキアなど)、クラミジア、マイコプラズマの感染症に使われる。
体に現れる作用
細菌の増殖を止める(静菌的)。細胞の中に入り込むため、細胞内に寄生する細菌に効く。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
猫では錠剤が食道にとどまって食道炎や食道の狭窄を起こすことがある。カルシウムなどと結合して吸収が落ちる。
解説
細菌のタンパク質の合成を止める薬で、細胞の中までよく入るため、リケッチアやクラミジアの治療に使われます。猫では、薬を飲ませたあとに水や食べ物で流し込み、食道にとどまらないようにします。

ゲンタマイシン

抗菌・抗寄生虫
分類
アミノグリコシド系抗菌薬
作用点
細菌のリボソームの30Sサブユニットに結合し、タンパク質の合成を狂わせる。
使われる場面
重いグラム陰性菌の感染症や、目や耳の外用薬に使われる。
体に現れる作用
細菌を殺す(殺菌的)。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
腎臓と耳(聴覚・平衡感覚)を傷める。酸素がないと菌に取り込まれないため、嫌気性菌には効かない。
解説
殺菌的に働くアミノグリコシド系の代表です。腎毒性と耳毒性が最も重要な副作用です。菌の中に取り込まれるのに酸素を使うため、嫌気性菌には効きません。

クロラムフェニコール

抗菌・抗寄生虫
分類
クロラムフェニコール系抗菌薬
作用点
細菌のリボソームの50Sサブユニットに結合し、タンパク質の合成を止める。
使われる場面
組織や中枢神経によく移行するため、犬や猫で選ぶことがある。
体に現れる作用
細菌の増殖を止める(静菌的)。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
人で骨髄の障害を起こすことがあるため、食用動物には使えない。猫はグルクロン酸抱合が弱く、骨髄抑制に注意する。
解説
50Sサブユニットに働く抗菌薬です。人で重い骨髄の障害を起こすことがあるため、畜産物に残らないよう食用動物への使用が禁止されています。

メトロニダゾール

抗菌・抗寄生虫
分類
ニトロイミダゾール系(抗菌・抗原虫薬)
作用点
酸素の少ない環境で菌や原虫の中で還元されて活性化し、DNAを傷つける。
使われる場面
嫌気性菌の感染症や、ジアルジアなどの原虫症に使われる。
体に現れる作用
嫌気性菌と原虫を殺す。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
量が多いと、ふらつきや眼振などの神経(前庭)の症状を起こす。
解説
酸素の少ない環境にいる菌や原虫の中でだけ活性化してDNAを傷つけるため、嫌気性菌と原虫に選んで効きます。神経の副作用が問われます。

イベルメクチン

抗菌・抗寄生虫
分類
マクロライド系駆虫薬(大環状ラクトン)
作用点
無脊椎動物のグルタミン酸作動性クロライドチャネルを開き、神経や筋の興奮を止める。
使われる場面
犬糸状虫症の予防や、線虫、ダニなどの外部寄生虫の駆除に使われる。
体に現れる作用
寄生虫の神経と筋を麻痺させて駆除する。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
コリーなどの一部の犬は、脳から薬を追い出すしくみ(P糖タンパク質)の遺伝子に異常があり、ふらつき、昏睡などの中毒を起こしやすい。
解説
寄生虫に特有のクロライドチャネルに働くため、寄生虫を麻痺させます。哺乳類では脳に入らないよう血液脳関門で追い出されますが、その遺伝子(MDR1)に異常のある犬種では脳に入って中毒になります。条虫や吸虫には効きません。

プラジクアンテル

抗菌・抗寄生虫
分類
条虫・吸虫の駆虫薬
作用点
条虫や吸虫の外皮のカルシウムの通り道に働き、カルシウムを流入させて筋を収縮・麻痺させる。
使われる場面
瓜実条虫、エキノコックスなどの条虫や、吸虫の駆除に使われる。
体に現れる作用
虫体が縮んで麻痺し、体の表面が傷ついて駆除される。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
線虫には効かない。
解説
条虫と吸虫の外皮に働く駆虫薬です。線虫には効かないため、線虫にも効く薬と組み合わせた製剤がよく使われます。人に感染するエキノコックスの駆除にも重要です。

プレドニゾロン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
糖質コルチコイド(ステロイド)
作用点
細胞の中の糖質コルチコイド受容体に結合し、炎症に関わる遺伝子の働きを変える。
使われる場面
炎症やアレルギーを抑え、免疫を抑える目的(免疫介在性の病気など)で使われる。リンパ腫の治療にも使われる。
体に現れる作用
強い抗炎症作用と免疫抑制作用。多飲多尿、食欲の増加。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
感染症にかかりやすくなる。犬ではALPが上がる。長く使って急にやめると副腎の働きが足りなくなる。
解説
細胞の中の受容体に結合して、炎症や免疫に関わる多くの遺伝子の働きを変えます。長く使うと自分の副腎が休んでしまうため、やめるときは少しずつ減らします。

