流れでたどる|スクロールするたび、流れが一段ずつ動き出す。
肺は速く、腎臓はじっくり
酸塩基の調節を流れでたどる
読み進めると、左の図が1段ずつ描き足されます。各段の終わりの問いの答えが、次の段です。図のブロックを押すと、その段へ移動します。
1
出発点:体は酸をつくり続ける
細胞が働くと、二酸化炭素や乳酸などの酸ができ続けます。それでも血液のpHは、7.4前後に保たれています。
増えた酸を、まず何が受け止める?
2
緩衝:HCO₃⁻が受け止める
血液の重炭酸イオン(HCO₃⁻)が酸(H⁺)を受け止め、炭酸を経てCO₂と水に変わります。
緩衝で酸は消える?
一時的に受け止めるだけで、最後は肺と腎臓で外に出す必要があります。
できたCO₂は、どこから出す?
3
肺:CO₂を吐き出す(数分)
延髄がCO₂の増加を感じとり、呼吸を速く深くしてCO₂を吐き出します。
なぜ肺は速い?
呼吸の速さを変えるだけで、数分で調節できるからです。
肺だけで足りる?
4
腎臓:H⁺を捨て、HCO₃⁻を戻す(数日)
腎臓はH⁺を尿へ捨て、HCO₃⁻を取り戻したり、新しくつくったりします。
なぜ腎臓が要る?
肺はCO₂しか出せず、乳酸などの酸は腎臓でしか捨てられないからです。
調節が追いつかないと?
5
代謝性アシドーシス
酸が増える(乳酸・ケトン体)か、HCO₃⁻を失う(下痢)と、HCO₃⁻が下がり、pHが下がります。呼吸を速くしてCO₂を減らし、代償します。
どんな病気で起こる?
ショック、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、下痢などです。
反対に、HCO₃⁻が増えると?
6
代謝性アルカローシス
胃液を吐き続けたり、牛の第四胃変位で胃液がたまったりすると、HCO₃⁻が増え、pHが上がります。呼吸を浅くして代償します。
低Cl⁻を伴うのは?
胃液の塩酸(HCl)として、Cl⁻も一緒に失われるからです。
肺の換気が落ちると?
7
呼吸性アシドーシス
換気が落ちてCO₂がたまり、pHが下がります(麻酔中の呼吸抑制、気道の閉塞、重い肺の病気など)。腎臓がHCO₃⁻を増やして、数日かけて代償します。
換気が増えすぎると?
8
呼吸性アルカローシス
パンティング、痛みや不安、低酸素で換気が増えすぎると、CO₂が減り、pHが上がります。腎臓がHCO₃⁻を減らして代償します。
熱中症の初期の犬は?
激しいパンティングで、呼吸性アルカローシスになることがあります。
血液ガスで、原因をどう見分ける?
9
血液ガスの読み方
- pH:酸性(アシドーシス)か、アルカリ性(アルカローシス)か
- pHが下がっているとき:PCO₂が高ければ呼吸性、HCO₃⁻が低ければ代謝性
- pHが上がっているとき:PCO₂が低ければ呼吸性、HCO₃⁻が高ければ代謝性
- もう一方の値の動きは、多くの場合「代償」
予測してみよう:胃液を何日も吐き続けた犬。血液のHCO₃⁻は上がる? 下がる?
答えを見る
上がります。胃液の酸(HCl)を失い、代謝性アルカローシスになるからです。
流れの全体:酸ができる → HCO₃⁻が緩衝 → 肺がCO₂を吐く(数分)・腎臓がH⁺を捨てHCO₃⁻を戻す(数日)/崩れると代謝性・呼吸性のアシドーシスとアルカローシス
流れでたどる シリーズ(シリーズの一覧へ)
- RAAS(血圧)
- 血液凝固
- 甲状腺ホルモン
- 尿ができるまで
- カルシウムの調節
- ビリルビンと黄疸
- 狂犬病ウイルスの旅
- 血糖の調節
- 副腎皮質の軸
- 性周期と排卵
- 分娩の始まり
- 刺激伝導系と心電図
- 酸素が細胞に届くまで
- 牛の第一胃の発酵
- I型アレルギー
- 痛みと鎮痛薬
- 発熱のしくみ
- ショックの悪循環
- 神経の興奮
- 筋肉が縮むしくみ
- 抗体ができるまで
- 傷が治るまで
- 骨折が治るまで
- 脂肪の消化と胆汁
- 血液型と輸血
- 薬が代謝されるまで
- 酸塩基の調節
- むくみのしくみ
- 嘔吐のしくみ
- 視覚が伝わるしくみ
薬は作用のしくみまでを扱い、用量は扱っていません。
執筆・編集:Vet Study Library 編集部 監修:獣医師(農林水産省 獣医師名簿第44733号登録)