流れでたどる|スクロールするたび、流れが一段ずつ動き出す。
電気から化学物質へ、そして次の細胞へ
神経の興奮が伝わるしくみを流れでたどる
読み進めると、左の図が1段ずつ描き足され、下の膜電位のグラフも段ごとに描かれます。各段の終わりの問いの答えが、次の段です。
1
出発点:内側がマイナスに保たれている
神経細胞の内側は、ふだん外側に対してマイナス(静止膜電位)に保たれています。Na⁺は外に多く、K⁺は内に多い状態です。
刺激を受けると、何が起こる?
2
Na⁺が流れこむ(脱分極)
刺激で膜電位が閾値を超えると、Na⁺チャネルが一斉に開き、Na⁺が流れこんで内側がプラスになります(脱分極)。
なぜ「全か無か」?
閾値を超えればチャネルが連鎖して開き、いつも同じ大きさの活動電位になるからです。
プラスになったあとは?
3
K⁺が出ていく(再分極)
Na⁺チャネルが閉じ、K⁺チャネルが開いてK⁺が外へ出て、マイナスに戻ります(再分極)。
すぐ次の刺激に反応できる?
しばらくはNa⁺チャネルが開けない不応期があり、反応できません。信号が逆戻りしない理由です。
信号は、軸索をどう進む?
4
軸索を跳んで進む(跳躍伝導)
活動電位は隣を次々に脱分極させて進みます。髄鞘のある神経では、すき間(ランヴィエ絞輪)だけを跳んで進むので、速く伝わります。
髄鞘が壊れると?
伝わり方が遅くなったり、途切れたりします。
神経の終わりでは、何が起こる?
5
シナプスで伝達物質が出る
終末に届くとCa²⁺が流れこみ、小胞から神経伝達物質(アセチルコリンなど)がすき間へ放出されます。
なぜ電気のまま渡さない?
化学物質に変えることで、一方向に伝え、強めたり弱めたりできるからです。
受け手の細胞では?
6
受容体に結合し、次の細胞が興奮する
伝達物質が受け手の受容体に結合し、イオンチャネルが開いて次の細胞が興奮します(または、おさえられます)。
興奮をおさえる伝達物質は?
GABAやグリシンなどです。
伝達物質は、そのまま残る?
7
分解・回収されて止まる
アセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼですぐ分解され、ノルアドレナリンなどは回収されて、信号が止まります。
分解されないと?
受容体が刺激され続けます。
分解が止まる中毒は?
8
有機リン中毒
有機リン系やカーバメート系の殺虫剤がアセチルコリンエステラーゼを止め、アセチルコリンが分解されずにたまります。よだれ、縮瞳、下痢、筋のふるえなどが出ます。
なぜアトロピンが解毒に使われる?
アセチルコリンが働くムスカリン受容体をふさぎ、よだれや徐脈などをおさえるからです。
ほかに、流れのどこを止める薬や毒がある?
9
流れを止める薬と毒
- 局所麻酔薬・テトロドトキシン(フグ毒):Na⁺チャネルをふさぎ、脱分極を止める
- ボツリヌス毒素:アセチルコリンの放出を止める
- 筋弛緩薬(ロクロニウムなど):筋のニコチン受容体をふさぐ
- 重症筋無力症:受容体に対する自己抗体で、伝わりにくくなる
予測してみよう:有機リン中毒の犬で、瞳孔は大きくなる? 小さくなる?
答えを見る
小さくなります(縮瞳)。分解されないアセチルコリンが、副交感神経の受容体を刺激し続けるからです。
流れの全体:静止膜電位 → 脱分極(Na⁺流入)→ 再分極(K⁺流出)→ 跳躍伝導 → シナプスで伝達物質を放出 → 受容体で次の細胞が興奮 → 分解・回収で止まる
流れでたどる シリーズ(シリーズの一覧へ)
- RAAS(血圧)
- 血液凝固
- 甲状腺ホルモン
- 尿ができるまで
- カルシウムの調節
- ビリルビンと黄疸
- 狂犬病ウイルスの旅
- 血糖の調節
- 副腎皮質の軸
- 性周期と排卵
- 分娩の始まり
- 刺激伝導系と心電図
- 酸素が細胞に届くまで
- 牛の第一胃の発酵
- I型アレルギー
- 痛みと鎮痛薬
- 発熱のしくみ
- ショックの悪循環
- 神経の興奮
- 筋肉が縮むしくみ
- 抗体ができるまで
- 傷が治るまで
- 骨折が治るまで
- 脂肪の消化と胆汁
- 血液型と輸血
- 薬が代謝されるまで
- 酸塩基の調節
- むくみのしくみ
- 嘔吐のしくみ
- 視覚が伝わるしくみ
薬は作用のしくみまでを扱い、用量は扱っていません。
執筆・編集:Vet Study Library 編集部 監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)