メロキシカム

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
作用点
プロスタグランジンをつくるシクロオキシゲナーゼ(COX)、特にCOX-2を強く阻害する。
使われる場面
関節炎や手術のあとの痛みと炎症を抑えるのに使われる。
体に現れる作用
鎮痛、抗炎症、解熱。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
胃腸の潰瘍と腎臓の障害を起こすことがある。脱水や低血圧のときは特に注意する。
解説
炎症で増えるCOX-2を強く阻害して、痛みと炎症を抑えます。胃の粘膜や腎臓の血流を守るプロスタグランジンも減らすため、胃腸と腎臓の副作用に注意します。猫はNSAIDを処理する力が弱い動物です。

インスリン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
膵臓のホルモン製剤
作用点
細胞の表面のインスリン受容体に結合し、ブドウ糖の取り込み口を細胞の表面に移動させる。
使われる場面
糖尿病の治療に使われる。
体に現れる作用
血糖の低下。筋肉や脂肪の細胞がブドウ糖を取り込む。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
効きすぎると低血糖(ふるえ、けいれん)を起こす。
解説
インスリン受容体を介して、筋肉や脂肪の細胞がブドウ糖を取り込めるようにします。犬の糖尿病はインスリンの不足が主で、生涯の補充が必要になることが多い病気です。

メチマゾール

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
抗甲状腺薬
作用点
甲状腺ホルモンの合成に必要な甲状腺ペルオキシダーゼを阻害する。
使われる場面
猫の甲状腺機能亢進症の治療に使われる。
体に現れる作用
甲状腺ホルモン(T4)の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
顔のかゆみ、血液の異常(白血球や血小板の減少)、肝臓の障害が起こることがある。治療で腎臓の病気が表に出てくることもある。
解説
甲状腺ホルモンがつくられるのを止める薬です。甲状腺機能亢進症では腎臓の血流が増えて腎臓病が隠れていることがあり、治療でホルモンが下がると腎臓病が表に出ることがあります。

トリロスタン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
副腎皮質ホルモン合成阻害薬
作用点
ステロイドをつくる途中の酵素(3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素)を阻害する。
使われる場面
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の治療に使われる。
体に現れる作用
コルチゾールの低下。多飲多尿や多食の改善。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
効きすぎると副腎皮質の働きが足りなくなり、元気消失や嘔吐を起こす。
解説
副腎でコルチゾールがつくられる途中の酵素を止める薬です。効きすぎると副腎皮質機能低下症のような状態になるため、検査でホルモンを確かめながら使います。

レボチロキシン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
甲状腺ホルモン製剤(T4)
作用点
足りない甲状腺ホルモン(T4)を補う。体の中でT3に変わって核内受容体に働く。
使われる場面
犬の甲状腺機能低下症の治療に使われる。
体に現れる作用
代謝の回復。元気が出て、毛が生えそろい、体重が適正に戻る。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
量が多いと、甲状腺機能亢進症のような症状(頻脈、多飲多尿、体重減少)が出る。
解説
足りない甲状腺ホルモンを補う薬です。T4は体の組織で活性の高いT3に変わって働きます。犬では甲状腺機能低下症、猫では機能亢進症が多いという対比も押さえておきましょう。

オキシトシン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
下垂体後葉ホルモン製剤
作用点
子宮の平滑筋と乳腺の筋上皮細胞のオキシトシン受容体に結合する。
使われる場面
分娩で陣痛が弱いとき(子宮頸管が開いている場合)や、乳が出にくいときに使われる。
体に現れる作用
子宮の収縮と、射乳(乳腺の周りの細胞の収縮)。
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注意すべき点
胎子が通れないほど産道がふさがっているときに使うと、子宮が破れる危険がある。
解説
子宮を収縮させ、乳を押し出すホルモンです。陣痛を強めるため、胎子の大きさや向きの異常、産道の狭さなどで出てこられない難産に使うと、子宮破裂の危険があります。

ジノプロスト(PGF2α)

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
プロスタグランジン製剤
作用点
黄体と子宮のプロスタグランジンF受容体に結合する。
使われる場面
牛の発情の同期化、黄体遺残、子宮蓄膿症の治療に使われる。
体に現れる作用
黄体の退行と子宮の収縮。プロジェステロンが下がって発情が来る。
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注意すべき点
妊娠している動物では流産を起こす。気管支を収縮させるため、扱う人の喘息や、妊娠中の人の取り扱いにも注意する。
解説
黄体を退行させるホルモンで、繁殖の管理に欠かせない薬です。黄体のある時期でなければ効きません。人の皮膚からも吸収されるため、取り扱いには注意が必要です。

ビンクリスチン

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
抗腫瘍薬(微小管阻害薬)
作用点
細胞が分裂するときのロープである微小管(チューブリン)の重合を阻害する。
使われる場面
リンパ腫や、犬の可移植性性器肉腫の治療に使われる。
体に現れる作用
分裂中の細胞を分裂の途中(M期)で止める。
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注意すべき点
血管の外に漏れると皮膚や組織が壊死する。末梢神経の障害や便秘を起こす。
解説
分裂のときに設計図を引っ張り分ける微小管をつくらせない薬です。神経も同じ微小管を使っているため、神経の副作用が出ます。点滴が血管の外に漏れないよう注意します。

シクロホスファミド

ホルモン・炎症・腫瘍
分類
抗腫瘍薬(アルキル化剤)
作用点
DNAの鎖どうしをつなぎ(架橋)、DNAの複製を止める。肝臓で活性化されて働く。
使われる場面
リンパ腫などの治療や、免疫を抑える目的で使われる。
体に現れる作用
細胞の設計図(DNA)を傷つけ、分裂を止める。骨髄の抑制。
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注意すべき点
体の中でできた成分が膀胱にたまり、出血性の膀胱炎を起こすことがある。
解説
肝臓で活性化されてDNAに結合するアルキル化剤です。代謝物のアクロレインが膀胱の粘膜を傷つけるため、出血性膀胱炎が特徴的な副作用です。

ラタノプロスト

眼(緑内障)
分類
プロスタグランジン関連薬(点眼)
作用点
毛様体筋のFP受容体に働き、筋のすき間を広げてぶどう膜強膜路の流れを増やす。
使われる場面
犬の原発閉塞隅角緑内障の急性発作などで、眼圧をすばやく下げるのに使われる。
体に現れる作用
眼圧の低下と、犬では強い縮瞳。
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注意すべき点
ぶどう膜炎と水晶体の前方脱臼では使わない。猫では眼圧を下げる効果がほとんどない。
解説
房水の出口の一つ、ぶどう膜強膜路を広げる薬です。猫はこの道が房水の約3%しかないため、ほとんど効きません。炎症を強めるためぶどう膜炎では使わず、強い縮瞳で水晶体が前房に閉じ込められるため前方脱臼でも使いません。

ドルゾラミド

眼(緑内障)
分類
炭酸脱水酵素阻害薬(点眼)
作用点
毛様体の上皮で重炭酸イオンをつくる炭酸脱水酵素を阻害する。
使われる場面
犬や猫の緑内障で、房水の産生を減らすのに使われる。
体に現れる作用
房水の産生の減少による眼圧の低下。
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注意すべき点
点眼の刺激感。同じ系統の内服薬では、代謝性アシドーシスや低カリウム血症が起こることがある。
解説
重炭酸イオンがつくられないと、それに伴うナトリウムと水の移動が減り、房水の産生が減ります。猫でも効果が期待できる、数少ない緑内障の薬です。

チモロール

眼(緑内障)
分類
β遮断薬(点眼)
作用点
毛様体の上皮のβ受容体を遮断し、房水の産生を抑える。
使われる場面
緑内障で、炭酸脱水酵素阻害薬と組み合わせて使われることが多い。
体に現れる作用
房水の産生の減少による眼圧の低下。
注意すべき点・解説・関連ページ
注意すべき点
点眼でも全身に吸収され、徐脈や気管支の収縮を起こすことがある。体の小さい猫や喘息の猫で注意。
解説
房水の産生を促すβ受容体を遮断する薬です。点眼液は鼻の粘膜から吸収されて全身に回るため、心臓と気管支への影響に注意します。

ピロカルピン

眼(緑内障)
分類
副交感神経作動薬(点眼)
作用点
毛様体筋のムスカリン受容体を刺激して筋を縮め、つながっている線維柱帯の網目を引き広げる。
使われる場面
緑内障で、隅角の出口の流れをよくするのに使われる。
体に現れる作用
縮瞳と、房水の出口(従来路)の流れの改善。
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注意すべき点
眼の炎症や刺激を起こすため、ぶどう膜炎では使わない。
解説
毛様体筋を縮めて線維柱帯を広げ、隅角の従来路から房水が出ていきやすくする薬です。プロスタグランジン関連薬とは、広げる出口が違います。

マンニトール

眼(緑内障)
分類
浸透圧利尿薬(静脈内)
作用点
血液の浸透圧を高めて、硝子体の水を血管の中へ引き出す。
使われる場面
緑内障の急性発作で、眼圧を急いで下げるときに使われる。
体に現れる作用
眼圧のすばやい低下と、尿量の増加。
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注意すべき点
全身の水分のバランスを大きく動かすため、心不全・腎不全・脱水のある動物では注意する。投与のあとすぐに水を飲むと効果が落ちる。
解説
眼の中で最も大きな体積を占める硝子体から水を引き出して、眼圧をすばやく下げます。受容体や酵素ではなく、浸透圧という物理的な力で働く薬です。

条件に当てはまる薬はありません。条件を1つ外してみてください。

収録:46種(自律神経5・麻酔・鎮痛・中枢12・循環・腎6・抗菌・抗寄生虫8・ホルモン・炎症・腫瘍10・眼(緑内障)5)。この辞典は、薬がどこにどう作用するかを理解するための教材です。用量や使い分けは扱っていません。実際の治療は担当獣医師の判断に従ってください。
執筆・編集:Vet Study Library 編集部 監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)